ヒューネルでの会議
無事同盟が成った俺達は意気揚々と凱旋した。
王都では、数日華やかなパーティが開かれ、その後、ルグナ王国内でも準備が必要な為、文武官総出で戦いの準備を始めていた。
ちなみに仕事を終えた俺はと言うと……。
ノーザンラントに戻ってきて早々、デフに呼ばれて日曜大工紛いの仕事をさせられたり、ケルンや ハーゲンに呼ばれて視察や仕事の相談を受けて、魔法で土地を改善したりして、レナの魔法練習を手伝って、ライベルとヤクモとフェイルの争い……というか完全にじゃれ合いだが、それでも街が壊れるからなだめて……をしていた。
まあ、平和な日々を過ごしている。
「疲れた……」
執務室の椅子に座りながら、ふとダクフマでの事を思い出す。
シュエの事、サクマの事、そして鬼神将とかいう奴らの事。
あの後、詳しい話をヤクモに聞いたのだが、秘密です……という後ろに音符が付きそうな程楽しそうな声音で言われただけで、結局何も分からなかった。
あいつ本当に俺の配下なんだろうか……。
「ああ、もう気が散るじゃないか」
考え事をしていたら同じ部屋、隣で机の書類を片付けていたナルドが手を止め、文句を言ってきた。
「何かあったのかい?どうも君、ダクフマから帰ってきてから様子がおかしいぞ」
「え、そうですか? そんな意識はなかったんですが」
「そうだよ、今だってずっとぶつぶつ小声で呟いてたじゃないか。眉間に皺を寄せて、気になってしょうがないよ」
あれ、俺ぶつぶつ呟いてたのか……。
気付かなかった。
「で、何があったんだい。どうせ聞いたところで僕じゃどうにもならないと思うけど、一応聞いてあげるよ」
「ありがとうございます、実は……」
ナルドにサクマにガレリアへ誘われた事、そして更に強い敵が現れたという話をするとナルドは苦笑いをし始めた。
「勧誘はともかく、鬼神将ね」
「知ってるんですか?」
「いや、知らないよ。僕が知っていたら流石におかしいだろ。ていうかそいつらはおとぎ話に出てくるような奴らじゃないか」
「……確かに」
言われて見ればそうだな。
「それにしてもそんなやばい奴らがガレリアにいるのか。よし」
ナルドがいきなり立ち上がった。
「えっと、どうしたんです?」
「どうしたもこうしたもないだろう、会議をするべきだ」
「会議……ですか?」
ナルドの意図が分からず困惑していると、ナルドが呆れたようにため息をついた。
「あのな、君は気づいてないかもしれないけど。これは君だけが考える事じゃないぞ。僕らはリーゼとルグナ王国を中心に西へ攻めるんだ。当然だが相手はガレリア、鬼神将とかいう奴らだって出てくる」
「まあ、そうでしょうね」
「でだ、君やヤクモ、ライベルやフェイルが奴らを止めるだろうけど、それを周知しないでどうするんだ。奴らが現れてから対応しようとしても末端の兵は混乱するぞ」
「いや、説明はしようと思ってたんですよ。けどまだ時期じゃないかなって」
「何が時期だ。早ければ早い方が良いに決まってるだろう。君は勘違いしているが、軍に情報を徹底させるって相当時間がかかるもんなんだぞ。上はまだしも末端の兵にってなれば時間がいくらあっても足りないんだ。ならとっとと上には話を通しておいた方が良い」
な、なるほど。そういうもんなのか。
ちょっと軍を率いた経験があまりないから分からなかった。
結局テイズ高原での戦いもナルドがほぼ指揮取ってたしね。
「はぁ……まあいい。君がそういう軍の指揮とか根回しとかが出来るとは思ってないよ。本来君は文官でも武官でもないからね。それにしても僕が話を聞いておいて良かったよ」
ナルドは早速兵士を呼んで指示を出した。
「とりあえずヒューネルで会議をしよう。リア様達に話を通してから王都、ナトラ達に話を通そう。それが最善だ」
「分かりました」
うーん、やっぱりナルドって頼りになるなぁ……。
俺より領主っぽい、ていうか俺が領主というにはそういった根回しとかそういった事を知らないだけなんだけどさ。
今度ナルドに教授して貰おうかな。
「ん、どうしたんだい。急に黙ってしまって」
「いや、やっぱりナルドは凄いなぁ……って」
「はぁ!?」
ナルドは怪訝な顔をしてから視線を落ち着きなく動かす。
そして頭をカリカリと掻いてから俺をじっと見た。
「……僕が出来る事を君が出来ないことは問題じゃない。何故なら僕の出来る事は最悪王都の文官でも出来る。だが君が出来る事は僕は勿論、誰も代わりに出来ない。ライベル達を抑える事とかね。これは前も言った事だが覚えてないのかい?」
「いや、一応覚えて……ます」
覚えてるけどさ、なんか不安になるじゃん。
だって俺、向こうの世界じゃ特に有能じゃなかったし。
「ならそういう事だ。君は君の出来る事をやりたまえ。僕は僕の出来る事をやる」
ふん……と鼻で笑ってからナルドは部屋を出て行った。
うん、確かにそうだな。
俺は俺が出来る事をやろう。
――というわけで十日後。
ヒューネルで会議が行われる運びとなった。
出席者はリア様と副領主となったリヒトさん、そしてノーザンラントからは俺やナルド、戦うことになるライベル、ヤクモ、フェイル等の前線を張る者達。
勿論、レナとミスミさんも来ている。
ちなみに前線に出ないハーゲン、ケルン、デフら裏方の面々は街に置いた状態だ。
「軽く話は聞いていますが、詳しい説明をお願いします」
急遽準備された会議室。
皆が席に着いた状態で会議は始まった。
まず俺が説明をしてナルドがちょいちょい言葉足らずな所に補足をしていく。
「以上になります」
「そうですか、敵に更に戦力が……」
リアは目を細めながら静かになる。
やっぱ考えちゃうよね。
次の句を待っているとリアは、明るい笑みを浮かべながら顔をあげた。
「分かりました。では近々王都へ行って報告いたしましょうか」
あれ、軽い。
「あの、結構な事柄だと思うんですけど……」
何で気にした風でもないの?
「え、だって。戦うのはハヤトさん達なのでしょう? 他に何かあるのですか?」
「いやその、不安とかは」
「ありませんよ。だってどんな相手が来たところで戦って負けないでしょう?」
あっけらかんと言い放つ。
「ええ……」
「そうだな。貴様は一体何をビビっている」
隣に座るライベルが鋭い眼差しで俺を睨んでくる。
「鬼神将だか知らないが俺からすれば大した敵ではない。俺が倒してやるよ。……と鬼神将はハヤト、貴様に譲っておくか」
「そうですね。我々とハヤト様がいれば負けませんよ。三人の誰かは俺にお任せを……」
フェイルが恭しく礼をしながら言うと、ヤクモも机に肘を付け、顔を掌の上に載せながら横目で俺を見てくる。
「頼もしいですねぇ。……と、勿論私も手伝いましょう。因縁のある者がいますからね。鬼神将は主に譲ります」
「いやいやいや、鬼神将とか絶対一番強いじゃん! そんな奴を俺に回さないでよ!」
抗議の声をあげるが、その声を笑い声がかき消す。
「くふふ……これは逃げられんなぁ……貴様の配下達が敵の大将を譲ってくれたのだ。期待には応えねばなるまい」
「よ、良かったねハヤト、頼もしいじゃん」
ミスミさんとレナが勝手なことを言う。
出来れば俺あまり強くない奴を選びたいんだけど……と思ったけどどいつもこいつもやばそうだな。
「決まりましたな」
「ハヤトさん、私は勝つと信じてますからね」
リヒトは頷き、リア様からはふざけ交じりの微笑みが送られてくる。
「……はい、頑張ります」
それに俺はイエスと答えるしかなかった。
お久しぶりです、お待たせして申し訳ありません。
向こうも完結して落ち着きましたので、新作を書く合間、こちらを更新していきます。
とはいっても編集が必須なので毎日更新は難しいとは思いますが。
今後ともよろしくお願いします。




