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「姉殿下が “杖とセットであるべき” と思った内容だったなら、上級の攻撃魔法のヒントだった可能性はないかなぁ?」
「それはあると思うぞ、プリシラ」
「わっ!ビックリした大神官様っ」
私は、いきなり背後に現れた大神官に飛び上がった。
「私は姉殿下の気持ちがひどく理解できる。やはり神殿とは常に品行方正や清廉潔白を当然の事だと求められるからな」
「じゃあ大神官様も愚痴ノートがあるの?」
「私は常に口に出しとる。不平不満ばっかりじゃ。民の前では言わんがな」
「わ〜確かに」
「お前も口に遠慮がないな。ま〜お前の発言は的を得たものが多いゆえ、そう腹は立たんがな」
「姉殿下が後世に残さないと決めてしまった内容が、上級攻撃魔法の7人の情報だったとしたら、上級の攻撃魔法は諦めた方がいいか…」
「その決断は早過ぎるぞ、プリシラ。まだ足掻くといい」
「えっ足掻けって?どうやって…それは無駄にならないかなぁ」
「お前は直ぐ結論や答えに飛び付こうとする。私達はお前に聖女の杖が引き継がれて良かったと思っている。次女の姫のようにアホではなく、お前は賢いし努力家だ。そんなお前が足掻けば、皆、お前に協力するだろう。だから諦めるのは、もう少し年を取ってからでも良いだろ?」
大神官様はそう仰って、次女殿下の日記に苦しむイノと、聖女様の方に行ってしまわれた。
姉殿下の愚痴ノートは10冊もあったが、書き殴りであっても字が綺麗で読みやすく、サラサラ〜ッと読めてしまった。
でも本当に感情面だけで、私達が知りたいような魔法のヒントや疑問に対しても一切、触れる事はなかった。
姉殿下はこのノート以外に、別のノートも残さなかったのか?
これだけ徹底して感情だけをぶつけていたなら、他にもノートがあってもおかしくない。
「お父様、姉殿下は他にもノートを残してますよね?きっと」
「ああ、それは神殿でもその結論に至っているが、見つけ出せていない」
「隠してあるの?」
「姉殿下の直近の子孫が持ち出して、失われたのではないかと言われている。その事を語っている記述も残っている」
なるほど、そうか。
「お父様、王家には?王家には聖女が残した物に日記や記述はないの?」
「‥‥お前に隠し事をするのは正直、難しいな。だが今はまだ、その時ではない。大神官殿も言っていただろう?お前が足掻けば助けを得られると」
「‥‥‥」
マジか…だけどプリシラは確かにまだ15歳で成人しても16歳だ。
私に前世の記憶があるから精神年齢は30歳に近いけど、周囲から見れば、私は若くて急ぎ過ぎているんだ。
でもそれに甘えていいの?ニコラは?
あと数年で危険に至るものではない?
私が急ぎ過ぎてるなら、第一王子は?彼ももの凄いスピードで物事を捉えている人だ。
私の中で結論は出ないまま、今日は屋敷に戻った。
ちなみに私達は姉殿下の愚痴ノートを完読したが、神殿チームはまだ読めてなかったので、次女殿下の日記は置いてきた。
急がないからジックリ読んで欲しい。そして新たな発見を見つけてくれたりしないかな〜。そこは他力本願だ。
だけどなんか気持ちがスッキリしない。
そんな時は兄と話したい。
今日は夕方には帰ってくるらしい兄の帰宅をプリシラは待つ。
「プリシラ、今はまだ研修中で忙しいから、複雑な刺繍がなかなか出来ないの。でも、とりあえずこれを持ってて」
姉は学校卒業後、休む間も無く王宮の薬草園だけじゃなく、薬事室や医務室にまで研修に出ていて忙しそうだ。
そんな中でも姉が渡してくれたのは魔法防御の魔法陣が刺繍されたハンカチだ。
「ありがとうお姉様。これで十分だわ」
「それで?第二王子殿下はどうだったの?」
「ハハハッお姉様、期待するような事はないわよ。弟みたいな感覚なの。面倒見なきゃって」
「14歳ならガキよね。5年後を期待するわね〜隣国の王子もイケてなかったの?」
「イケメンではあったけど、それだけかな。それに王族には呪いがかかっていて、彼らと結婚したなら光属性は生まれないだろうって言われたわ」
「怖っ!」
「お姉様、お姉様は同世代の中で人気No.1の花嫁候補なんだって、知ってた?」
「ふ〜ん、例え人気があっても自分に好きな人がいなければ、そんなの何の価値もないのよ?」
それはモテる女の余裕って感じ?それがモネ達の気に障っていたのかもしれないな。
「でもその人気のお陰で、条件の良い婿候補が見つかるって言ってたわよ?」
「そんなの要らないわ。その人気を全て投じて、好きになれる人よ現れろ!って感じね」
姉は、実は初恋もまだで、恋をしたいのかもしれないな。
「第一王子殿下も、侯爵令息も私には勧めるクセに自分は好きにならないの?」
「私の相手に選ぶなら、彼らは背負っているものが重いわね。それだからイイ顔をしてるんでしょうけど、私の相手じゃない事は間違いないわ」
「イノも?」
「ないわね」
即断か。何だか姉は、私以上に老成しているんじゃないだろうか?!
姉の好みって一体?
「彼らは、私にはありなの?」
「向こうが“あり”なんだわ。戦える女はモテるのよ?」
「でも最後に選ぶのは戦わない女でしょ?」
「ハハハ〜プリシラ、非戦闘員の女性の方が圧倒的に多いだけよ?生徒会のルシアちゃんは、私なんかより、もっと求婚状が多いはずよ?」
結局、姉と夜更け近くまで話し込んでしまった。
でも兄の帰宅も遅かったらしいけど。




