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追憶のイノセント・イーヴィル  作者: Krewia
自治区パルメアン
9/13

No09 初陣

「もう二度とこのようなことは無いように」

「すいませんでした」

 俺、レイン、プウの3人が同時に謝罪の意を管理人さんに頭を下げる。

「分かったら部屋の中で術式を展開するなんていう非常識なことはしないように」

「本当にすいませんでした!」

 ぐうの音も出ない。




「ところでミーヤ、戦闘で術式を展開してみたくないです?」

「したいとは思うが……悪魔は怖い」

「そんなこと言ってたら傭兵なんてやってけないですよ……」

「私もレベル上げしたいし行こうよ」

 プウってレベルそんなに高くないのかな。

「まあ簡単なのなら……」

「じゃあ掲示板を確認しに行きましょう!」

「掲示板って何?」

「傭兵専門の依頼書が張ってあります」

 傭兵専門てことは……嫌な予感が。

 兵塔の階段で1階まで降りるとロビーに人だかりが出来ているのがわかった。

「あの、人がいっぱい集まってる所にありますよ」

 人を掻き分けるように進むと、木で出来た掲示板が視界に入る。

「いろいろあるけど……3人いるから……これなんかどうです?」

「べレスト及び北部小隊の掃討?よし止めだ、今すぐ帰る」

「いやいや案外簡単ですよ?小隊は雑魚しかいないし、大丈夫です!」

 なーにーが大丈夫、だ。小隊ってことは結構たくさんいるんじゃないのか。

「まあ、100匹くらいだと思うよ。奴ら団結力ないし」

 悪魔さんたちもお前らに団結力どうこう言われたくないと思うが。

「オーケーってことですね、よし、しゅっぱつです!」

 俺の話し少しは聞けよ。




「『逆鱗』展開!」

 背後の敵の体躯を幾つもの雷撃が貫通した。

「プウ、サンキュ!」

「別に、お前のためじゃないし……」

「どこのツンデレキャラだよ……」

 そう言いつつも俺は前方から迫り狂う槍の穂を薙ぎ払う。

 跳躍と同時に足に『加速』を展開、敵の2メートル位上空に跳び上がると振り返りざま悪魔の青い頭めがけ剣を投げつけた。

「ぎやぁああああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁッぁぁあぁ」

「だからミーヤ、剣を投げないでください!」

 着地を済ませると後ろで喚く悪魔に突き刺さっている自らの剣を掴み取り心臓の位置までゆっくりと縦に切り裂いてゆく。

「がふっ、ぎいっうぎゃぁあああああぁぁぁぁぁぁ」

 何か硬い感覚が伝わると同時に悪魔の胸板から剣の柄が突き出した。

 ゆっくりと悪魔が膝をつき、崩れ落ちる。

 血肉を削られた悪魔の上で真紅の花が咲いた。

「ミーヤ、大丈夫?なんか、嬉しそうだったよ?」

 ぼうっと目の前に散らばる悪魔の残骸を眺めていた。

 自分の殺した者達の肉魂を。

 ふと、黒ローブと自分の姿を重ね合わせていた。

 奴と俺で何が異なるのだろう。

 奴もカノンさんを殺すとき、このようなやり方をしたのだろうか。

 まずい、なんだか気分が悪くなってきた。

 吐き気が……。

「ミ、ミーヤ顔色悪いよ?やっぱり気分悪かったです?ごめんなさい、すぐに町に戻りましょう」

「い、いや大丈夫。依頼を続けよう」

「何言ってるんです、そんなことできるわけないですよ」

「レ、レイン?大変だよ!森の中からもう1つ小隊が……りょ、量が多いよ!150っぴきくらい」

「そんな……この近くに要塞でもあるの?こんなときに……と、とりあえず逃げましょう!」

「う、うん!」

 レインは腰の鞘に短剣を2本収めると俺を背負って走り出した。

 だが、俺を背負ってているかからか動きが遅い。

 巨大な防御術式らしきものを展開した悪魔を先頭に大量に追いかけてきているのが伺える。

「プウ、後ろで防御系統の術式が展開されてる!遠距離魔法で破壊してくれ!」

 プウは杖を後ろに向けると小声で詠唱を重ねる。

「局部破壊術式……『逆鱗』展開!」

 杖より放たれた雷撃は防御術式を少し傷つけたものの破壊は敵わない。

「『烙印』なら破れるのに……詠唱の時間を2人で稼いで!」

「了解!」

 レインは俺を降ろすと短剣を引き抜き敵に切りかかった。

「な、隊列を変えた?知能が高いの?」

 悪魔たちは中央の魔道士を護る様に隊列を組みかえる。

「術式が展開されてる以上、傷つけられないってわけ?」

「ミーヤ、戦えますか?」

「ああ」

「私が小型の防御術式をミーヤに展開するから、敵の群れに割り込んでください!」

 無理させるなぁ、俺には。

「敵の術式に引っかからないのか?」

「引っかからないはずです。あんなに大きいからですね、たぶん防げるのは遠距離攻撃だけだと思います」

 俺が抜刀するとレインが手を肩に掛けてくる。

「『拒絶』、展開」

 詠唱が終了すると同時に俺は敵の群れへと疾走する。

 敵の防御術式への侵入まで3メートル、2メートル。

 

 瞬間、爆音と共に俺の体は宙に吹き飛ばされた。


 術式同士が反発した?

 地に叩きつけられ身を悶えさせながらも状況を確認する。

 相手の術式はほとんど傷ついていない、と思う。

 視界の隅に血にまみれたレインの姿が映った。

「大丈夫か!」

「ええ、私は大丈夫です、軽傷ですから。それより大変なことが分かりました。たぶんですけど……あの術式の中では何も展開出来ないんだと思います」

「じゃあ俺たちは術式を使えないのか?」

「そういうことになりますね」

 じゃあ、俺はあの大群の中に無装備で突っ込まないといけないのかよ。

「プウ、詠唱はまだ終わんないの?」

「見れば分かるよね?今詠唱してるから話しかけないで」

 相変わらず年上に対する尊敬の念が全く感じられないな。

 とりあえず時間稼ぎ……するしかないよな。

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