対ベルガミーニ会議
「……とはいえ、こちらから何の準備もなく突っ込んでいくことはできないから、まずは、情報の整理かな」
“ボスモード”のスイッチを切る。アロンツォさんに、2人の監視を引き続き頼み、みんなで、隠し階段から3階へ移動。
「あれ、橘さん、どうしたんですか?」
ふと振り返ると、どうしたらよいかわからないらしく、立ったままキョロキョロしている生徒会長がいた。
リディオが気がつかなければ、忘れていた。――“橘さん”なんだね。よし。
橘さんを連れて3階へ上がると、みんなで、テーブルを囲んで雑談。
「ボスは、嘘が嫌いだとか言ってるけど、結構な演技派ですよ」
「びっくりだな。真希にこんな特技があったなんて」
「怪しまれてないようでよかった~」
リディオ、陽太に返すと、夏紀に肩をはたかれた。――痛い。
「真希、心配するレベルが低いよ。真希んとこの生徒会長も、演技だとは思わなかったけど」
私は、本気80%、照れかくし20%で、言い訳をする。
「でもね、こっちは必死だったんだよ。なんだか申し訳なくて」
「そんなんじゃボスやってけないですよー?」
リディオに笑われたけど、仕方あるまい。
「あの……、……」
リディオに向かい、橘さんがおずおずと声をかけた。
「はい? あと、リディオだけど」
同じ幹部とはいえ、先輩で生徒会長なのだ。よく、そんなにスパッとタメ口に切り替えられるな、と感心する。どうしよう、先輩にタメ口とか、私ダメかも。大変な人を部下にしてしまった予感。
「リディオさん、あの方が、ボスですよね?」
「まあ、今はまだ、クイントがボスだけどな。俺たちセスト幹部にとっては、セストがボスでもいいだろう」
なんだかものすごく“偉い”アピールされてる気がするけど、今は止めない方がいいんだろうな。――さりげなくハードルあげて、プレッシャーかけないで欲しいなぁ……。
「じゃあ、ボスとそんな話し方をしてても、いいの……?」
「ああ、それならご心配なく。今はこうでも、仕事はちゃんとしますから……できてると思うんですけど」
私が会話に乱入すると、橘さんの背筋が伸びた。ベルガミーニファミリーは、相当格差があったらしいからなぁ。
――もっとも、私が知らないだけで、本部の方(私がいるのは日本支部。クインタがいる内は、日本支部で勉強するらしい)はそうなっているのかもしれないし、私がそう望んだだけではそうにできないのかもしれないし、下級で小さいファミリーだから、そうにできるのかもしれない。リディオはしたくはないのかもしれないし。
「大丈夫、ボスはできてますよ」
「それは良かった。――じゃあ、始めますか」
テーブルを囲むようにおいてある椅子。その自分のものに座り、いつものように深呼吸して、“ボスモード”のスイッチを入れる。それに呼応するように、みんなも顔を引き締めた。橘さんも、空いている席に座った。アロンツォさんの席が空いているが、仕方ない。今回は見張りをしていてもらおう。
「夏紀、記録よろしく」
リディオがノートとシャーペン、消しゴムを渡して、夏紀がそれを受け取った。
「まずは、ベルガミーニファミリーについて。橘さん、持っている限りの情報を」
橘さんがマフィア経験者のため、割と簡潔にまとめられていて良かった。足りないところは、リディオが質問した。
――橘さん曰く、今のボスは10代目。詳しくは分からないが、幹部は最低5人以上。
「まあ普通、下っ端、それも子供に与えられる情報なんて、こんなものですよ。――幹部が5人以上なら、中の下ってとこですね。それから、10代続いてるってところから見ても、ヴェルデより大きいことは言えますね。日本に進出しているのは、2つの理由が考えられます。イタリアにおいて、余裕があるのか、真逆かです。または、日本に興味があるわけではない」
リディオの言いたいことを、口に出して確認する。
「イタリアで、人数や金銭的に余裕があるから、日本にまで手を伸ばしてみる。あるいは、イタリアでやっていけないから、比較的マフィアが寄っていない日本へ手を出してみる。または、ヴェルデの情報を集めに来た。――こんなとこかな?」
「だと思われます。最近、小金井道博の情報を集めようとしている妙な男もいたから、ベルガミーニの者でないかも、調べる必要がありそうですね」
――確かに。
「下のお店には、その事について、少し警戒して情報を集めるように指示しておいて。それから、橘さんと後2人の対応だけど――」
すこし考えて、やっぱり思いついたことを言うことにした。
「橘さんには今まで通りにしてもらう。生徒会長として、今までもしていたかもしれないけど、情報集めや統制をお願いすることもあるかもしれない。それについて何か」
「大丈夫です」
橘さんの同意をもらい、反対者も出ないので、よし。問題は、後の2人。
「2人は、このビルの2階に住み込んでもらって、お店で働いてもらおうと思ってる。一人はそのまま様子見。もう一人は、こっちが落ち着いてきたら、スパイとして向こうに帰ってもらうつもり。――だけど、スパイにするなら、急いだ方がいいと思うんだけど、あの人が寝返らない確証もないから……、やっぱり、2人ともお店でいいのかも……?」
少し悩むんだよね。
部屋を静寂がつつんだ。それを破ったのは、橘さん。なにかいい案があるらしい。
「あの、それなら、私に案があります。ベルガミーニファミリーの、ボスを利用しましょう」
内容を聞いたみんなは、全員賛成してくれた。ベルガミーニのボスを利用なんて、すっかりヴェルデの幹部だ。リディオ同様、切り替えが早い。すごいな。
橘さんは、少し、警戒心を解いてくれたようだった。
遅くなりました




