ritarudundo おまけ
本編じゃない…おまけです、おまけ。
「やっぱり来なければ良かった」
「まあまあ、私が無理にお願いしたからだよね…」
「これは貸しの一つとしてカウントする」
恨めしそうにこちらを睨む三日月。というのも二人はヴァニラの城から歩いて帰っていた。
魔王の癖に非効率的な方法をとっていると馬鹿にされるかもしれないが、ヴァニラの領地内数十キロは魔法を阻害する魔法がかけてあり、例え魔王であろうが、自分の家まで一瞬で帰ることはできない。
寧ろ、ヴァニラ自身でさえも魔法が使えなくなってしまうのだ。
ならば、城の内部では魔法が使えないのかと問えば、否定の言葉が返ってくるだろう。ヴァニラ曰く「城の内部で魔法が使えなかったら存分に戦いを楽しむことができない」だそうだ。
平和主義のアプリコットからすれば理解しがたいことだが、戦闘狂の椿なら同感できるのだろうか。
兎にも角にも不便で仕方ないのだ。ヴァニラを置いて出てきてしまった以上、城に戻ったら攻撃呪文の猛襲をプレゼントされることは目に見えていた。
「でも、数年前まであんなだった人間が言う台詞とは思えないよ、生命の大切さを『化け物』が説いたところで…」
そこまで言ったところで三日月は口を閉じた。これ以上の無駄口を叩けば、普段は見ることもできないような鋭い眼をしたアプリコットに喉笛を切り裂かれるだろう。
「わかったよ、もう言わないから」
アプリコットが笑顔で歩き出す、全く恐ろしい奴だ。
(敵にだけは回したくないね)
それぞれの思案が渦巻く中、北方の雪山で三日月はそう思った。
ちなみに魔王のトータルステータスで一番強いのはアプリコットです。
余談ですが一番弱いのはヴァニラです。
ステータスに過ぎませんが。