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「一体、何の話をしていたのか分からなくなった!」
「そうだな。とても深刻な話を伝えていたはずだったのにな。君が関わるとおかしくなるな」
「巻き込まれた人を加害者にしてはいけない!」
「ハハハッ。そうか」
「第一王子殿下、今後の魔物対策はまさか王都に屋根を作っていくとかじゃないよな?領主達に推奨したり」
「それはないな。この話を広めて下手に皆を混乱させたくない」
「まだ陛下にも神殿にも報告してないのでしょう?殿下、それなのに我々が先に聞いてしまって良かったのでしょうか?」
「ああ、構わない。私自身が早く誰かに話してしまいたかったのだと思う。それぐらい衝撃的な情報だろう?」
「確かに驚きましたね。色々と」
「それとコレはお前にだ。隣国から譲り受けた重力魔法の魔法書だ。初級に近いものしかないと言っていたが、全く無いよりはマシだろう」
「ありがとうございます、兄上!」
翌日の帰路の馬車の中で、プリシラは重力魔法の魔法書を見せて欲しいと第二王子殿下にお願いした。
初級とはいえ重力魔法なのだ。魔法書はプリシラの興味を掻き立てまくっていた。
しかし「何コレ?!」第一印象がそれだった。
「ああ可笑しいだろう?最初のページの魔法が、あのダンスで使う重力魔法で呪文なしの魔法なんだ」
「それは飛ばしても良いのでは?」
「でも今後も隣国と交流するなら必要かなぁって…」
アレを踊る機会はまたあるのか?でも、やるかどうかは彼の判断だしな。
「第二王子殿下は学校では騎士科ですか?魔法科を選択ですか?」
「もちろん騎士科だけど。違うか?」
「いいえ、良いんですけど魔法の選択授業は目一杯授業を入れて下さいね?」
「あ、うん。分かった」
「あと騎士科に行くなら、あのダンスは魔法を使わずに踊れるのは基本だと思いますよ?」
「そうだな。君も兄上も魔法を使ってないしな」
「少しコレ借りて読んでも良いですか?」
「属性外なのに?」
「はい。それでも内容が気になりますから」
「いいよ。酔わないようにね」
それからアーノルドがプリシラを観察していると、彼女は魔法書を開くと一瞬で集中し始めてしまった。それに凄い勢いで読んでいる。
更に自分のカバンからノートまで取り出して、何やら書き始めてしまった。もの凄い集中力だ。これが上級魔法まで極める人の集中力なんだ…と思わせられる。
自分が一番尊敬する兄王子ですら、上級魔法は一つか二つしか使えないはずだ。
しかも光属性の呪文は相当長いと聞く。そのせいでプリシラは呪文を歌に当てはめて覚えているのだという。
その発想もスゴイ。
そして一度集中を始めると途切れないのだ。でも昼ご飯を食べた後は、ガッツリ寝ていた。
ブルーノが「良い子はお昼寝の時間ですから」って言っていたので自分も寝ちゃったけど、次に起きた時はプリシラはまた魔法書に集中していた。
一体、いつ起きたんだ?
それに属性外なのに何でそんなに集中できるんだ?
そして夕方になって夕飯前に突然「出来た!」といきなり叫んだので驚いた。
「プリシラ、一体、何が出来たんだ?」
「第二王子殿下への学校入学までの課題ですよ」
「え?課題?」
「そう宿題とも言う」
「え〜っ!」
兄が春からの学校での魔法の習得について、プリシラにサポートを頼んだって聞いてたけど、まさか宿題を出されるとは思わなかった。
まだ学校が始まってもいないのに。
最初の第一印象は幼なげな少女で大丈夫か?って思ったのに、その後の印象がどんどん変わっていった。
今では少女どころか兄と並ぶ、立派な先輩魔法師に見えるが、実はとんでもない鬼教師になるのではないかという予感…。
「アーノルド、プリシラに宿題を出されたって?」
移動中の宿は兄と相部屋になっている。
自分も一人で何でも出来るように学ばされているが、兄の“できる侍従”のブルーノが、俺のこともあっという間に色々、仕度を手伝ってくれる。
彼自身も侯爵令息で人を使う身分のはずなのに、もの凄く気付くし動くし、それでもスマートだ。
さすが兄の筆頭侍従だ!って話が逸れた。
「はい。兄上、今朝、馬車の中で重力魔法の魔法書を見せて欲しいというから見せたら、あっという間に集中し出して、夕飯前に課題だとノートを渡されました。そしてその時、魔法書も付箋だらけで返されました」
「ノートを見せてもらえるか?」
「はい」私が差し出したノートを兄は開いていく。
「‥‥フム、すでに身に付いているところまで、やるんだな?」
「これまで呪文無しでやっていたので、呪文を覚えて詠唱する事で魔法が安定するのだと言ってました。基礎を固められたら中級以上は呪文が無くてもイケるだろうって」
「アイツ…呪文が無いのに重力魔法の中級イメージがついているのか?」
「そうみたいだ。兄上、プリシラってどうなってんの?」
「ハハハハハッ。さあ私にも分からん。だけど良かったなアーノルド。ここに書かれた内容を頑張れよ!」
兄はそう言って楽しそうにベッドに潜って、あっという間に寝てしまった。




