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準貴族、ハヤト士爵誕生

 街は順調に大きくなっている。

 レナウン子爵の護衛を倒し、リックンごと追っ払ったのもそうだし、何より遠目で俺と竜人フェイルの戦いを見ていた住人がそれを噂として色んな場所に伝えたのもそうだ。

 噂は噂を呼び。


 ローファス家には亜人種も歯が立たない最強の魔法使いがいる。

 ノーザンラントは栄えている上に安全で危険のない街だ。

 今に大きくなるから飯に困った奴、西の戦乱に嫌気がさした奴はすぐに行くべきだ。

 楽園がそこにある。


 何の殺し文句だよ……って話だが、ハーゲンまで商会を通じて宣伝する物だから人は人を呼び、あっという間に住民が増えた。

 土地は広大にある為、農作業が得意な奴らは得意な奴らが集まって許可の下、何も言わなくても畑を耕し始めた。


 商業が得意な奴は許可の後、店を出すし、挙句の果てにいつの間にかギルドなんて物まで出来ていた。


 ギルドマスターは不在だがそのうち来るそうだ。職員自体はもう来ているため、建物を俺が作って後は勝手に業務を行っている。

 鉱石の精錬も始まっており、順調に資産も多くなってきて、新たな事業でも始めようか.


 リア様がリヒトと会議を聞いている中、王都より使者がやってきた。

 リックンとは違い、普通に中立的な使者だ。

 やってきた使者は長々と説明を始めたのだが、簡単に言えばこうだ。


『街を領土とする準貴族を選出してください』


 準貴族。

 いわゆる貴族だけど貴族じゃないみたいな。

 貴族は公爵、候爵、伯爵、子爵、男爵が貴族であり、その下に準貴族として準男爵、士爵がある。 準男爵はまあ男爵の下として使われ、士爵は騎士爵……と言った使い方もされる。

 軍で言えば准尉以下の将校ではないけど……兵士よりは偉いみたいな感じだ。


 男爵以上であれば王から領土を与えられて貴族になる……いわゆる独立という形になるのだが、準貴族は貴族達の後継者として使われたりする。

 ではどうしてそんなことになったのか、それはこの街に原因がある。


 ノーザンラントは非常に大きな街になっている。

 人口もすでに五万を超え、経済規模で言えば他領地、男爵の本拠地なら優に超えているそうだ。


 要するに領土に二つ以上大都市がある辺境伯ってどうなの?

 ――という、別に他所の伯爵でそういう奴もいるらしいので簡単に言えば嫌がらせだ。

 誰とは言わないが恐らくリックン・D・カートス辺りの。


 そしてこうなった場合、本来であればこういう時は、伯爵の親族にその領土を与えて、子の領土とするのが良いそうなのだが、リア様の親族はいない。

 リア様の母親も父も兄も死去しているし、叔父さんもディーナス・ロウにとっくに始末されている。

 という事でリア様に最も近しいのはリヒト位である。


「リヒトさんが準男爵か士爵になるって事ですか?」


 質問するとリア様は首を横に振った。


「それは出来ません」

「え、どうして?」

「出自がそれを許さないのです」

「出自?」


 よっぽど呆けた顔をしていたのだろう。リヒトがふう……と息を吐いた。


「ハヤトなら話しても良いだろう。私は元々別の国の王族なんだ」

「王族!? ええ」


 意外、こういう人って大体リア様が子供の頃から仕えている家の執事で、元々は平民だって感じじゃないの?


「もっとも、私の国は小国でとっくに滅んでしまったがな。しかし他国の王族が他の国で貴族になるというのは流石に難しい。そこの王と知り合いならまだしも」

「リヒトは北国出身ですからね。この国とは縁もゆかりもありませんから」

「へえ……」


 そんなルールがあるのか、貴族って面倒臭いね。


「じゃあどうするんですか?」


 まさかデフが貴族に?

 いや、あいつはそういう面倒臭いのはやらないだろ。似合わないし。


「候補者はいます。リヒトはどう思いますか?」

「私は良いと思います、これまでの第一功労者ですからな」


 二人は目配せして頷いた。

 何だろう、勝手に話が進んでいる気がする。

 リア様は立ち上がり、振り返った。


「ハヤトさん」

「え、はい」

「士爵としてノーザンラント周辺を治めてくれますか?」

「俺ですか!?」


 俺準貴族? マジで? どうして?


「ハヤトさんはディーナス・ロウ達を倒し、幽閉されていた私をリヒトと共に助けてくれました。その後はケルン、ハーゲンの登用、エルフの里を救い、同盟関係を結ぶことに成功。更に悪魔ライベルや竜人フェイルを従えています」

「いや、ライベルは勝手に居ついているだけで従ってるわけじゃない気が……」


 ちなみにライベルはフェイルと戦って相打ちになった為、圧勝出来たら俺と勝負という事になっている。

 そのルールはあの二人が勝手に決めた事で、俺は何も言ってない。

 そもそもどちらかを圧倒するような奴と命懸けで戦いたくないのだが。


「でもリア様の護衛はどうします?」

「そうですね。兼任でも良いですが忙しい時はライベルかフェイルでも構いませんよ? あの二人は強いですし私に危害を加えたりはしませんからね」


 そうなんだよな。あいつら二人は何気にリア様に優しいんだ。


「ええ、でも俺が準貴族ですか」

「ふふ……頼りにしていますね」

「わ、分かりました」


 緊張気味に了承するとリア様は勿論だが、特にリヒトが嬉しそうに笑っていた。





 その後、一人でノーザンラントへ戻り、本部でそれぞれに報告すると、ケルンとハーゲンは自分の事のように喜び、デフは畏まって了解しましたハヤト士爵なんて冗談で言っていた。


 ちなみにライベルとフェイルは交互にリア様の傍にいるという事に決まった。

 反対しない辺り本当にこいつらはリア様を割と気に入っているのだろう。

 俺と違ってリア様はこいつらと戦ってないのに認められるとは……これがカリスマか。



 そんなこんなで、ローファス家が後見者となり、ノーザンラント周辺を領土とするハヤト士爵が誕生したのである。


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