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魔法少女は無理がある?!〜魔法の呪文をヘビメタにのせて♪〜  作者: 朱井笑美


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 プリシラは今日の放課後も音楽室でピアノを弾いて過ごしていた。

 ピアノは前世の父の曲に合わせて、呪文を覚えるのにも便利だが、鍵盤を叩く行為はストレス解消にもとてもイイ。

 お陰で激しい曲をついつい叩きつけるように弾いてしまう。


 前世のベートーヴェン様とかホント最高だな。

 ショパン様の楽曲も楽譜無しでほとんど覚えている。

 敬虔なクリスチャンの父とは、よくピアノや教会のパイプオルガンでバッハ様を連弾した。前世の記憶万歳だ!


 だけど、たまに皆さんから不思議な目で見られる時がある。

 皆さんが知らない曲ばかりだからだ。私が作曲したように思われている節がある。でも違いますよ?

 私じゃない異世界の凄い天才達が作ったんですよと思いながらも、好きだった曲は弾かずにはいられない。


 しかし魔法の呪文の暗記は、さすがにブツブツ言いながら怪しい作業になるので家でやっている。

 ギターモドキでもできるし。


 学校のピアノは音楽室に1台と隣室の準備室に1台しかないので、独り占めせずに同好会のメンバーが集まり始めたら譲り合いだ。

 お家にピアノがない部員もいるし、寮生は学校でしか弾けないしね。


 校内でもプリシラのピアノの腕前はなかなかだと思うが、侯爵令息の腕前も流石だ。最近は彼から連弾に誘われることも多い。

 侯爵令息は普段、剣を持つ手とは思えない程、滑らかに鍵盤を叩く。もちろん剣だこや豆もある手だ。


 プリシラも身長の割には手が大きい方だろう。

 だから難しい曲も普通に弾けている。

 小さい頃から武器を振り回していたからだろうか?

 でもそのせいでプリシラの手も淑女の手ではない。


 連弾の醍醐味は即興での演奏だろう。

 侯爵令息の弾く即興に合わせて、伴奏したり追いかけたり、プリシラが主導を奪ったり。

 昔、前世の父とよくやったな〜懐かしいし楽しい。


 2人がピアノを弾き出すと音楽室に少し人だかりができる。

 多分、侯爵令息のファンが見に来ているのだろう。

 侯爵令息がこんなにピアノが上手な理由には、お家の方針があるのだそうだ。


 侯爵家は辺境伯と隣り同士の領地で、侯爵家と辺境伯の両騎士団で近隣の魔物討伐をしているそうだ。

 侯爵家では武に秀でても、芸術の心を忘れるなと家訓にあるそうだ。武のみでは悪意を生みやすいと、かつて音楽が好きで剣を握りたがらなかった後継ぎに、剣を握らせる為に作られた家訓なんだそうだ。だが芸術はピアノや音楽でなくても良いらしい。


 うん、この世界、色んなところで悪意対策されてるんだな。

“魔物の発生対策”という理由さえなければ、悪意対策ってもっと素晴らしいと思えるのに。


 今日も放課後、プリシラは音楽室でピアノを楽しんでいた。

 侯爵令息が他の生徒に「教えて欲しい曲がある」と隣室に呼ばれた時に、プリシラの前に数人の令嬢が立つ。


 これはっ!!もしかして「侯爵令息に近寄るな!」というファンの牽制かしら?とドキドキしていたら、なぜか令嬢達の勢いが急に萎んで気まずそうになる。


 どうしたのか?と思って後ろを振り向くと、なんと私の背後に腕を組んだ第一王子殿下が立ってらっしゃった。


 何で?!


「君らの用事から先にどうぞ」

 王子殿下の発言に、令嬢達は「私達は急ぎませんので」と慌てて去って行ってしまった。


 あ〜なんかちょっと残念。

 せっかく面白いモノが見れると思ったのに…。

 それに急がないって事は、また来るって事だよね?

 王子のせいで先延ばしにされただけだ。


 めんどくさっ!そんな気持ちが出ていたのか、つい語気が厳しくなる。

「何かご用ですかっ?」

 一応、イスから降りて、スカートも摘んで腰を落としとく。


 私のプチ不機嫌モードに気付いたのか、王子は「もしかして余計なことをしたか?」と聞いてきた。

「きっと殿下は悪意発生を倍に増やされた…いいえ、未然に防がれたと存じます」

 と棒読みで返しとく。


「たまたま…タイミングが重なっただけなんだ。君を助けに来た訳でも悪意を防ぎにきた訳でもないんだけど…増やしたかな?」

 殿下は一応という感じで、悪気がなさそうに聞いてくる。

 

「たまたまって、それ…あの令嬢達に伝わらないですよねぇ。私、殿下に庇われて更に反感買ったかも」

 そうだよ!王子と侯爵令息の両方のファンを敵に回したかもしれないんだぞ!


 殿下を睨んでやったら、王子殿下は思わぬ反論にあったせいか目を見開いてしばらく固まっていた。

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