表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/49

第48話 二者択一だコノヤロウ




「アカリア……俺は」


 実行犯三人を力ずくでふりほどいたキース様が私の前に立つ。私は泣かないように顔に力を入れた。


「キース様には拒否権はありません!おとなしく誘拐されてください!」

「いや、俺なんか連れて帰っても……駄目なんだよ、アカリア」


 キース様は何かに耐えるように顔を歪めた。


「俺は、ずっと何もしてこなかった。『スキル』が役立たずだと落ち込んで、どうせ自分は出来損ないだと卑下するだけで、自分で道を切り開こうとしなかった。

 こんな俺が、アカリアのように自分の『スキル』で世の中を変えようとしている人間と釣り合うわけない。

 出会ってからずっと、俺はアカリアに手を引いて連れて行ってもらっているだけだった。俺はアカリアのお荷物なんだよ」


 キース様の自己嫌悪に、私は目を見開いた。

 同じだと思った。

 私だって、前世を思い出して、きんちゃんとぎょっくんに励まされるまでは、自分の境遇と力のなさを嘆くばかりだったもの。


 きんちゃんとぎょっくんがいたから、私はキース様に出会えたんだ。


 今、きんちゃんとぎょっくんはいない。キース様も私の前から去ろうとしている。


 キース様がいなくなるのはイヤなんだ。

 だから、きんちゃん、ぎょっくん。私に、力を、勇気をちょうだい。


「だから俺は……」

「私はっ!」


 私は拳を握りしめて叫んだ。


「私はっ、キース様以外がゴールドフィッシュ次期男爵になるのを認めませんっ!!」


 たとえお父様がどんな優秀な人物を連れてきたとしても、私は絶対に認めない。


「キース様が継がないなら、ゴールドフィッシュ家はお父様の代で終わりです!!」

「おい、アカリア……っ」


 キース様が慌てて私を宥めようとするが、私は前言撤回するつもりはない。


「選んでください!」


 私はキース様にびしっと指を突きつけた。


「ゴールドフィッシュ男爵家を潰した男と呼ばれる人生を歩むか、それとも、ゴールドフィッシュ男爵の一人娘を娶って次期男爵になるか、です!!」


「……ん?」


 キース様が目を点にした。


「いや~、だって、キースがさっさと養子の籍をぬいちゃったからさぁ~。さすがに再度養子にってのは外聞がねぇ。手続きも面倒くさいし。なら、今度は養子じゃなくて婿にすりゃいいんじゃね?って思ってさ~」


 お父様が絶妙にムカつく喋り方でキース様を煽る。

 キース様はしばし呆然とした後で、カアアッと赤くなった。


「……伯爵」

「ん?」


「……商人」

「なんです?」


「我がま……第三王子」

「やんのか、コラ」


 キース様がぶつぶつと呟き、覆面実行犯が覆面を外してメンチを切る。


「……俺は、彼らのような地位とか実力とか何もないし、彼らのようにイイ性格もしていない。ただの、平凡な男だ。」

「やんのか、コラ」

「それでも、」


 キース様はようやくまっすぐ私を見た。


「それでも、俺でいいのか?」


 力強い目にみつめられて、私は堪えていた涙をこぼしてキース様に抱きついた。


「もちろん!」


 私を受け止めたキース様の手が、私をぎゅっと抱きしめる。

 その瞬間、


『きゃー』

『わーい』


 突然、小さな赤が視界に踊った。


 きんちゃん!ぎょっくん!


『おはよーアカリア』

『おはよー』


 今までどこに行ってたの?


『ずっといたよー』

『アカリアの近く』

『でも、すっごく疲れてたのー』

『キースに気付いてもらうためにすっごく自己主張したからー』

『へとへとになっちゃったー』

『だからぐったりしてたのー』

『疲れたー』

『でも、もう元気ー』


 なんだ。そっか。

 ずっと傍にいたんだ。見えなかっただけで。


 私、一人じゃなかったんだ。


 キース様に力一杯抱きついて、嬉し涙で顔をぐしゃぐしゃにして私は笑った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ