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帰り道

お久しぶりです。

「み…みんなちょっといい?」

「ど、どうしたとアカリン!?」


 ここでの最後の鉱石掘りも終わって帰る用意をしてたら、アカリちゃんがお顔真っ青で声をかけてきたね。急にどうしたのかな?体調が悪いなら、休んだほうがいいと思うよ。


「こ、ここに来るまでに話したと思うけどさ、アタシ今回の鉱山探索はさ、配信じゃなくて録画で撮るって言ったじゃん。」

「ええ、そうでしたね。」

「め、珍しいなって思いました!」

「ウチとのコラボ用に動画をまとめるとよね?」

「う、うん。その予定だったんだけど…」

「だけど?」

「ホントごめんみんな!アタシのミスで配信になってたみたい!」

「「「「えーっ!!!」」」」

「?」


 なんか、アカリちゃんがやらかしちゃったみたいだね。よくわかんないけど。アカリちゃんとクリムゾンちゃんは、ゲームをやってるところをネットで配信してるって言ってたから、多分そのことなんだろうけど、一体何がどう問題なのかさっぱりだよね。


「確認したら、街からここに来るまで全部生配信してた…」

「そ、それはまた派手に…」

「なんかもう切るに切れなくてまだ配信中。」

「しょうがなかね。ウチが撮っとる動画はどうすればいいと?」

「それはまた後でちゃんとした動画にして、コラボチャンネルで上げればいいと思う。」

「ならよか!うちが頑張っとうとこみんなに見てもらいたか!…一応設定確認しとくばい。撮れとうよね?」

「他のみんなもホントにごめん!動画楽しみにしてるって言ってくれたのになんかこんな事になっちゃって。」

「いえいえ、驚きはしましたが構いませんよ。配信されて困るようなら、それは自分の行いが悪いせいですので。」

「そ、そうですよ!」

「ですね。」

「み、みんな…」


 うむうむ、よくわかんないけど、なんかそこまで大問題ってわけじゃないのかな?アカリちゃんはだいぶ焦ってるみたいだったけど、みんなは気にしすぎないでもいいよって言ってるね。みんないい子!これでなんかクリムゾンちゃんがさっきから固まって動かなくなっちゃったのを除けば問題解決かな。


「さて、じゃあ帰りましょう「のわー!!」か…」

「くりむー?」

「今度はお前が真っ青じゃねえか。大丈夫かよ。」

「ア、 アカリン。ウチ今録画の設定確認しとったんよ。そしたら…」

「そしたら?」

「ウチも生配信しとるばい…」

「…マジ?」


 ん?どうやらアカリちゃんとおんなじミスをクリムゾンちゃんもやっちゃったみたいだね。さっきまで元気いっぱいだったクリムゾンちゃんが青い顔になってる。まあでも、アカリちゃんが大丈夫だったんだから、クリムゾンちゃんも大丈夫だよね?よくわかんないけど。


「ねえねえ、その生配信はそんなによくないことなの?」

「んー…しこたま怒られるだろうけど、たぶん大丈夫じゃないかなー。大丈夫だといいなー。大丈夫な可能性もなくはないよなーってカンジ。初犯じゃないからなーアタシ。」

「うぅ…またやってしもうたばい。…アカリンも?」

「あ、くりむーも初めてじゃないカンジ?ね。やっちゃうよね。」

「そうやとよー!気をつけんといかんち思ちょっとばってんねー。」

「ねー。」


 うんうん、そうだよね。やっちゃいけないって分かってても、ついうっかりやっちゃうことってあるよね。すごく、すごくよくわかるよ。わたしもそれでいっぱい怒られたし。でもしょうがないよね。わざとじゃないんだし。気をつけてるんだけどね。なのになんでやらかしちゃうんだろうねー。ふしぎ。


 そんな事を考えてると、二人の話はこれからどうするかってことになってたね。


「とりあえず、配信どうする?切る?いっそのこと町につくまでやっちゃう?」

「二人だけならそれもよかけど、今はうちら以外もおるけんね。よくなかばい。」

「確かに。まあ、このあとは特にイベントもなさそうだしね。」

「そうやね。もう帰るだけやけん。一緒に切るばい!」

「オッケー!くりむーと一緒なら切れるわ。」


 そう言うと、二人は急に何にもないところに向かって、「ばいばーい」って手を振ってから、何かを操作する仕草をしたよ。たぶん二人にしか見えない画面が出てたんだろうね。そういえば、お友達と一緒なら踏ん切りがつくことって多いよね?わたしも自分ひとりだと「どうしよ~」ってなることも、くろちゃんに「やって!」って言われたらやれるもんね。


「ごめ~ん。この埋め合わせは後で必ずするから!」

「もちろんウチもするばい!」

「いえいえ、先程も言った通り気にしてませんから。」


 ありゃりゃ、またさっきの話に戻ってるね。あ、でもそれなら…


「いや、でも…」

「はいは~い!だったら、わたし二人のサインがほしいな!」

「あ、いいですねそれ。自分も欲しいです!」

「わ、わたしも!」

「へ?サイン?もちろんいいけど…」

「そんなんで良かと?」

「うむ!」


 なんかもらわないとふたりともずっと気にしてるからね。だったら遠慮せず、二人が簡単に用意できて、私にとって価値があるものをもらっちゃえばいいんだもんね。ふっふっふ。昔そう奥さんから教わったもんね。ちゃんと実践できてる!わたし、あたまいい!


 それに、二人は有名人みたいだし、そんな二人のサインなら孫たちにも自慢できるからね!おじいちゃんすごいって言われるかもしれないね!ふふふ、たのしみ。


「ま、オレにゃなんのこっちゃわかんねえけどよ。他の奴らがいいって言ってんだから、あんま気にし過ぎも良くねえぜ。」

「ベルっち…。うん!よし、みんな、ありがとう!めっちゃ気合い入れてサイン書くから!」

「ウチも気張って書くばい!」

「うーし、じゃあさっさと帰ろーぜ。」


 よーし、帰ろう!!






~1時間後~


「でた~!」

「おお~、すごく久しぶりに空を見た気分です。」

「濃い冒険でしたもんね。」

「きれ~い…」

「すごか~!」

「へえ、いいもんだな。」

「キ、キラキラしてます!」


 ようやく鉱山の入り口まで帰ってきたね。外に出てみると、左手から段々と明るくなっていく空の中に、まだまだたくさんの星がキラキラ輝いててすごくきれいだね。スクショとっとこーっと!パシャパシャ。


 道の先の方には、ワンダルの街の城壁が上の方だけ見えるね。壁の上で動く影は見張りの兵士さんかな。ついでにパシャパシャ。…ん?


『夜が逃げていく。何処へ?西へ。昼が東から追って来る故に。逃げども逃げども差は広がらず、追えども追えども差は縮まらぬ。ならば、昼は夜を知らず、また夜も昼を知らず。ただ互いの在ることを、相容れずを知るのみ。……む?』


 うーむ、見たことあるヒゲモジャおじいさんだね。成仏してなかったみたい。また詩を詠んでる。いつの間にやら、わたしたちのすぐ近くにいたよ。でも、他のみんなはおじいさんのこと全然気にしてないね。やっぱり幽霊さんなのかな?


「おはよーございます!」

『またヌシか。ふむ、良き眼を得たな。』

「でしょー!」

『励むが良い。』


 あ、またおじいさんが消えてくね。前とおんなじ感じだし、今回も成仏はしなさそう。またね~。


 そうやっておじいさんに手を振ってると、アカリちゃんたちに声をかけられたね。


「ア、 アヤ?急にどうしたの?」

「誰かおったと?」

「ああ、ついに頭が…」


 ん~。やっぱりおじいさんが見えてない感じだったのかな?すごく不思議そうにしてるね。ベルちゃんはなんか失礼なこと言ってるけど。


「おじいさんがね、ここにいたんだよ。こーんな長いおひげのおじいさん」

「爺さん?こーんなひげの?……あー、もしかして詩を詠んでる?」

「そう!こーんなおひげの。詩を詠んでた!」


 どうやらベルちゃんはおじいさんについてなにか知ってるみたいだね。あ、もしかしてベルちゃんのおじいさんなのかな?


「そんなわけねーだろ。プロヴィデンス教の神の一柱にそういう神がいるんだよ。」

「ええっ!あのおじいさん神様だったの!?」

「いや、かもしれねえって話だ。オレらはその爺さん見てねえし。神様が今その辺にいましたって言われても何も実感ねえわけだしな。」

「まあ、確かにね~。それで、どんな神様なの?」

「【運命神ゴート】って言ってな。世界の運命を詩に詠んで、世界を旅する神らしいぜ。あー、これ以上詳しくは知らねえ。教会の奴らにでも聞いてくれ。」


 なるほど~。……ベルちゃんのおじいさんでないことはよくわかったね!






 クソッタレな蟻の巣からようやく帰ってこれた。街を出てからまだ半日も経ってねえが、すげー久しぶりに帰ってきた気分だぜ。まあ、まだ日が昇らねえから正確には門の外で待ってる状態なんだが、流石にもう帰ってきたって言っていいだろ。


 オレたちは今、ワンダルの北門の外で門が開くのを持ってるとこだ。日が昇るのはまだもうちっと後だな。アヤとクリムゾンは、日が昇るまで暇だから狩りでもしようよって言ってたが、賛同者はゼロだったな。そんな元気があるのはテメーらだけだバカ共!


 ……あー、マジで死ぬかと思った。アヤがいなかったら間違いなく死んじまってたし、キッチリ礼はしねーとな。…ん?あれ?ちょっと待てよ。オレができる礼ってなんだ?ふつーに考えたらやっぱ鍛冶だよな。それ以外できねーしよ。ただ、今のオレが作れるもんでアヤの助けになるようなレベルのが作れっかなって言うのが問題だよな。


 つってもやるしかねーんだが。アヤの戦いは見たんだ。あれに耐えられるだけのモンを打たねーとな。…うし!目標があるとやっぱやる気出るぜ。


「あ、門番さんがでてきた。もう門が開くのかな?」

「いや、まだだな。大体出てきてから開くまで10分くらいかかるぜ。」

「お、じゃあもうちょっとじゃん。」


 顔見知りの門番が門を開ける準備を始めた。もうそろそろ太陽も顔を見せる頃か。街に入ったら、親父とお袋にあやまんねーとな。心配かけちまってるだろうし。その後はまた日が沈むまで親方んとこで仕事だ。徹夜はキチーが、自業自得だな。しゃーねえ。


 ちなみに、親方は親父の親友だ。2人して武器づくりが3度の飯よりも好きな武器製造バカだ。親父は最近、店番が忙しいみてーであんまり工房には顔を出さなくなっちまってるがな。


「ん?なんか門のとこ、揉めてない?」

「そうですね。門の内側でしょうか。声だけ聞こえますね。」

「オイオイオイオイ、マジかよ……」


 門のとこから、さっさと開けろ、人の命がかかってるかもしれねえんだぞ!と怒鳴り声が聞こえる。嘘だろ。誰か嘘だと言ってくれ。何度聞いても親父の声に聞こえる。ヤバイヤバイヤバイ。


 このままだと親父が門をぶち破りかねねえし、一応声をかけとかねえと。多分オレを心配してのことだろうしな。


「親父ぃ!!今戻るから待っててくれ!」

「ベル!!そこにいるのか!?」

「ああ!!門が開いたらすぐに入るから!」

「わかった!!覚悟しとけよ!」


げっ!やっぱ親父キレてるじゃねえか!最悪だ。こりゃ間違いなく一発ぶん殴られるな。まあな、明らかに今回はオレがわりーからな。しょーがねえんだが、しょーがねえんだが!


親父が静かになったら、門番たちが開門準備を再開した。流石にあれは手が止まるよな。あーもう、さっさと街に入っちまいてーのに、このまま開かなくてもいいんじゃねえかなって思えてくるぜ。


「中にいる人ってベルっちのパパ?」

「みてーだ。あ~、マジかぁ~…」

「ベルっちのこと超心配してたし、いいお父さんじゃん。」

「まあ…な。」


 たしかにいい親父じゃあるんだが、手が出るのが早すぎんだよな。特に仕事の時。今までなんべんゲンコツ落とされたか知らんぜ。


「開門!これより門を通りたいものは、身分証の提示とどこから来たかを述べよ!」

「や、やっと開きましたね!で、でも、身分証ってなんでしょう?」

「あ、えっとね。身分証はね、冒険者カードでいいみたい。もってるよね?」

「は、はい!」


 仲間たちと話してたら、ようやく日が昇って門が開いた。門の外にいるのはオレたちだけだから、すぐに中に入れる。一晩中旧鉱山に籠もってたって言ったら、門番がだいぶ驚いてたな。まあ、自分のことじゃなけりゃ、俺も同じ反応だと思うがよ。


「うむ!ぶじに帰ってこれたね!帰るまでが、ぼうけん!」

「いやいや遠足じゃないんだからさ。言いたいこともわかるケド。」


 隣からそんな話し声が聞こえる。確かに冒険、っていうか探窟は無事に終わったが、うーん、俺はこのあと無事でいられ「ベル!!どこほっつき歩いてやがった!!」……あ、これは無理だな間違いねえ。


 門の奥には、鬼の形相の親父が今にも飛びかからんばかりの剣幕で待ち構えていた。今の親父と比べりゃ、あのジェネラルですら可愛いもんだ。割と本気で。


 親父は肩を怒らせこっちへやってくる。一歩ごとに親父の拳がより固く握られていくのがわかる。…流石に大丈夫だよな?頭かち割られるようなことにはならねえよな!?


 眼の前まで来ると、親父は拳を振り上げ、俺に声をかけた。


「言いてえことは山ほどあるが、まずは歯を食いしばれ。」


 か、かち割られそう…


補足

動画:アカリとクリムゾンで編集された動画を流しながら雑談解説する予定だった。


蟻の巣:崩れて塞がったところは、アヤたちが帰ったのを確認してからまた掘って開けた。

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