a capella
魔王
「今から第十二回五天王会議を始めます」
明るい部屋の中で声が響く。まるでコンサートホールのような部屋の中央には五つの豪華な椅子、その下には高度な技術が施された魔法陣が輝きを放ち、その椅子にはその椅子に座るべき主が座っている。
そして、五つの椅子はそれぞれ違う花の装飾が施されている。
「アプリコット!私こんな会議してるより家に帰りたいんですけど」
「ああ、我もだ。居城に帰りやらなければいけないことがあるのだが」
東洋の島国の花である、桜の模様が刻まれた椅子の主『朧 三日月』が不機嫌な顔で言い放つ。長い黒髪が揺れ、三日月が刻まれた瞳は細く、機嫌の悪さが態度からも表れている。
同じくして、朧の隣に陣を取り、五つの中で一番目立つ、ドラゴンと薔薇の装飾が刻まれた椅子に偉そうに腰かける少女『ラズライト・J・ヴァニラ』が続けた。そこまで不機嫌そうには見えないが、普段、文句ばかり言っているせいか、鋭く光る片眼が会議を始めた張本人に向けられていた。
「いやいや、面白い情報が入ってきているんだなあ、それが」
「ええ、なかなかに珍しいことです」
そう言いながら、『アプリコット』が二人をなだめる。椅子には質素だが美しい林檎の花の文様が刻まれており、どこからか甘い香りが漂ってくる。青い眼はヴァニラへと向けられ、口には出していないが視線で彼女を牽制していた。
笑みを浮かべ、アプリコットに同意するのは『シャルル・シャントゥ』だ。椅子には紫陽花が刻まれていて、見ているとどこか、狂ってしまうような気分にさせられる。笑みこそ浮かんでいるが、会議を邪魔した二人に彼女が苛立ちを覚えているのは誰の目から見ても明らかだった。
「ふっふっふ、では、本日の議題はこの俺が発表してさしあげましょう!」
大きな声で叫ぶ『化野 椿』が椿の模様が入っている椅子の上に立ち上がる。その、持ち前の明るさが部屋の不穏な空気を拭った。
椅子には名前の通り、椿が刻まれており、ヴァニラと負けず劣らずの豪華な装飾が施されている。キラキラとした目はこれから出される議題に期待しているのが感じられ、四人に多少の罪悪感を生まれさせた。
「我が同胞たちがそういうならば、妥協してやろう。して椿よ、貴様が話そうとしていた本日の議題について教えてはくれないか?」
「同意」
二人が帰らないことをみると、多少の興味はあるようだ。ヴァニラは情報がなかなか届かないところに城を置いているため、新しい話題に疎い。三日月も同じような状況下にあるからか興味はもっているようだ。
「えっと、では要望にお応えして本日の議題はこれだっ!」
椿の掛け声と共に空中に文字が浮かび上がる。
美しい字体で刻まれたのは『魔王』である五人の最も忌むべき存在でもあるもの
『勇者の復活』
が予言されていた。
続きます




