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プリシラは生徒会長の殿下に許可をもらって、ギターモドキを持って登校し授業中は鍵のかかる生徒会室に置かせてもらう事にした。
本当なら授業が終わったら直帰して、ホーリーに取り組みたい。だけどプリシラは一応、オマケとは言え生徒会役員になってしまったから、一応、義務で生徒会室には寄って帰らないといけないのだ。
しかもプリシラは余計な誰かに絡まれないようにという配慮で、必ず生徒会役員の誰かが迎えに来るという送迎付きだ…。
もちろん殿下以外で。
クラスの皆には、かなり驚かれたので「私が直ぐ逃げ出すので監視されています」と説明してある。
自分でも思うけど、逃げ出す役員なんて、一体どんな役員なんだ?
だけど送迎は私の護衛目的でもあると殿下には言われたのだ。
だったらマジで生徒会を抜けさせてくれ!
「プリシラ!終わったか?行くぞ」
今日はルーズベルト先輩だ。この人が来るのもちょっと困る。
この人の身分は殿下に次ぐ高位貴族で大公家だ。ほぼ王族じゃん。
「先輩、ありがとうございます」
「ああ、私は今日は午後の授業は一限だけだったからな」
2年生に上がると授業はより専門性が増すので、人によって授業数も種類もバラバラだ。1年生だけは共通授業が多く終業時間が一定なので、その時間に来れる役員が毎回、入れ替わり立ち替わりで迎えに来てくれる。
だから上級生が多くなる。
だけどこの送迎だってプラスばかりじゃない。私のプライベートは一体どこへ?放課後の同級生との交流が一切出来なくなった。
他の役員の皆様も同じじゃないの?と思って聞いてみる。
「ルーズベルト先輩、私のせいでご自身の時間を取れなくなったんじゃないですか?」
「ん?いいや。私はお前を生徒会室まで送った後、婚約者の見送りに行って来る。彼女は今夜、王都を発つからな」
全然、自由時間あった!
「ほらっ生徒会室に着いたぞ!お届け完了だ。じゃあな」
彼はそう言って私を生徒会室に入れると、さっさと去って行った。私は荷物か…。
生徒会の今の仕事内容は、校内の非常用の備品管理だ。
学校は何かあった時の避難場所の一つでもある。だから非常用の食糧や衣類、寝具、衛生品、薬品などが揃っているかチェックと備えも任されている。
そんなの雑用係じゃん。
学校の先生や職員がやれば良くない?って思うけど、そういう非常時は学校の生徒も避難者の誘導や世話に回るのだ。そして先生方職員は避難者の護衛という戦闘任務に回るので、戦闘側に回れない生徒が、やはり裏方の仕事としてやるしかない。
なぜなら全員が使命ある貴族だからだ。ノブレスオブリージュだ。
そして我々の所に避難して来るのはほぼ平民だ。
そういった避難場所があるから、例え領民であっても貴族は王都の屋敷に難民や避難者を保護せずに済んでいる。他にも大きな公園や騎士団の施設、病院も避難施設になる。全く何て世界だよ!
「こんにちは。私にも何かやれる事はありませんか?」
プリシラはすでに忙しそうに仕事をしている先輩方に話し掛ける。
「いいや。今はない。ルーズベルトも自分の仕事は終わらせて行ったからな。プリシラは魔法頑張れよ」
チャールズ先輩にそう言われる。
「そうよ。中級攻撃魔法も覚える事になったんでしょ?」
仕事を振られないのは助かるけど、呪文を覚えるにはギターモドキを弾かないといけないんだけど…。
プリシラはモドキをケースから出して「ポロロン」と音を鳴らす。こんな時、エレキギターだったらイヤホンで音を聴きながら大きな音を立てずに弾けるのにな。
「おっプリシラ、これから練習か?何かそれで一曲、耳障りの良いのを弾いてから練習に入ってくれないか?きっと集中したら音も聞こえなくなるよ」
リチャード先輩に言われる。
「それいいな。何か弾いてプリシラ」
先に来ていた同級生のジェイクにも言われたので、プリシラは適当に前世で有名だった曲を一曲奏で始める。
「何か用か?侯爵令息」
第一王子レイノルドが生徒会室に到着すると、部屋の前に侯爵令息のレオナルドがいた。
「いいえ、近くを通ったら音楽が聞こえて…これはリュートの音色ですか?」
「さあ?私は詳しくないからな」
「そうですか。でもプリシラが奏でてる。そうでしょう?」
「多分、そうだな」
令息は一瞬、険しい顔をしたが直ぐに真顔に戻り「そうですか。失礼致します殿下」と言って去って行った。
第一王子は、しばらくその背を見つめて生徒会室に入ると、皆が仕事の手を止めてプリシラの演奏に聴き入っている状況だった。
皆の邪魔にならないようソッと自分の席に着く。ピアノ演奏とはまた違う優しい音色の演奏だ。
この楽器は彼女オリジナルの特注だったか?
確かギターモドキとか言ってたか?
なぜモドキ?と思ったがリュートなど比較にならない良い音だ。
プリシラが曲を弾き終わると「ヤバいな!仕事どころか演奏に聴き入ってしまった。お前、魔法どころか音楽家の才能もあるぞ」とリチャード先輩に褒められた。
「確かに凄い胸に沁みる演奏だった。つい聴き惚れちゃったわ」
「なあ?これは光魔法使ってないの?なんか元気出てきたぞ」
「えっそれは気のせいです。魔力も込めてませんし使ってませんよ」
「そっか〜なら純粋に音楽に癒されたんだな〜って殿下!いつの間にお越しに?」
「本当だ!会長いらしたの全く気付かなかった」
「ああ皆が音楽に聴き惚れていたので、邪魔をしないよう静かに入ったよ」
「プリシラが魔法を覚えている時、机を指で叩いていたのはコレのせいか?」
「まあピアノもありますけど、そんなもんです。リズムを取りながらだと長い呪文も覚えやすくて」
「なるほどな〜色々、工夫してるんだな」
「これから覚える魔法はその楽器で弾きながら覚えるのか?」
「ええと…そうです」
「そうか。どんな感じなんだ?」
「聴きたいな!」
「聴きたい」
皆に言われてプリシラは冷や汗が出る。
ヘビメタなんだよ…。




