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第一章:世界の果てへ向かうスクールバス

#R15 #残酷な描写あり #都市伝説 #ホラー #村ホラー #サイコホラー #復讐 #ダークファンタジー #ヤンデレ #テケテケ

その観光バスは、深い森に囲まれた小道の窪みを通り過ぎるたびに、軋んだ音を立てていた。車内には、鼻をつく芳香剤の匂いと、十代の若者たちの汗の臭いが混じり合っている。


如月 江戸は最前列の席に座り、少し震える手で出席簿を握りしめていた。学級委員長として、彼は何かがおかしいと感じていた。バスの運転手は青木ヶ原のエリアに入ってから一言も発しておらず、ダッシュボードのGPSは灰色のスタティック画面を表示したままだ。


「江戸くん、緊張しすぎ。バカみたいな顔になってるわよ」


鋭い声が響いた。小塚 朱莉だ。彼女は二列目に座り、血のような赤色をした爪を磨くのに余念がない。バスが本来の遠足ルートから大きく外れていることなど、彼女にはどうでもいいことのようだった。彼女にとって、この森は次の自撮りの背景か、あるいは一年前の忌まわしい記憶を捨てるための場所に過ぎない。


「朱莉、運転手さんがさっきから僕の質問に答えてくれないんだ。それに見て……」江戸は窓の外を指さした。「あの木々……どうして全部、僕たちの方にお辞儀をしているように見えるんだろう?」


その喧騒から離れた最後尾の席に、神薙かんなぎ冥が座っていた。彼女はスマホをいじっていない。その物憂げな瞳は、木々の隙間を時折通り過ぎる黒い影を、じっと見つめていた。


「お辞儀をしているんじゃないわ、江戸くん」冥の声は低かったが、バスのエンジン音を突き抜けて響いた。「道を開けているのよ。大きな『何か』が通り過ぎるために」


江戸は唾を飲み込んだ。「どういう意味だい、冥ちゃん?」


冥は答えなかった。彼女はただ、ポケットの中にある古いお守りを握りしめていた。そのお守りは、激しく震え続けている。


突如として、ガタンッ! という大きな衝撃が走った。


バスが急停車し、生徒たちの体が前方になぎ倒される。エンジンの音が完全に止まり、耳をつんざくような静寂が訪れた。外では、少し開いたバスの扉の隙間から、白い霧が這いずるように入り込み始めていた。


「ちょっと、なんで止まるのよ!?」朱莉がいらだたしげに叫ぶ。


運転手がゆっくりと振り返った。その顔は土気色で、瞳孔のない真っ白な目が彼らを見据えている。彼はただ、森の暗闇の中の一点を指さした。


そこには、ねじれ曲がった木の枝の上に、古びて破れた通学カバンが引っかかっていた。江戸には見覚えがある。それは一年前に行方不明になった生徒、黄泉津 赤目のカバンだった。


「赤目……?」江戸は信じられないといった様子で呟いた。


その瞬間、バスの床下から、リズミカルな摩擦音が聞こえてきた。機械の音ではない。鋭い何かがアスファルトを掻きむしる音だ。


テケ……

テケ……


彼らに残された唯一の道は、バスを降りて「樹海」の中へと足を踏み入れることだけだった。彼らはまだ気づいていない。この逃走こそが、江戸の血塗られた故郷への帰還の始まりであることを。

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