【第9話】:2年目② 工程会議と工期管理のリアル
第9話では、現場監督の要となる「工程管理」にスポットを当てます。
日々の作業が“どの順序で、どれくらいの時間で”進むかを調整する工程会議。
まだ経験の浅い2年目の神原匠が、その緊張感と現場への影響を学ぶ回です。
「匠、今日の昼は工程会議な」
三宅主任のひと言に、思わず身構える。
工程会議──職長たちが一堂に会し、翌週の工事内容をすり合わせる場。
新人のころは同席するだけだったが、今回は自分が担当する部分の説明があるという。
「自分が、ですか……?」
「お前が段取りしてる配筋検査、予定伝えとけ」
昼休み返上の工程会議。詰所の会議室に集まるのは、
鳶、鉄筋、型枠、電気、設備、内装など主要な職長たち十数人。
大きな工程表を前に、三宅が口火を切る。
「じゃあ、来週の工程確認入るぞ」
「この日、4階スラブ配筋検査やります。13時からの予定です」
匠の声が、少し震えていた。
「打設予定の翌日、雨って話もあるけど大丈夫か?」
「鉄筋屋は人数、揃うか?」
「検査と型枠のバトル、かぶらねえようにしろよ」
一気に飛んでくる質問と注文。
事前に調整していたはずなのに、見落としや連携ミスが露呈していく。
「工程ってのは、組んで終わりじゃない。日々“動く”もんだ」
会議後、三宅主任が言った。
「現場の進捗、天気、職人の人数、段取り、材料の入り……全部見て、毎日修正していく。監督の“腕の見せ所”ってのは、そこだ」
匠は、真っ白になった工程表を見つめながらうなずいた。
■あとがき
工程会議は、現場監督にとって最も重要なマネジメント業務のひとつです。
日々の作業がスムーズに進むかどうかは、ここでの調整次第。
2年目の段階では、まず自分が担当する工種の予定を正確に伝えること、
そして他職種との調整に“気づける視点”を持つことが大切です。
■建築コラム:工程会議と監督の役割
工程会議とは、以下の目的で行われる打合せです:
翌週(または翌日)の作業予定を全職種と共有
作業エリアの重複や人員不足の確認
作業の優先順位や調整事項の明確化
現場監督に求められる役割:
各職種の予定を事前にヒアリング・調整する
工程表を更新し、誰でもわかるよう掲示する
雨天や遅れを見越してリカバリーを考える
職人からの質問や不安に的確に答える
■用語解説
工程表:工事の全体や週ごとのスケジュールをまとめた資料。
配筋検査:鉄筋が設計通り施工されているか確認する検査。打設前に実施。
打設:コンクリートを型枠内に流し込む作業。
職長:各職種の現場リーダー。職人のまとめ役として監督とやり取りをする。