序曲
ガチで続くかわからない。
目を覚ますと知らない場所に倒れていた。
(どこなんだ…ここ、草原?)
仰向けに倒れこんでいた体勢から起き上がると、視界が広がった。
居場所がわからない、たったそれだけのこと、でも、現在のこの状況はあまりにも不可思議なことで逆に恐怖さえ覚えさせる。
見渡す限り背高の草ばかり、その中にたんぽぽを見つけ、ほんわかとした気持ちになるがそんな気持ちになっている場合じゃない。心にゆとりを持つことは大事だ、けど、状況が解決するわけではない。
たんぽぽよりもスミレのほうが好きだし。
青い空が憎い。快晴だ。どこかの民族に雨ごいをしてほしいくらいだ。
ここで雨が降ってきても困ってしまうが。
というか、暑い。
ギラギラと照り付ける太陽が、私を襲う。焼き殺すぐらいの勢いだ。温暖化と共に地球の末路を感じる。こんなに暑いということは季節は夏なのだろうか。
そもそも、季節という概念があるのだろうか。
(ん?…そもそも、私って誰なんだ……?)
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(待て待て待て、気付いてしまった、うん、いや、私って誰なんだ……?いや、この流れからして概念的なものだと思うかもしれないけど、そういうわけじゃなくて、自分の記憶が一切、残ってないというか、残っている記憶がないというか…これは……これはもしかして、記憶喪失というやつでは!)
驚きの新発見に語彙力が低下し、背高の草原をうろうろする私。確実に不審者だ。最も、草原でそんなことをしていて不審者だと断定してくれる人間は残念ながらここにはいないが。
自己完結の極みだが、私はそこまで動揺してはいないはずだ。
寧ろ、この展開に少しわくわくしていた。
すべての記憶を無くしているわけではなく、必要最低限以上の生活ができる知識が残っていることに気付いたからだ。
なくなっている記憶は、自分とその周りの人間環境、そして家庭環境。残っている記憶は生活の記憶とルール、言葉、そしてかつて私が学んでいたこと。
日本に住んでいたことと、日本のなかでも田舎オブ田舎のような場所に住んでいたこと。
東京が首都だということも知っているし、47都道府県も覚えている。
足し算も掛け算も引き算もできる、え?割り算、苦手なんだよ。
もしも、その記憶さえ残っていなかったら、私はこの場所で原人のような生活を送ることになっていただろう。
自分に感謝だ。ありがとう私。ありがとう。
さて、自己完結が済んだところで、私がいま、おかれている状況を確認しようと思う。
持ち物はない、手ぶらだ。性別、間違うことなき女だ、その為この小説の一人称も『私』だ。
見た目、髪の長さは肩につくくらいだ。服は着ている、これは救いだ。しかし、制服だ。セーラー服だ。コアな人間が見たら喜ぶだろうか。
大体の情報は確認してしまった。
うん、どうしようか。
やることが無くなり思考も回らなくなった私は道なき道に足を進めていくのだった。
続けて描いてもいいですか…?