石田長道 その14
ここから「藤木哲也 ダンジョン編」です
―石田長道 その14―
いつもの天界の白い部屋に来たのですよ。
このマリユカ様の部屋は、ピラミッド状になっている天界の最上階に有るらしいけど、何度来てもそんな大層な所に思えないんだよね。
タブン一緒にいるマリユカ様に威厳が無いからだと思う。
今回は、ここでセイジーさんが地上に降りているときに取った写真を見ている。
ビデオとは違った感慨があるなあ。
大きめのテーブルに広げられた大量の写真を、マリユカ様とデルリカさんが楽しそうにより分けている。
「ナガミーチ、デルリカが号泣している写真ですよ。面白い顔おおお。」
ほんとだ、大口開けて変な顔。
デルリカさんは人前で泣かないほうが良いタイプですな。
するとデルリカさんも僕に写真をみせる。
「ナガミーチ、マリーちゃんが手足をバタバタさせて怒っている写真ですわ。可愛らしいですわね。」
これは可愛い写真だけど、マリーちゃんも変な顔してる。
デルリカさん、じつは不細工な泣き顔を出された意趣返しでしょ。
まあいいけど。
でもどの写真を見ても良い感じに撮れていて感心してしまう。
「この写真って自動撮影ですか?なんか良い感じに撮れていますよね。」
するとマリユカ様がにぱあと微笑む。
「これは大空姫が撮影したんですよお。最近は写真撮影を趣味にしているんですよー。」
「へー、良い腕ですね。あの人はサムライっぽいけど、じつは本が好きだったり写真が趣味だったりと文化的な人なんですね。」
お、デルリカさんが泣きながらお菓子食べている写真もある。
可愛いからもらっておこうかな。
懐にその写真をいれたら、マリユカ様にニヤニヤされた。
「あれー、長道はいまデルリカの写真を懐に入れましたねー。あれれー、愛情わいちゃいましたかー?」
「何いってるんですか、昔っからですよ。大体、はじめっから可愛がってましたし。」
するとデルリカさんが懐かしいモノを思い出すような表情をした。
「そうでしたわね。クズ松尾が日本帰ってしまい落ち込んでいるワタクシに、ナガミーチは傍に座って励ましくれましたわね。ナガミーチがお菓子を出してくれたましたので、一晩中お菓子を食べながら愚痴を言ったのは懐かしい思い出ですわ。」
「今思うと、あれはデルリカトークショーの原型になったような気がするんですよね。」
っということは、デルリカさんの愚痴に苦しめられたのは自業自得という事か。
半端な施しは身を滅ぼす。覚えておこうね。
そういえば、ついでだから聞いておこうかな。
「そういえば、デルリカさんは僕が異世界人だってどこで気づいたんですか?気になってたんですよね。」
すると、『はっ?』という表情をされてしまった。
「何を言ってますの。初めからですわ。ワタクシがクズ松尾と一緒に街を歩いてきたとき、大海姫様といっしょに現れてイロイロ話していたじゃありませんの。あのやり取りから異世界人仲間だって予想は付きますわ。しかもあのときにナガミーチが着ていた服装は明らかに異世界の服装でしたし。」
「あっおー。言われて見れば確かに。じゃあなんで最初から言わなかったんですか?」
「もしも異世界人ってバラしたら、居なくなるかもしれないと思ってたからですわ。」
「そうでしたか。まあ確かに最初の頃に気づかれてるのが分かったら、拠点はベルセック家から移動したでしょうね。」
「やっぱり。むかしからナガミーチはワタクシにだけ優しくなかったっということですわね。」
「むっちゃ我がまま聞いてあげたのに。。。」
そのやり取りを、マリユカ様はニコニコ見ている。
なんだそのオカンみたいな目は。時々こういう女神っぽい目をされるとドギマギしちゃうな。
ふと見ると、デルリカさんは僕とカイル君が肩を組んでマグマを見つめている写真を空間収納にしまっている。
なんか自分の写っている写真を女性が持ち帰るのって、おもったよりもテレるな。。。
見なかった事にしよっと。
あ、泣いているデルリカさんを慰めるために、お菓子を持って慌てているパンツ子の写真だ。
パンツ子、こんなことの為に呼び出されたのか。悪い事したな。
でも可愛い写真だからこれも貰っておこう。
しばらく、三人で写真をあさる。
そしてドラゴンゴーレムが爆発したとき、それを見下ろす僕達の集合写真を見つける。
感慨深いな。
そして急に思い出した。
「そうだマリユカ様、この時、真里有華国の連中が近くに居たんですが、この火山爆発は連中の仕業の可能性もあります。」
マリユカ様は楽しそうに写真を見ながら生返事をする。
「へー、それは困りましたねー。」
だめだ聞いてないな。
宇宙の最高神にとって、一国の動き程度はどうでもいいのかもしれない。
「だいたい真里有華国って、マリユカ様のファンクラブでしょ。面倒ですから何とかしてくださいよ。」
すると目を上げる。
「あの人たちは、私の教えを曲解したキモイ人たちなんで好きじゃないんですよねえ。長道が嫌っているなら消し去りますか?良いですよー。」
「うわー、『マリユカ様大好き』な人生を送っている人たちに対してムゴイですね…。」
するとムクれた顔をされてしまった。
「酷いのは長道です。イメージしてください。サトミーの事が大好きなデブがいたとします。そのデブはサトミーの言葉をなんでも暗記しているけど、その言葉を曲解して妄想で『サトミーは俺の事大好きだデブー』とか言って付回したとイメージしてください。その人を嫌うサトミーに『可哀想だから優しくしてあげて』っていえますか?」
「すいません、僕は愚かな事を言いました。」
そっか、真里有華国は女神の言葉を曲解したストーカーみたいな扱いなのか。
神様目線は、僕達平民からは想像もできない視点だったんだな。
デルリカさんが僕を覗き込む。
「全滅させるなら手伝いますわよ。」
恐ろしいこと言い出したよ、このマイワイフ。
「いえ、マリユカ様が望んでいないなんら放置でいいと思います。」
すると少し考えてマリユカ様は無邪気に微笑んだ。
「あの人とたちはキモイので滅ぼしてくださいな (にぱあ)」
マジか。
出たよ、マリユカ丸投げソリューション。
しかも今回は神様らしく滅亡をご希望のようだ。
さてさて、僕の匙加減一つで、大惨事になるかギャグパートになるか決まるわけですね。
僕は軽く溜息をついた。
「では三日でシナリオを修正します。それまで仕事に集中させてもらっていいですか?」
「いいですよー。いい子にして待ってますから頼みましたよー。」
僕は楽しそうに写真を選ぶ二人を置いて、日本人たちが待機している場所に行く。
日本人たちの待っている空間は、時間がゆっくり動いているのでコッチの1年も1分程度にしか感じていない。
時間遅延を解除して、僕は中に入った。
部屋の中には4人待っている。
その中の一人に声をかける。
「では藤木哲也君、こちらへどうぞ。」
「は、はい。」
僕に呼ばれて立ち上がったのは、高校の制服を着た体育会系な感じの少年だった。
ラグビーか柔道とかやってそうな丸刈りの少年。
180cm以上の身長に100kgはありそうな体格。
「僕はシナリオ担当の石田長道です。よろしくお願いしますね。藤木君、良い体格をしていますね。部活とか何をやってたんですか?」
「はい!日本拳法部です!」
「おお、格闘系ですか。ではその技能を生かせるように多少調整をしましょう。こちらで相談しますのでついてきてください。」
「押忍。」
押忍って返事されたの、人生初めてかも。
ちょっとビックリするので普通にハイって返事してほしいかも。
待合室のドアを閉めて時間遅延を再開させてから、藤木君を連れて別室にいった。
「では適当にくつろいでください。これから三日ほどかけて、ご希望にそった運命を考えますのでなんでも言ってくださいね。」
「はい!よろしくおねがいします。」
返事が力強い。
こういう若者を見て、気持ちの良い若者だと思うあたり、僕もおっさんになったのかもしれない。
学生の頃はこういうタイプは、すご苦手だったんだけどな。
「では、メインのご希望はダンジョンの魔王でよいのですよね。ダンジョンの希望とかありますか?」
ビシっと背筋を伸ばして藤木君は返事をくれる。
「美人系ハーレムでお願いします!あとエ、エ、エロ系要素も・・・。」
「まあ、そういうお年頃ですからね。考慮しましょう。」
ノートパソコンを開いて、希望に沿った要素を追加していると後ろからだれか近づいてきた。
「お、またエロ系ハーレム君なの?これは不幸がおきそうで楽しみだね。」
振り向いたら大海姫さんだった。
長い銀髪のツインテールが揺れている。
「あれ、大海姫さんが今回の担当ですか?」
「いいや、今回は大炎姫だよ。だからハーレムとか嫌がりそうだなと思ってさ。」
そう言って藤木君をみて、いたずらっぽく微笑んだ。
藤木君は顔を赤くして目を伏せる。
「エロ系はいらないっす。」
思春期…。
「大海姫さん、思春期少年をからかわないでください。この年頃にとってエロは人生最大の問題なんですから、諦めさせたら可哀想ですよ。」
そんな僕を優しい目で見降ろす。
「長道君は生涯童貞の呪いを受けたのに、他人のエロの心配をするなんてお人よしだねえ。『みんな童貞のまま死ね』とか叫んでも良いんだよ。」
「もう、うるさいなー。邪魔しないでくださいよ。」
「あはははは、まあ頑張ってね。」
手をひらひらさせながら大海姫さんは部屋を出ていく。
なんだよ、からかいに来ただけか!
ま、あの人の絡み方は嫌いじゃないけどね。
かるく溜息をついてから藤木君を見ると、ちょっと顔を赤くしていた。
「大海姫さまって美人ですよね。」
さすが思春期。美人というだけで赤面か。
「天使さんはみんな美人ですよね。藤木君について地上に降りる大炎姫さんも美人ですよ。」
すると藤木君はズイっと身を乗り出した。
「自分も女性と、さっきみたいな自然な付き合いとかできるでしょうか?」
「できると思いますけど、なんでですか?」
すっと顔を伏せる。
「自分は男子友達しかいない生活だったもので、さっきの長道さんと大天使さんみたいな関係にあこがれるもので。」
「そうですか。たぶん同じダンジョンで過ごすので自然に仲良くなると思います。それは心配はいらないと思います。」
「あの、セックスできるような関係になれるでしょうか?」
目が必死だった。
ならばまじめにこちらも答えよう。
「無理やりそのように運命を組むこともできますが、ちゃんと人として付き合って口説くというのも可能です。それは後悔のないほうを選んでもらっていいですよ。」
そこで、藤木君は悩みだす。
僕だったら「性獣になる運命でお願いします」というだろうな。
でも十代って恥ずかしさや、ロマンチストな部分が邪魔して素直になれないんだよね。
時間がかかりそうだったので、僕はほかの設定をカタカタ直す。
数十分悩んだあと、やっと顔をあげた。
「モテモテになりやすいくらいの設定ってできますか?」
「余裕ですよ。通常よりも魅力度200%増しにしましょう。」
そんな話し合いを延々行う。
話し合いはあっという間に三日たつ。
三日目。
藤木君はすっかり打ち解けた。
「あれっすね。30まで童貞だと魔法使いになって、40で妖精、50で仙人っていいますけど、長道さんはこの都市伝説を体現していますよね。30で大魔導士、40で精霊使いですから。」
「そうですね、でも50までは頑張れそうにないです。おれ、明日地上に降りたら結婚式をするんだ。」
「あははは、なんで死亡フラグたてるんすか。死ぬっすよ。」
そこで部屋の扉があく。
なんかこの三日、しょっちゅう大天使が邪魔しに来ていたんだよな。
とくに大豊姫さんが。
藤木君が胸に視線がくぎ付けで面白かったからいいけど。
さて、今回はだれが入ってきたんだ。
振り返ると、デルリカさんだった。
「あれ、どうしたんですか?地上に帰ったのかと思ってましたよ。」
すると、僕に寄りかかるように隣に座る。
藤木君は「女神だ…」とつぶやいて目がくぎ付けになっている。
なんか僕は毎日見ていたから慣れているけど、デルリカさんの美貌は初めて見る人に衝撃を与えるらしい。
マリユカ様の方がかわいいのに。
デルリカさんが僕の設定集を勝手に見だす。
「ちょっと邪魔しないでくださいよ。バックドロップかけますよ。」
「いいじゃないですか、明日地上に降りたら夫婦になるのですから。」
その瞬間藤木君が「ひゃあああ」とへんな声を上げた。
「落ち着いて藤木君。デルリカさんと結婚するって言っても、適当な感じだし。」
でも藤木君は衝撃で口を開けて放心してしまった。
いや、藤君君が思っているほどデルリカさんは優良物件ではないないよ。
ほんと、ヤンデレ凶暴わがまま愚痴女だから。
「ほしかったら譲りますよ。」
「お兄ちゃん!」
ゴボオ
吹っ飛びました、デルリカさんのパンチ一発で。
座った状態で殴って、人を宙に飛ばすと・・・は・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
いけね、意識が飛んでいた。何分気絶していたんだろう。
鼻血を拭きながら起き上がる。
「精霊魔法、、僕の怪我をいやして!」
人工精霊が一人出てきて、僕の怪我を治す。
怪我が一瞬で治ったのでデルリカさんの隣に座りなおした。
デルリカさんはまだ怒った顔をしている。
「冗談でもやめてくださいませ。特別に恋愛感情がなくてもかなり傷つきますわ。」
そりゃそうですよね。ちょっと無神経でした。
「すいません、今のは反省します。」
すると、急に目をキラキラさせて僕のノートPCを指さす。
「それよりもナガミーチが失神しているあいだに設定を見ましたわ。これ、ワタクシも手伝ってもよろしくてよ。」
僕、おもわずジト目。
「女幹部として暴れたいだけですよね。」
「いいじゃないですか。ワタクシもたまには悪役をやってみたいですわ。」
あんたいつも悪役でんがな、と言いたいところをグッと飲み込む。
無駄に早死にする必要はないから。
それに、もっそいキラキラした目で見ているし。
なんか、メチャクチャ楽しみにしているし。
これ、ダメっていたらぶちキレるの間違いないし。
大きく溜息をついた。
「はあ、わかりました。では大炎姫さんと一緒に謎の女幹部をしてください。」
「ダンジョンでの殺戮、頑張りますわ!」
なんか、ぽかーんと見ている藤木君に確認とらなかったけど良いよね。
魔王の見本ということで参考にしてください。
しばらくカチャカチャと設定を追加する。
「よし、できた。」
設定のルート設定を外部メモリーに書き出して取り出す。
すると、バンと勢いよくドアが開く。
「できましたね!では運命設定しちゃいますよ!」
マリユカ様がズンズン入ってきた。
「ずいぶんタイミングよく入ってきますね。」
「はい、三日前から扉の前で膝を抱えて待ってましたので (にぱあ)」
この人、飽きっぽいくせに変なところで根気あるんだよな。
「そ、そうですか。ではこのメモリーに設定が入ますので。」
メモリーを受け取ったマリユカ様は楽しそうに藤木君に話しかける。
「特別に、祝福を上げてもいいですよ。なんか欲しいですか?」
藤木君はいきなり聞かれて混乱していたようだけど、すぐに意を決した顔になる。
「女の子に好意的に接してもらえるスキルみたいのが欲しいです。」
マリユカ様はペシっと藤君の坊主頭をたたいた。
「はい、相性のいい女性に囲まれる運命を授けました。人間関係が拗れないように気を付けてくださいね。ではフジキーよ、魔王となり真理由華国に絶望を振りまくのです。」
藤木君は「押忍!」と言いながら光の粒となって消えていった。
「さて、僕らも地上に降りましょうか。結婚式をしないといけませんから。」
そう僕がいうと、マリユカ様がパチンと指を鳴らした。
僕らも光の粒になる。
結婚式が終わったら、ダンジョンライフ頑張るぞ。
お読みくださりありがとうございます。




