第7話 風が運ぶ祈り
次の日から、僕らはさっそくお墓の修理に取りかかった。
壊れた柵は長年放置されて木が傷んでいたので、僕とダンはまず、近くの森から木を切り出すところから始めた。その間、アリヤは枯れた草花や伸び切った雑草を丁寧に取り除いていった。
一番大変だったのは、倒れた石碑を元に戻す作業だ。石碑にロープをかけ、三人で声を合わせて引き上げる。何度も滑り、何度もやり直しながら、ようやく元の位置に戻せたのは修理を始めてから四日後のことだった。
「……ふう。なんとかここまでは戻せたな」
「お孫さんの名前、ナーヴさんっていうんだね」
僕は石碑を見つめながら言った。そこには「アモスの孫 ナーヴ ここに眠る」と刻まれていた。
「ただ、花だけはどうにもならねえな。街に行って、花の種でも探してみるか?」
「……できるよ」
墓をじっと見つめていたアリヤが、小さく答えた。
「周りに人はいないよね?」
「う、うん……見当たらないけど」
「なら……今のうちに……」
アリヤは腕を前に出し、手で三角形を作った。
「……パラハ・ネシア。花よ、静かに息づけ」
その瞬間、柔らかい風がふわりと吹き抜けた。風が通り過ぎた大地から、色とりどりの花が一斉に芽吹き、咲き誇っていく。
「わあ……」
思わず声が漏れた。枯れた大地に、もう一度命が宿るような。舞い上がる花びらが、祈りを空へ運んでいくような。そんな、静かで美しい光景だった。
「……あなたの眠りが、安息に満ちたものでありますように」
アリヤは墓の前に跪き、静かに祈りを捧げた。僕とダンもその隣に跪き、勇敢な青年の魂に祈りを送った。
「……な……なん……と……」
振り返ると、アモスさんが立ち尽くしていた。次の瞬間、彼は膝から崩れ落ち、涙をこぼした。
「おじいさん!……大丈夫?」
「……あ……ありがとう。……このままでは、わしは……愛した孫すらまともに弔ってやれん……情けないじじいのままじゃった。……良かったなあ、ナーヴ。……こんなに綺麗にしてもらって……」
「……これで、見返りにはなったかねえ」
ダンが照れくさそうに言うと、アモスさんは涙を拭いながら笑った。
「ああ、十分じゃ。十分過ぎるくらいじゃ」
その顔は、いつもの優しい笑顔に戻っていた。
「……お前さんたち、行く当てはあるのかい?」
「……いや……」
僕が答えに迷っていると、アモスさんが言った。
「……なら、しばらく家にいれば良い。小さいボロ家だがな……次の行き先が決まるまで居ればいい」
「えっ!……いいの?」
「ああ、こんなに綺麗にしてもらったんだ。もう少し親切にしたって、バチは当たらないじゃろう」
「おじいさん、ありがとう!」
こうして僕らは、しばらくおじいさんの家にお世話になることになった。




