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ウサギ印の暗殺屋~短編集~  作者: 三ツ葉きあ
『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~』後
34/34

ペンギンの日(BL風味SS)




 ゴールデンウィーク間近。

 風はあるものの、暑くもなく寒くもない。とても過ごしやすいこの季節。

 外は生憎の雨だが、休日なので室内でまったりと過ごしているわけだ。


 朝食を終えて、ひと息ついている時。ソファーに体を委ねて新聞を読んでいる潤に、泰騎は話し掛けた。


「今日は何の日でしょうー」


 新聞に記載されている日付をチラリと見て、潤は答える。


「四月二十五日」

「はーい。“世界ペンギンの日”でしたー」


 少し食い気味に答えを明かすと、泰騎はピスミのぬいぐるみを抱いて、潤の隣に腰を下ろした。


「そいつはウサギだろ」

「ワシの一挙手一投足にツッコミ入れるんやめてー」


 泰騎はピスミを膝の上に乗せたまま、そうじゃのうてー、と不機嫌そうに話を切り出した。

 が、次の瞬間、


『ペンギンカフェに行こうで!』


 ピンクのウサギが右手を上げて、元気よく提案した。




◆◇◆◇




 ペンギンカフェ。ペンギンをモチーフとしたカフェだ。

 泰騎が事前に予約をしていたらしく、並んで入店を待っている人々をすり抜けて店内へ。


 暗い中で水槽の照明が輝き、幻想的な雰囲気を演出している。まるで、アクアリウムの中に居るような錯覚を起こさせた。


 周りの客は、子連れや女友達同士や男女のカップルばかり。男二人は見当たらない。かといって居心地が悪いかと言えば、そういう事もない。


 泰騎は男同士で出掛ける事に慣れているし、潤は赤い瞳の所為で物珍しげに視線を向けられる事には慣れているからだ。


 二人とも他人の視線より、今はメニュー一覧の方が気になる。


 メニュー表には、ペンギンの顔のイラストが施されたラテや、ペンギンを象ったクッキーが刺さっているパフェなどがある。

 中でも、ライスをペンギンの形に盛ったカレーが人気らしい。


 と、いうわけでラテをふたつと、泰騎のカレーと潤のランチプレートを注文した。




 十分程待って、注文した品が全てやってきた。


 メニューにある写真の通り、可愛らしいペンギンがカレーに浸かっている。

 白米を卵形に形成し、海苔で模様と目を作り、薄焼き卵でくちばしを再現している。


 見た目は可愛い。

 そんな可愛いペンギンにカレー用のスプーンを向けて、泰騎は「そういえば」と潤を見た。


「今日は何の日でしょうー」


 つい数時間前と同じ質問を繰り返す泰騎に、潤は首を捻った。


「世界ペンギンの日だろう?」


 泰騎はむふふと笑って、大振りなスプーンでペンギンの首を切り落とした。


「ギロチンの日でしたー」


 なんと残酷な事か。憐れ、ペンギンの頭部はカレーの海にダイブ。

 海苔と玉子は無惨に分離し、自らの役目を終えた。


 カレールウの中で分散していくペンギンを眺めながら、潤は心の中で頷く。


(まぁ、食べ方としては間違っていない)


 だが――なんの罪もないというのに――処刑されたペンギンの姿を、隣のテーブルに座っている女児が目を見開いて見ているものだから、咎めるしかない。


「ファミリー空間でそれはちょっと……」


 と、隣のテーブルに視線だけやって意識を促すと、泰騎も「はぁい」と肩を竦めた。





 完食し、可愛らしいペンギンのラテを飲み終え、会計を済ませ、泰騎は潤の手を引いて進行方向を指差した。


「んじゃあ、次は水族館な!」


 彼らのペンギン巡りは、まだ始まったばかりだ――……!







ペンギンといえば、この二人(『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~』参照)


時間がないのに、書かずにはいられなかった(笑)

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