転生者
主人公視点
「道理でイズミがあんたを通したわけだ。あんたの持つ前世での記憶は、何物にも変えることができない」
しかし、直ぐにワンサードの顔つきが尋常じゃないほどに、険しくそして物悲しい表情になっていく。
「だけどな、もう二度と口にしちゃいけない。あたしは知らなかったんだ。人族の中でそんなことになっているなんて、知らなかったんだ」
さっきまでとはまるで別人の様で、あまりの様子の変化に生唾を飲み込む。
「母さんは、殺されたよ」
(殺された?誰に?なんで?)
「母さんを知っているからこの先も話すけど、聞いたら二度と話さないで欲しい」
俺は重々しく頷く。
「あたしと母さんは、エリシオンと言う暖かいところの大陸出身なんだ。魔王との長い戦争で、空飛ぶ箱舟が失われてずっと孤立していたんだ。今思えば、それが一番幸せだったんだよ」
何かを思い出すように空を見上げる。
「あたしはそんな狭い世界が嫌だったんだろうな。転生者の母さんは、失われた海の航路を知っていたよ。あたしは母さんの知識にすがって、エリシオンの仲間と力を合わせてこの大陸へやってきた」
黙ってワンサードの声に耳を傾ける。
「それは、最初の街に辿りついた夜のことだった――。あたしたちは、修道院に頼んで一晩泊めて貰った。無事に航路が渡れたことが嬉しくって、あたしはつい喋ってしまったんだよ。母さんが転生者であることを、ほんとに馬鹿だよ」
ワンサードの目から涙がこぼれ落ちる。
「アリスの最後を知りたいんだ(転生者だとバレるとやばいのか?)」
俺は真っ直ぐに彼女を見つめる。(泣いてる女の子に話しかけるなんて、今までの自分からは想像も出来ない)
「あぁ。いいとも、そのかわり前世での母さんの話もっと聞かせてよ」
ワンサードが昔を懐かしむように、ようやく穏和な顔付きにに戻る。




