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星神様と眷属達  作者: キサラギ ソラ
第1章 神殺し
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1ー29 水瀬一家の秘密

お久しぶりです。

久しぶりの投稿なので文の見方に少し変化をつけてみました。

良ければ、今までとどちらが読みやすいか意見を頂けると嬉しいです。

 爆破され煤けた穴――階段だったものを下っていく。


 氷に覆われていたのはそこまで深くなかったのか、少し下った辺りから綺麗な階段が姿を覗かせている。氷の浸食具合は、地下5メートルほどのようだ。

 階段の先にエレベーターがあったが、電気が通っておらず動かなかった。仕方なく俺たちは非常階段で下へ向かう。


 長い非常階段を下り終わると、白い光りが照らす広大な空間へと出た。

 エレベーターがある場所の反対側には、自動車とは似ても似つかない乗り物—―リニアカーが三台停まっており、その先には先が見えないほど長く巨大な通路が続いている。


「ソフィア、あれに乗るよ」


「はい! い、今行きます」


 おざわ荘の地下に広がっていた未知の空間に目を奪われていたソフィアを促し、リニアカーへ乗り込んだ。


 一台目には俺とソフィア、軍人たちの中で一番階級の高い女性士官と彼女の副官が乗った。残りの軍人たちは二台目以降に乗り込む。

 女性士官がドアの横にあるパネルを操作する。すると自動でドアが閉まり、運転する人がいなくても静かに動き始めた。


 巨大通路を高速で移動する中、俺は息を深く吐いて席に深く座り込んだ。


「大丈夫ですか……?」


「ん……ああ、ごめん。ちょっと気が抜けたみたい……」


 心配そうにソフィアが顔を覗き込んでくる。俺は頭を振って気を引き締めようとしたが、ソフィアに止められた。


「無理しないでください。あれだけの戦闘の後なのですから、相当お疲れのはずです。少し休まれてください」


「そんなのソフィアも一緒だろ? 俺だけ休むなんてできないし、これからのことを考えたら休んでなんて――」


「わたしは平気です。わたしがしていたのはサポートぐらいで、疲労なんてほとんどありませんから」


「そう言い合うぐらいなら、お二人揃って休まれれば良いのではないですか?」


 俺の対面に座る女性士官が俺とソフィアの会話に割り込んできた。口を挟まれたことが妙に気に障った俺は、不機嫌な態度を隠さず女性士官を睨んだ。


「そんな怖い目をしないでください。貴方が私を許せない気持ちは理解しています。ですが、疲れが残った身体でお母様をお助けできるのですか?」


「……ふん。わかったよ、ミミィ。母さんを攫われて辛いのは、あんたも同じだもんな」


 返事はなく、ただ俺を慈しむように微笑む女性士官――ミミィ。彼女の心境を今になって察したことで、今の俺がどれだけ周りに気を配れていないのか自覚できた。

 しかし自覚できたからには、自らを見つめ直し、心を落ち着けられる。

 おかげでこの軍人たちのことを全く説明しないままソフィアを連れまわしてしまっていたことに気づけた。


「あー……えっと、その……ソフィア?」


「? 何でしょうか」


 俺はソフィアに軍人たちのことを話そうとしたが、そもそもどう説明すればいいのかわからなくなって口ごもってしまった。


 彼らの正体を説明するには、まず水瀬一家の秘密を話す必要があるのだが……ソフィアは母さんから何か聞いていたりするのだろうか? もし何か聞いているのなら、これから話す内容は若干気恥ずかしい。


「何も説明せずに連れまわしてごめん。この人たちのことを説明しようと思うんだけどさ、その前に、ソフィアって俺たち家族のことどこまで理解してる?」


「えっと、どういうことですか?」


『マスター……その質問ではソフィアに伝わりませんよ。もっと要点をまとめて質問をしてあげてください』


 う、うるさいな!

 でも自分のことを話すのって、妙に気恥ずかしくなるんだ。俺だって混乱して、頭の中がグチャグチャになって言葉がまとまらなくなることだってあるんだ!


 ……深呼吸をして、頭の中を整理しよう。


「……この人たちは、母さんとサラの護衛なんだ」


「アイリス様と、サラ様の護衛……。あれ? それではユーマ様の護衛ではないみたいな……」


「気になるとこそこ⁉ 何で護衛がいるんだーとか、そんな風に思わないの?」

「あ、はい。だってユーマ様たちは一般人ではないでしょう?」

「え?」


 ちょっと待って。その言い方をするってことは、まさか……!


「も、もしかして、俺の出自を知ってたりする⁉ 母さんから聞いてた!?」

「いいえ、アイリス様から聞いてはいません。こちらに来る前に、お母様から聞いていたのです。……って、大丈夫ですかユーマ様!?」


 大丈夫ではなかった。まさか知っていたなんて! 知っているとわかっていれば、……いや、知られていたからといって態度を変えるつもりはないが、せめて心の準備はできたはずだ。


 俺の出自は黒歴史が暴露されるに等しい秘密だ。おざわ荘で一番付き合いの長い美奈穂にも教えていなかったほどの秘密だったのに。


「その、ソフィアが聞いてたっていう俺の出自、ちょっと言ってみてくれない? 念のため」


「は、はい。ユーマ様とアイリス様とサラ様は、スーフィリアという王国の王族だと聞いていました。ですのでアイリス様とサラ様に護衛がいたことには、むしろ安心したのですが」


「――俺に護衛がいないのはなぜか気になる訳だ」


「……はい。そうです」


 俺は盛大に溜め息を吐いた。なんか、さっきとは違う意味でどっと疲れた気分だ。


 対面からクスクスと忍び笑いが聞こえてきたが、今は放置することにした。


「母さんとサラだけに護衛が付いているのは変じゃないんだよ。だっておざわ荘に住むスーフィリアの王族は、二人だけだから。……俺は母さんと血の繋がった息子ではあっても、王族としての資格がないからさ」


「……ッ!?」


 王女であるソフィアには、俺が言った言葉の意味がすぐに理解できたようだった。

 青ざめた顔をさせてしまったことに申し訳なく思いながら、言葉を続ける。


「俺は五歳のとき、実の父から王族の権利を全て剥奪された。だから王族ではない元王子には護衛なんていないって訳さ。……やっぱり言ってて恥ずかしいな、これ」


 自分は元王子だったんだと人に話すのは、事実だったとしても中二病を患っているみたいで恥ずかしかった。しかし一度言ってしまったからか恥ずかしさも薄れ、普通に説明できるぐらいには気が楽になっていた。


「俺が元王子だった話は置いといて、今はこの人たちの紹介をするよ。まず――」


「ミミィ・ムルリムと申します。アイリス様とサラ様の護衛部隊兼第二王妃親衛隊の隊長を務めております。お会いできて嬉しく思います。ソフィア王女殿下」


「ソフィア=クランベルです。わたしのことを知っているのですね。お会いしたことはないと思うのですが……」


「申し訳ございません。護衛のため、監視装置がおざわ荘の至る所に設置されているのです。王女殿下のプライバシーは必ず守りますので、ご容赦いただけますと幸いです」


「その監視装置というのがどういう物なのかはわかりませんが、許します。それは護衛に必要な物なのですよね?」


「はい」


「ならわたしからは何も言いません」


「寛大なお言葉、ありがとうございます」


 ミミィがソフィアに向かって恭しく頭を下げた。

 おざわ荘には護衛のために様々な装置が使われている。そしてその中には盗聴器も含まれている。


 護衛部隊は母さんたちを護るために、新しくおざわ荘の住人となったソフィアの監視をしていたのだろう。だからこそソフィアが異世界の王女様であることも承知しており、こうして敬意を示しているのだ。


 そしてミミィの挨拶が終わり、彼女の隣に座って今まで沈黙を貫いていた男の番になる。


「私は同部隊の副隊長であるカシー・ハーバンと申します。階級は少佐です。よろしくお願いいたします、王女殿下」


 挨拶はそれだけだった。名前だけ名乗ると姿勢を正し微動だにしなくなる四十台中年男。

 ミミィは彼を見て苦笑いを浮かべながら、フォローを入れる。


「顔も怖いし寡黙で余り離さない男ですが、こう見えて子どもにすっごく甘くなるような男なので、怖がらないであげてください」


「な!? 隊長、余計なことは言わないでください」


「でも、本当のことでしょう? 前にお前が息子の写真を見てすごくだらしない表情をしているのを見ましたよ?」


 カシー・ハーバン撃沈。彼は顔を覆うと背を丸め蹲り、声にならない呻き声を出して悶えた。


 マフィアのボスと言われた方が納得できそうな彼の見た目からは想像できないその姿に、俺たち三人は笑い声を上げたのだった。


 ひときしり笑った後、ソフィアが俺に質問をしてきた。


「ミミィさんたちが護衛であることはわかりましたが、ユーマ様はどうやって攫われたミナホたちを救うのですか?」


 ソフィアの瞳は、星神にどう対抗するのか教えて欲しいと訴えていた。

 俺はミミィたちを一瞥してから、ソフィアの質問に答える。


「今から行く場所には、スーフィリア王国が誇る科学技術の粋を集めた兵器があるんだ」


「兵器……。それなら救いだせるのですか?」


「ああ、救える。そんでもって、あのいけ好かない誘拐犯を殺すこともできるかもしれない。なんたって、スーフィリア王国の科学技術はとんでもないからな」


 俺は語った。

 十七年前。それまで国連加盟国の言いなりであったスーフィリア王国が、独立国家として世界に認めさせるべく戦争を起こした話を。


 理事国を主軸に据えた加盟国の八割を相手に、スーフィリア王国がたった一国で戦った第三次世界大戦。誰もがスーフィリア王国が負けると考えていた。しかし結果はスーフィリア王国の一国勝ちだった。


 要因は、スーフィリア王国の何世紀も先取りしたかのような科学技術。圧倒的な物量を捻じ伏せられる圧倒的な科学技術をもって、スーフィリア王国は王国戦死者ゼロで第三次世界大戦を一月で終結させた。


 夢物語のような話だが、各国の歴史書に載る本当にあった歴史的事実だ。

 そしてそんな国が王族の護衛のために配備した兵器が、尋常である訳がない。


「今回は星神に後れを取ったけど、二度も同じ過ちを繰り返したりしない。そうだろ? ミミィ」


「もちろんです。絶対に救いだしてみせます」


 応えるミミィの瞳には力強い意志――後悔や憤り、誘拐犯への怒りが宿っていた。

 ミミィは、母さんが父さんと結婚する以前から、母さんに仕えていた護衛侍女だった。だから彼女は他の護衛部隊の軍人以上に、母さんたちが攫われたことに悔しい思いをしているはずなのだ。


 ちゃんと護ってくれよと怒りをぶつけたかったが、彼女の気持ちを考えるとそれはできなかった。


 車外に目を向ける。すると、ずっと白い壁だけだった通路に変化が生まれた。


 通路の一方の壁がガラス張りに変わり、地下に広がる港のような巨大な空間が姿を現す。リニアカーが通路を走り続けると、港に一隻の戦艦が停泊しているのが見えた。

 

 しかし、〝戦艦〟というにはあまりにも奇妙な形をしていた。


 四〇〇メートル超えの剣のような流麗なフォルムの船体は、水上を渡航するに適した形状からかけ離れすぎている。船体後方にはスクリューのようなぱっと見でわかる推進器がなく、剣の鞘に四枚の翼がついているような構造をしていた。巨大な艦砲を刀身部分の表と裏に二基ずつ装備し、鍔にあたる部分は左右共に〝とある最先端兵器〟の格納庫になっている。


 窓の外に映る光景に気がついたソフィアが、身を乗り出して尋ねてくる。


「ユーマ様! あの大きな船のような物は一体……!? それに、どうして地下にこれほど広大な施設があるのですか!?」


 四〇〇メートル超えの戦艦が数隻停泊しても余裕がある港。

 なぜそんなモノが日本の田舎町の地下にあるのか。その答えは、第三次世界大戦の敗戦国である日本に対し、スーフィリア王国の国王がこの町の権利を要求したからに他ならない。故に御滝沢市は日本領ではあっても、裏ではスーフィリア王国が実権を握っている町なのである。


 だからこそ、スーフィリアの王族が日本人に紛れて生活できている訳なのだが。


「ここはアイリス様たちが日本で住まわれることが決まった際に造られた、スーフィリア王国が所有する軍港です。そしてあれこそが、我らスーフィリア王国が誇る王族専用護衛艦『アリスティア』なのです!」


 俺が説明しようと口を開きかけた瞬間、ミミィが説明してしまった。

 役目を取られたようで癪に障った俺はジト目を向ける。するとミミィはやってしまったという表情を浮かべた後、気まずそうに目を背けた。


 ……まあ、いいけどさ。

 

「あれで空を飛んで、星神を追いかけるんだ。ミミィ、既に発進準備は済んでるのか?」


「はい。私たちが乗艦すれば、すぐにでも発進可能です」


「じゃあ俺とソフィアはミーティングルームに向かうから、乗艦が終わったらすぐ発進させてくれるよな。艦長さん?」


「はい。言われるまでもなく」


 そしてリニアカーが港の停留所に停まると、俺たちはすぐに降りて『アリスティア』に乗艦した。




次は3か月後~、なーんてことにならないよう、既に次話の執筆は行っています。できるだけ早く投稿しますので、面白いと思ってくれた方はブックマークをクリックです!

よろしくお願いいたします~。

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