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「状況はすでに、お前が学校から帰る前に家族全員に共有してある。領地の爺様、婆様にも手紙を送っておいた」
「…はい」
プリシラは神妙に返事を返す。
「話を聞いた時は驚いたよ。だが光の初級の攻撃魔法を修得せよと言ったのは私だ。だから真面目に取り組んだお前を、当然責めるつもりはない。世間様を驚かせはしたが、むしろ良い結果だと捉えている。が、なんせ威力があり得ないほど膨大だ。これをお前がやった事だと世の中に知られたら…その方が心配だと私達は考える」
父も母も眉間に皺を寄せている。
「お父様、今日、殿下は何も仰ってなかったですけど、陛下や神殿は何か仰っていたのですか?」
「プリシラ、お前はこれから中級の攻撃魔法を習得しろ」
「はいっ?!中級ってホーリーとかいう?」
「そうだ」
「でも聖女様もまだ発動できた事がないって!」
「ああ。呪文がすごく難しい。だがお前なら出来るだろうと…」
「父上、ホーリーはライトアローと違って、物も破壊するという光線ではありませんか!そんな魔法の使い道なんて!」
「お父様、まさか、その魔法をその内使うことになるかもって、上の偉い人達は考えているの?」
「キャス、ウルスラ、ホーリーが必要になる場面が今後、あるかは分からない。だが、もし大規模な魔物発生が兆候なく起こったら、ホーリーほど期待のできる攻撃魔法はないんだ」
「確かに、プリシラが聖女の杖でホーリーを使ったら、その魔法一発でほぼ討伐が終わる可能性はあるな」
「そうよ聖女の杖があるなら出来るかもしれないわ!プリシラ頑張るのよっ」
「お姉様、でもホーリーは魔力だけの問題じゃないんです」
「えっどういう事?」
「そうなんだ。ウルスラ、ホーリーは呪文を覚えても唱えるのが困難なんだよ。それが聖女殿も大神官殿も成功していない理由だ」
さすがに歌手でもなければ声量や肺活量を鍛えるなんて、この世界では無いだろう。声量は要らないけど肺活量が求められる呪文なんだよね。
一度、興味本位で読んでみた。だけど今の私も、前世の自分でも絶対に詠唱が無理な呪文だった。前世の歌手の父なら出来ただろうけど。
その日の家族会議はプリシラがホーリーを学ぶ事が決定して終了したが、ついでにプリシラは年末の領地への帰省もなしになった。
その間も魔法を学べという事だ。
貴族達は年末は自領の備えに忙しくなる。
各々、領地に戻り、領民の健康と生活の安全を守るのだ。そして万が一、自分達だけで対処できない流行り病や物資の不足、魔物の発生などが起こった場合は、直ぐに近隣の領主や王城に知らせる事が義務化されている。
なのでほとんどの貴族が自領に戻る。
その間、手薄になる王都は王家と国の騎士団や大神殿によって守られる。
うちの伯爵家は父が貴重な光魔法の使い手なので王都からは離れられない。一般的に貴族達は冬が始まると領地に戻り始める。特に領地が王都から遠い貴族ほど帰省が早い。
ただ学園に通う子息が居たり、王城に勤める家族がいた場合、その家族が王都に残るケースも多い。
我が家は父が領地に戻れなくても、まだまだ元気な祖父母が領地にいる。それに近隣の領地は親戚も多いので、いつも助け合っている。今年の冬は母と姉だけが領地に帰省し、私と父と兄は王都に残る事になった。
プリシラは大きな溜息を吐きながら考える。
「ホーリーか〜」とりあえずは詠唱は呪文を覚えてからでいいかな〜いや、同時に肺活量も鍛えるべきだろう。
なら歌いながらの暗記だ!楽曲の候補ならある。
前世の父の息継ぎなしで駆け上がっていく歌「ハロウィ〜ンの夜に」だ!この歌しかない。
父が初めて日本語を歌詞に入れた歌だった。
父が当時、ハロウィン当日の渋谷の街の様子を見て書き上げた歌だった。しかも父は、仮装という言葉と発音が気に入ったようで「街におかしな人が溢れてく〜下層!仮装!仮想!火葬!」と歌の出だしで連呼していた。
誰だ?変な日本語教えたのは?前世の母か?
弟も面白がって一緒に歌ってたけど、息が続かなくて「Dad,you’re amazing!(父スゲェ)」って言ってたな。コレしかない。




