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10/13

十 伝える想い

誰だ? こんな時間に親父のわけがねーし、まさかあいりか? 庭の木が邪魔でうっすらと足元しか見えねぇ。



サンダルを履いて、人影の方へ近づいていくと、虫の声に紛れて鼻歌が聞こえてくる。月明かりの下で、白くて細い足が目に入った。



「あいりっ!」


縁側に座って星空を眺めていたあいりは、こちらに顔を向けると、肩をすくませ笑った。



「あり!! 驚いた!! たくみ? どした?」



「蒸し暑くてジュース飲みに起きたら、庭に誰かいたから。」


あいりは、部屋着なのか、丈の長い薄緑色のワンピースのようなのを着てた。見た感じ、あいりにまとわりついていた『鬼』は今はいないようだ。



「うちも蒸し暑くて、起きてきたっちゃん。」


長くて艶のある髪の毛が数本、首から鎖骨にかけて、しっとりと濡れたような肌に張り付いていた。よく見るとかなり薄手の生地みてぇで、身体のラインが丸わかりだった。目を逸らしながらも、心臓がバクバクとうるさかった。このまま黙ってると、妙な気分になりそうな気がする。何でオレ、こんなにドキドキしてンだ??




「これ、口つけたやつだけど、まだ一口しか飲んでねぇし、スッゲー冷たくて美味いから、良かったら飲むか?」



下心とか別にねぇけど、冷たくてほんとに美味しかったから、一緒にその感覚を味わいてぇなって。異性に対して初めて感じる胸の高鳴りを隠すように、ジュースを持ってる手をあいりの前に差し出した。



「ありがとうー!! 一口いただこーね?」


そう言ってためらいなく紙パックをオレから受け取ると、ゴクゴクと美味しそうに飲んで、空になったやつを縁側に置いた。目を逸らしてたはずなのに、ぽってりとした赤い唇にストローが触れてるのを見ちまった。



ーーーー柔らかそうだな。




って、何考えてんだオレ!? 一人で焦ってるオレの気持ちなど知らずに、あいりは落ち着いた顔で、「たくみもここに座れば?」と、トントンッと隣を指先で叩いた。



「あ、ああ。」


あいりが出してきたのだろう、扇風機が縁側に出ていたせいで、あいりに風の当たる方を譲ると、必然的にスペースの狭い方へ座ることになる。隣に腰かけると、どうしても布越しに彼女の太ももと密着してしまう。こんな夜更けに、気になる女性がこんなに近くにいたら、意識がそっちに持ってかれちまう。オレ、何か大事なこと忘れてる気がする。




「綺麗ー。」


ほぅーと息をつき、焦がれるように星空を見上げるあいりの横顔を見る。


「ああ。綺麗だ。」



ーーー君が・・・。



あっ、そうだ!! 星空で思い出した!! 今回かけた術は、べつに天文学とか使ってねーけど。


「あいりっ!! これ持っててくンねぇか? 」


オレは首に下げていたポーチを、パジャマの下から取り出し、袋を広げて式神を取り出した。


「これは?」


長いまつ毛をパチパチさせて、珍しそうにあいりが覗き込む。


「守り神っつーか、お守りみてぇなもんだ。紙だから邪魔にならねぇと思うし。」



あいりの手を取り、そっと手のひらの上に式神を置く。



「ありがと!ふふっ、嬉しー!」


彼女は両手で大事そうに式神を持ち、扇風機のそばに置いてあった日記帳? みてぇなやつに栞のように挟んだ。





あと数日であいりは沖縄へ帰っちまう。オレはゴクリと緊張で喉を鳴らしながら、ギュッと拳を握りしめ覚悟を決めた。


「あいり、・・・聞いてくれ。オレ、いつの間にかあいりのこと好きになってたみてぇだ。気がつくとあいりのこと考えてるし、一緒にいてぇと思うし、守りてぇと思ってる。」


多分、初めて会ったあの日から、どうしようもなく君に惹かれている。


「ほんとなー? うち、たくみより7つも年上だし、まだ会ったばかりさぁね?」


頬を染めてジッとこちらを見つめてくるあいりから、目を逸らすことができなかった。多分オレも今すげぇ顔真っ赤だ。



「あいりはオレが年下なの嫌か? 会ったばかりで不安なら、そう思わなくなるまで一緒にいればいいだけだろ? 」



ううん、と首を左右に振ってから、顔だけでなく上半身をオレに向け、甘い声で囁く。

「年は関係ないど。うちもたくみがでーじ好き。ちゃあまじゅんよ!」



「はぁ? さすがに今何言ったか、通訳が必要なんだけど!!」



「ふふっ」

顔をクシャッとさせて、人差し指を自分の唇に持っていき、ナイショと茶化すような仕草をする。嬉しそうに笑う表情に、愛しさが募る。


「ハハッ」





!?




急にあいりがオレの腕を掴み、目を閉じたまま顔を近づけたかと思うと、ふにゃりと暖かい感触が唇に残った。長いまつ毛を揺らし、半開きの口元に、頭が沸騰しそうに熱くなった。暖かい手が、オレの手に重ねられ、少しでも動くと、この手がどこかへ行っちまうんじゃねぇかと、しばらく身動き出来なかった。





吸い込まれそうな瞳がオレの姿を映していたかと思うと、コテンッとおでこをオレの胸に押し付け、ギュッと手に力を入れた。



あったけぇ・・・。



胸の奥から暖かいものが込み上げてきて、鼻の奥がツンとした。


ーーーオレ、今すごく幸せだ。たとえ世界中で何が起こっても、あいりと一緒ならきっと乗り越えていける。



年下だし、まだ学生だし、でもこれから、もっとちゃんと親父から陰陽師のこと学んで、そんで高校卒業して働くようになったら、、、、オレは君にプロポーズする。



「あいり、こっち向いて。」


ゆっくりと顔を上げた彼女の赤く染まった頬に、オレはそっと口付けを落とした。

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