青
家に着いた。
僕はベッドに横になった。
今日はかなり歩いたのだと思う。
足がじんじんする。
出不精にしては頑張ったのだ。
目を閉じる。あの光が浮かぶ。
あれは、何なのだろうか。
彼女があの現象を引き起こしたのだろう。
恐らく、あの光は僕にとって、何らかの契機なのだ。
僕を目的論的に支える何か。
まるで、人が身から溢れる欲求を頼りに、神を見出したような。
僕はああ在るべきであると、僕の内が言っている。
これを信じるかどうかは疑念が残るものである。
がしかし、僕は信じろと言っている。
これを、この正体を突き止めよう。
きっとそれが僕の空虚な生を彩るのだ。
この自己満足が僕を救うのだ。
ネックレスを眺める。
美しい銀色だ。
それ以上はない。
あの輝かしさは最早どこにもない。
よって手掛かりはもうない。
しかしこの感覚を忘れぬよう、これを肌身離さず持つべきだ。
そんなことを思い、僕は眠りについた。
朝だ。
スマホを見ると今は8:30のようだ。
良い時間に目覚めることができた。
昨日眠った時間を考えると、寝すぎたような気がするが。
ともあれ、良い朝だ。
眠い目を擦り、キッチンへと向かう。
軽く食事を済ませて、外に出る。
僕に日課の運動などという高尚な趣味がある訳が無い。
ただ、あの丘に再び出向いてみる気になっただけだ。
変わらぬ街並みを抜け、目的地に着く。
春の風が、ネックレスを揺らす。
ただの丘だ。
穏やかさに包まれている。
しかし僕には抜け殻のように見える。
彼女がいた所に、僕も立ってみる。
…何も感じない。
目に街並みが映るだけだ。
空の青と溶け合う街が一望できる。
彼女もこの景色を眺めていたのかもしれない。
彼女は何者なのだろうか。
一体どういう訳でここに立っていたのだろうか。
あの光、彼女への既視感、その原理はつまるところどうだってよいのだ。
どうせ知りえない。
あれは僕の限界を遥かに凌駕するのだ、たぶん。
何故僕なのか。
あの表情にはどのような思いが込められていたのか。
あのような目を向けられるのは、初めてのことだった。
まるで僕を慈しむかのような。
…帰ろうか。何故か感傷的になってしまった。
僕は家に戻ることにした。




