王都での報告
「以上が報告となります」
早速王都、王宮に報告に来た。
女王リーゼが玉座で座る中、リア様の報告を聞き、周囲の貴族達の一部は半信半疑の様子だ。
しかし、邪木樹を見ている者達は、ガレリアならそんな伝承上の物も引きずり出してきそうだと唸っている。
リーゼは周りの様子を見ながら、再び聞き返した。
「その報告は事実ですか?」
「はい、嘘偽りはありません」
断言に貴族達がざわつく。
「もしそれが本当ならば……」
「うむ、ルグナ王国建国以来の危機」
「しかし本当ですかね」
「私は当時は王都にいなかった故、邪木樹というものを見てない」
「そもそも……」
大半の貴族は、危険を分かっているようだが、一部の貴族……主にイズールド家没落の折に来た者達は邪木樹をそもそも知らず、半信半疑の様だ。
「失礼」
一人の貴族が前に出た。
「私は先日領地替えでここに来たリーブという者、新参故、知見が乏しいながら質問だが。貴君の話は本当ですかな?」
「……私が陛下の前で欺いていると?」
ピリッとした雰囲気が広間を支配する。
「貴君が高名なローファス家の領主である事は知っている。若いからこその勇み足……とは言わない。……が、その情報の精査が必要であるのではないかな。そもそもどこからその情報を聞いて来たのか」
にやにやと若干小馬鹿にしたような顔でリア様を見ている。
後ろを見れば一部の貴族達も同じような顔をしている。
なるほど、確かにリア様は若いし、先日の王都での一件を噂でしか知らなければ侮ったりもするよね。
見ているとリア様は決して怒ったりはしていないようだ。
「先ほど言った通り、私の配下の者からです」
「その配下とは一体誰なのか、ガレリアに勧誘されたという者はそれほどの者なのですかな? 失礼、貴公は王都で評判が良いようだがどうも……」
「信用なりませんか?」
「そこまでは言いませんが……私もなかなかの豪の配下を持っておりますゆえ……。それにそれほど大仰な報告の割に焦った様子もないのはどうも……」
言いながらちらっと真後ろに立つ男を見る。
見れば大きな男が立っている、鎧を着こなす姿は結構強そうだ。
リア様も普段王都にいないし、難癖付けてくる奴はいるかも……とはナルドが言っていたけど、想定は当たってたね。
「リーブ伯はローファス侯の事をあまりご存じないようです。また、先日の騒ぎの後に来た貴族も多くいます。貴君の家臣団を軽く紹介してはどうですか?」
「では僭越ながら……」
リーゼからの助け舟にリア様は一礼してから手で後ろの俺らを指し示した。
なるほど、この為に俺以外の奴らも呼んだのか。
「まずこちらが悪魔族のライベル、『暴君』ライベルと呼ばれている者です」
おもむろに立ち上がるライベル。
周囲を睥睨するように見据える姿は、暴君と言えるだろう。
目を背ける貴族もいるが、気持ちは分かる。
「続けて竜人のフェイル、竜王より強いと言われています」
ゆっくりと立ち上がるフェイル。
ライベルほどではないけど、竜王より強いって聞くと肩書的にはライベルより強そうだね。
実際ライベルとどっちが強いのかは知らないけど。
ていうか竜王より強いって……フェイルの自称じゃね?
「そして吸血鬼の王ヤクモ。かつて大陸を支配していた四大魔王の一角、炎鬼バリオスの配下をしていた者です。今は違いますけどね」
続けてヤクモが立つ。
ニコニコとした笑みを浮かべながら立つ姿は三人の中で一番まともそうだ。
まあ、多分だけど三人の中で一番中身はやばいんじゃないかと俺は思ってるけど。
「最後に……」
リア様がちらっと見る。
俺は立ち上がった。
「彼ら三人を配下に持ち束ねている者です。王都でも『狂公』ハヤトという名を知っている者は多数いると思います。当家随一の実力者であり現状大陸最強の魔法使い……と私は思っております」
リア様が紹介してくれたが、大陸最強の魔法使いというのは正直言いすぎだと思う。
多分俺より強い師匠、ミスミさんがいるし。
まあ、それはここでは言わないんだけどね。
「……以上が当家の抱える戦力であり、先ほど報告したガレリアの者達に対抗できる戦力です」
リア様が自信を持って言うと、端の方で立っていたカートスは苦虫を嚙み潰したような顔を、大多数の貴族が苦笑いを浮かべており、リーゼ様に一番近い場所にいたナルドの父親である、バサラ・ドウ・キースも無言で頷く。
大体が納得という感じだ。
まあ、彼らは先日のイズールドやレブナントとの戦いに関しても知ってるし。
「ふむ、見かけは立派だ。しかし、貴公らで本当に勝てるのか?」
しかし、それがあっても黙っていなかったのはリーブ伯だ。
「さて、ではどうすれば納得していただけますか?」
「そうですなぁ……陛下」
「何ですか?」
「一度このリーブに試させていただければ」
「戦って真偽が分かると?」
「少なくともその危険な者らの対処が可能かどうかが分かります。そして僭越ながらもし私の護衛が勝ちましたら先陣をこのリーブめに……」
そこまで言われてようやく理解した。
やけにリーブとかいう貴族が突っかかってくると思ったらそういう事か。
要するに彼は俺らが嘘をついて敵をわざと強いと言っていると思っているのだ。
相手を強いと言っていればいざ俺らがその強敵を倒したときに大手柄になる。
その強敵と言うのはきっと嘘だから、自分が倒して手柄にしよう……的な感じか。
相手はガレリアだし強敵でない訳が無いと思うんだけど、知らないのかな。
……多分知らないんだろうなぁ。
「陛下、よろしいのですか?」
「余興として構いません、納得していただけるでしょうし、どうぞ」
リーゼは呆れたように言う。
ま、良いか。
「じゃあ……」
「リア様、俺がやります」
やる流れとなったため、しょうがなく立候補した。




