表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
77/466

第七十三話・復活のM

?「私は帰って来ましたー!」

嵩都「地獄から舞い戻って来た彼女の体は黄金に輝き、絶大なる戦闘力を手にしていた」

?「オホン(声色を変えて)。フフフ、それでは第七十三話ですよ」


~嵩都

 様子見を終えた俺はシャンたちに挨拶して魔王城を離れた。

 プレア、司を引き連れてハイクフォックに戻るとちょうど亮平たちも起きだしていた。

 とりあえず俺たちはアジェンド城に帰るための撤収準備を始めた。

 しかし、どの城門も破壊されていて出るに出られない状況を知り、まずは城門のお片付けから始めた。おかげで俺たちはここにもう一泊することになった。

 余談だが遂にカルラッハが過労で倒れたようだ。隙見て城へと飛び、残りの三人と文官共を総動員して書類を片付けさせた。

 ――だが、書類は片付け終わらない。次から次へとゴキブリのように湧き出てくる。

 流石の俺も眩暈がした。この城はカルラッハがいなくなったら間違いなく滞る。それを今日確信したため文官育成を始めた。

 食料関係や金関係は俺の手によって効率化され、生産量を27%引き上げることに成功した。それでもまだ改良の余地があると見た。

 こちらの仕事が終わらないことをプレアたちに伝え、今日からしばらくはここに滞在することにした。亮平たちには極秘任務扱いとさせて貰った。

 さて、次にフェイグラッドの管轄である兵の育成だが、上官が部下に舐められているという事態が発生し、何故かフェイグラッドはそれを黙認していた。

 嫌な予感がしてちょっと住民偵察に行くと城下町はスラム化していた。

 何故か、原因は俺にもあった。そう、俺があまり城におらず四天王も勝手に行動するために治安は最低、流通は滞り、兵士の士気は底辺……否、兵士というよりは盗賊化していて住民の数が減っていた。そして貧民化した住民は窃盗や強盗をするようになった。

 兵士はマジで無駄飯食らい化していたので治安警備と城周辺の警備に駆り出した。

 サボリ、ボイコット者は即座に日夜働かせた。

 ウリクレアの政治関係は――形骸化した法があり、一部貴族化した馬鹿共が搾取していることが発覚。

 ヴェスリーラの人心掌握は見なくても失敗しているので論外。

 さて、まずさしあたってはカルラッハの除く三馬鹿に説教だ。

 くどくどくどくど―――――。省略。

 続いて兵士や搾取貴族共の追放と犯罪者共の懲罰。

 懲罰は実に簡単で俺からの魔力供給を断てば良い。実質この浮遊大陸で俺の供給なしに生きるのは死ぬ方が楽だと思うくらい過酷だ。

 酸素は薄く、空中にある魔力も少ない。動物は居るがどれも環境変化によって地上の五倍程度の強さになっている。あ、ちなみに草食獣の話な。

 肉食や雑食はそれはもう逞しくSランク冒険者が虐殺されるくらいの強さになってる。

 ――突然変異って怖いよねぇ……。

 さて、馬鹿共は供給を断って追放した。治安は三日ほどでようやく治り、商いも再開を始めた。スラムの子たちにはギルドを立てて簡単な依頼を斡旋した。

 城下町の税収を下げ、門税を九割削除。近隣の村や町もテコ入れして安置した。

 なにより厄介なのは疫病の類だ。医療が発達中のこの国では不治の病が多い。

 それはもう仕方なく俺が勇者の力で治した。

 Q、勇者スキルってな~に?

 A、回復魔法をバランス良く覚えていくスキルです。

 阿呆か!!! 攻撃が一切ないじゃないか!! 

 久々にスキル欄を開いて驚いた。まさか本当に支援・回復系統しか習得できないとは。

 確認しなかった俺も悪いがこれは冗談だろ? 洒落にならん。

 他の奴らはこれを知っているのだろうか……。知っているだろうな。

 俺が使えるのはLv6まで。状態異常系をコンプリートして回復系を習得中だ。

 永遠と疫病と不治の病を治していたらLvも上がるだろうて。

 最終的にLv10まで上がり勇者スキルをコンプリートした。

 勇者 朝宮嵩都 は 代償蘇生 を覚えた!

 わー、すごーい。MP全部と全能力低下とHP1になる代償を支払って蘇生できるぞ!

 ――死ねと申すか。自己犠牲ここに極まれり。

 ちなみに邪神スキルの死者蘇生は総MPの百分の一を支払うだけで良い。

 ついでと言っては何だがMP自動回復もあるため邪神スキル使った方がお得だ。

 さて、絶対使うことのないスキルを覚えカンストしたところで勇者スキルが進化した。


    ――勇者スキルLv10到達を確認。

    習得の条件を満たしているので勇者スキルが進化し、神スキルを開放します。

    管理者権限の一部を開放――エラー。

    最上位スキルの存在を確認。譲渡を破棄します。

    朝宮嵩都 は 神スキル を習得した。


 条件は一度でも死者を蘇生し、多くの人を無償で無性に助けること。

 で、その肝心のスキルは簡単に言うと全体回復魔法をバランス良く覚えます!

 ………………―――――俺は無言でスキルメニューを閉じた。

 さてと、寝ずにほぼ全員を救出してなんとか城下町を復旧したことだし一度アジェンド城に戻る――あ、いや待て、その前に邪神としての会談が残っていたな。

 とは言え、その場に俺がいないと不自然に感じる奴も出てくるだろうな。

 それにこの城にそうそう長いも出来ない。

 そういうわけで俺は四天王を集めてちょっとした報告をすることにした。



「邪神様、四天王全員御身の前に」



 カルラッハたちが俺の前に跪いていた。



「楽にせよ。今日集まってもらったのは余の代わりを置くことにしたからだ」



 そう言って俺は自分の代わりとなる魔物を創成した。

 俺の分身体と言っても過言ではない。知識や思考力、スキルの一部を同じように設定したからだ。もちろん空も飛べる。

 その魔物に角のカチューシャと仮面、衣装を着せれば完璧だ。

 俺自身は聖騎士みたいな鎧を着ている。

 カルラッハたちが立ち上がり、その魔物と俺を見比べる。



「お、おお……こうしてみると中々見分けがつきにくいですな」

「ならば良い。この者は余とほぼ同じ思考力や知識を有している。しかし、この城や住民たちは良く知らぬので教えてやってくれ」

「至らぬ点もありますがよろしくお願いします」



 俺が言い終わると同時に影武者――邪神が丁寧に四天王に向かって腰を折った。



「了解致しました」

「うむ。それとこの者には余がいない時の全権代理者とし、もし間違えるようであればカルラッハ、お前に任せる。それも違うと思うときは残りの三人が諫めよ。よいな?」

『ハハッ!!』



 五人が一斉に礼を取る。

 俺は外套を翻し、俺は玉座の間を出た。

 これで今回みたいなことは防げると思いたいが……多分後で一揆とか反乱が起きそうな気がする。まあ、そんなことをしたら発起した奴らの残っている俺の魔力を媒介にして高温沸騰させて人体爆破させるけどな。

 逆らうものは皆死刑――なんていうつもりはない。その気になったら出来るが。

 ――そういえばよく考えてなかったが物語が終わった後ってスキル使えるのかな?

 普通に考えればスキルや魔法は全部なくなるはずだ。文字通り設定を破壊するわけだからな。つまり、筑笹たちと約束した魔帝蘇生が出来るかどうか怪しい。

 先にリンクを飛ばしてプレアに繋げる。



『――どうしたの嵩都?』

『今、時間大丈夫か?』

『うん、大丈夫だよ』

『そうか。実は魔帝の蘇生についてなんだが、全部終わった後で魔帝を生き返らせれるのかと思ってな』

『……ああ、そういうこと。確かに分からないね。不履行になるのは良くないから生き返らせて、スキル、魔法を封じて嵩都の城に軟禁しておいた方がいいかもね』

『だな。それで当然蘇生させたら魔帝は疑問を持つと思うから話しておきたい』

『……んー、嵩都がちゃんと管理していれば大丈夫でしょ。いいよ、話しちゃって』

『助かる。要件はそれだけだ。後、三日くらいしたら帰れると思う』

『分かった。それじゃ、待ってるからね』

『それじゃ』



 リンクを切って俺は城の西の棟の最上階に来て紅茶を淹れ、魔法陣を展開する。

 ――蘇生しちゃいました。殺害した後の恰好で登場だ。



「――ここは……」

「お久しぶりです。魔帝様」

「あら、嵩都さん。私は一体――」



 そこまで言ってようやく記憶を思い出したのか魔帝は眉間に皺を寄せた。



「そういえば私は貴方に殺されたのでしたね。それで、なんで私を生き返らせたのですか? それにここは何処ですか?」

「それについては全て事情があります。全てをお話ししますのでおかけ下さい」



 魔帝に席を進めつつ紅茶を出し、俺はゆっくりと魔帝に説明をした。

 これまでのこと。死んだあとのこと。そしてこれからの予定を伝えた。



「―――なるほど。つまり、全ては世界を救うため、ということですね」



 そういう大義名分なら怒りも少なくなるだろうと打算して言った。

 


「そういうことです」

「それで、邪神の貴方は私をどうするつもりですか?」

「話した通り後二か月で全て終わります。終わった後、アジェンド城に送るつもりです。それまでは我が城にご滞在ください」

「それは私が飛べることを知ってのことですか?」

「逃げられませんよ。この城――いえ、この大陸自体が俺の所有物です。当然、邪神たる俺ならばスキルや魔法封じくらいはたやすいですよ。言い忘れていましたがここははるか上空に位置する浮遊大陸ですから俺の許可なしに逃走は不可能と言っておきます。仮に大陸の端から落下して途中飛行を試みようとしても魔法封じの効果は地上に落ちるまで永続されます。つまり死にます」



 魔帝は腕を組んでため息を吐いた。諦めとも取れる。



「――邪神、でしたか? 流石に予想外でしたよ。なにもかもが。しかし私の見る目は間違っていなかったようですね」

「どういうことですか?」

「前に私は貴方をアネルーテの婚約者にしようとしたでしょう? その時は勇者の名目を借りて多少強引にでもくっつけてしまおうと考えたわけですが、今ならばそんなことしなくても政略結婚の名目で十分ですね」



 ――マジ? 言っちゃ悪いが魔帝は死んで頭が腐ったらしい。

 少なくてもアジェンドも邪神に関しては嫌悪的なのは俺も良く知っている所だ。

 元とは言え、その筆頭だった人がそんな簡単に好意的で良いのだろうか?



「正気ですか? 俺は貴方を一度殺したんですよ?」

「その見返りが世界を救う事なら安いものです。それに私はまたこうして生きています。史に出てくる邪神とは生死をたやすく操り、暴力的で無尽蔵な魔力と力を己の欲望のために振るうとありますが、貴方はとてもそうとは思えない。現に世界を救うなどということに使うのは邪神がすることではありませんね」



 ――すいません。世界を救う=プレアが好きだから手伝う、なので己の欲望です。

 そう思ったが敢えて誤解させておく。わざわざ訂正することもないだろう。



「そう考え、もしも全て終わったのならアネルーテを貴方の妻にしてあわよくばアジェンド城の発展と戦争に貢献して貰おうという魂胆です」



 そこはまあお互い様だろう。とりあえずもう一つの懸念を言っておく。



「しかし、俺には既に妻がいます」

「あら? それは誰なのですか?」

「多分知っていると思いますが、プレアデスという女の子です」

「ああ、プレアさんですか。じゃあ第二后妃ということで」



 どうしてもくっつけようとしている。確かに結託するという利益は出るし旨味も少なからずあるが……。



「いや、プレアは意外と独占欲が強いのでそれは無理でしょう」

「それは大丈夫です。あの子たちは姉妹のように仲が良いですから」



 だが本心は――。いや、これは口にすまい。誰も相手の気持ちなど分からないのだから。スキルや魔法を使えば別だがそんなことをする必要もないな。

 そう自分を納得させておく。



「――ふぅ。確かに仲は良いですね。一緒に寝泊まりするくらいですから」

「あら、そんなことになっているのですか」

「ええ。俺たちの家の――主に俺の部屋で……」

「そうですか。なら、問題ありませんね」



 えー、そーですとも。俺の性欲が溜まる意外なんの問題もないですからねぇ。

 今のは完全に墓穴だったな、ちくしょう。



「なんにせよ無事に世界を救ってからの話ですけれど」

「その時は有無言わさずにアネルーテを娶って貰いますよ。ついでにクロフィナもどうですか?」



 あ、そういえばそこらへんは言ってなかったな。



「あ、いえ、クロフィナさんはもう結婚されましたよ」



 魔帝は少し考えるようなしぐさをして顔を上げた。



「ハイクフォック――に、嫁いでしまったのですか?」



 ハイクフォックを知っているからには前々から縁談があったのだろう。



「いいえ。それについてもお話しておきましょう」



 ほぼ関係がなかったが出来事を話しておいた。



「そうですか。ある意味、あの引きは当たっていたようですね」



 何のことだが分からないが聞き流しおこう。



「他に聞きたいことはありますか?」

「今のところはありませんね。またその内ということで」

「分かりました。ここに侍女を置いていきますので何かあれば呼んでください」

「ええ。分かりました」

「では、また」



 俺は立ち上がって部屋を後にした。








 浮遊大陸を出た俺はバルフォレスに向かって飛んだ。

 それから二日かけて位置は確認したのでこれでいつでも転移で来れる。

 上空から見た限りだとかなり堅固な城塞都市だな。

 飛竜対策でもしているのかバリスタが城壁に設置されていた。

 だが、兵士の士気は高く住民も活気がある。攻略は難易度が高そうだ。

 

サフィティーナ「(声色を変えたまま)さあ、死闘を始めましょうか」

嵩都「代打」

グラたん「――えっ?」

サフィティーナ「ラスサアル・デスビーム!」

グラたん「うひゃぁ!? やられませんよ! カ・メ・〇・メ・波!」

サフィティーナ「効きませんよ!」

嵩都「さて、それはさておき次回、新たな同居人」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ