第七十四話・新たな同居人
嵩都「第七十四話だ」
アジェンド城に戻ってきた俺はまず最初に国王の元を訪れていた。
「只今戻りました」
「よく戻った、嵩都殿。して任の方は?」
極秘任務にして貰った内容はバルフォレス近隣の調査だ。
勿論、情報らしい情報はないがその人物の場所は分かっているのでそれを報告することにした。このことはプレアも了承していることだ。
「はい。邪神が残した情報をもとにバルフォレス領周辺を探ったところ、バルフォレス城内に固有魔法者がいるようです。魔法内容まではまだわかりかねますが……」
「そうか……。それで、やはり邪神と手を組むのか?」
「それが最善であり、我々にとってもバルフォレス城を攻略するための布石になり得ると思います。邪神とは会っていないので真偽は又聞きになりますので明日の会談にて直接話を聞きたいと思います」
「……そうであるか。この一件は君たち勇者に任せる」
「ご期待に沿えるよう努力いたします」
「うむ。して会談場所はどの部屋にするのだ?」
「国王様がいた方が威厳が出るので、この謁見場がよろしいかと思われます」
「ふむ、あい分かった」
「以上で報告を終わりまする」
「うむ。勇者たちには嵩都殿から伝えてくれ」
「了解しました」
俺は一礼して謁見場を出た。
自宅に戻る間にリンクやチャットで亮平たちに声をかけた。
そして今日の夜に一度俺たちの家に集まることになった。
その間に俺は買い出しやら学校に行って公欠確認を取ったりした。
そんなことをしている内にあっという間に夜になった。
「ただいま」
久々に自宅に戻ってきた。なんか安心感がある。
玄関には靴がいくつもあることからかなりの人数が集まっているようだ。
「あ、嵩都。お帰り」
玄関を開けるとプレアが出迎えてくれた。
「帰ってきたか。一週間ぶりだな」
その奥、居間から亮平が顔を覗かせた。
「おう。元気そうでなによりだ」
「っと、そうだ。お前に一つ言わなきゃならないことがある」
「なんだ?」
「後藤と青葉が何処にもいないんだ。何か知らないか?」
あっ……そういえばすっかり忘れていた。すまん、二人とも。
「知ってるぞ。それもかねて皆に報告する。居間にいるのか?」
「分かった。おーい、嵩都が帰って来たぞー」
亮平がそう言って居間に戻って行く。
靴を脱いでプレアの後に続く。居間の戸を開けると十四人が集まっていた。
これだけ集まってもまだ広いと感じるこの居間って一体何なんだ。
八人掛けのソファーには源道たち三人が陣取り、博太、フェルノ、悠木、筑笹がメインテーブルの椅子に腰かけている。大典、マベレイズさん、クロフィナさん、亮平はもう一組のテーブルを出して紅茶を飲んでいたようだ。
「久しぶりだな、皆」
「おうよ。お前も大変だったな。あの後すぐに任務だったんだろ?」
大典がそう言い俺は頷いた。
「ああ。そのことで皆に報告する。まず、亮平から聞いたが後藤と青葉が行方不明のようだな」
「そうだ。困ったことに何時からいないのかわからないんだ」
筑笹が腕組みをしながら言う。
「そうか……。俺が知る限りだと彼女たちは魔王軍に囚われている」
「なにっ!?」
「嵩都、なんでそんなこと知っているんだ? それに魔王軍と因縁が深そうだった。一体どこで魔王軍とは出会ったんだ? お前はどこまで知っているんだ?」
筑笹が驚く間に亮平が冷静に俺に疑問をぶつけて来る。
まあ、あれだけネタバレと疑問が上がれば当然の流れだな。
俺は一度ため息を付いて空いている椅子に座る。
「そうだな……奴らが出てきたのなら皆も知っておくべきだろうな」
俺は瞬時に嘘の経歴を思考し、理解習得で保存して矛盾が無いようにしておく。
「まず、後藤と青葉について知っているのは魔王軍側の情報屋から情報を買っているからだ。ルートは秘密な。次に魔王軍と初めて会ったのはラグナロクの一週間前、一時期俺が居なくなった時があっただろ? あの時だ」
俺の説明にああ、と思い出しているようだ。
「どこまで知っているか……実のところ魔王軍が魔神を復活させてなんかやるくらいしか知らない。ハイクフォックの時はハーデスと戦っていたから亮平たちがどこまで知ったのか知らないんだ。教えてくれるか?」
「分かった。まず――」
ほぼ聞き流すように俺は意識では別のことを考えていた。
亮平の説明は憶測も交えた説明だったが俺が教えたこと以上は知らないようだ。
「そうか。知っているのはこれで同じくらいだな。質問が無ければ次に行きたい」
確認の意味も込めて俺は見渡すが特に質問はないようだ。
「じゃあ、次に明日の邪神との会談についてだ。場所は謁見場に決まった。時間は正午、事前の予定があるなら教えてほしい」
「いや、皆明日のために予定を入れてないから全員出れるぞ」
問いには筑笹が答えた。当事者だけあって行動してくれていたようだ。
「……分かった。国王には俺から言っておく」
「頼む。あ、そうだ。嵩都にはまだ言ってないことがある。明日の会談の結果次第で日程は変わるが私たちは一度修行に出ようと思う」
「修行? STを使うのに必要あるのか?」
「ある。朝宮も知っていると思うが勇者スキルは回復魔法のみしか覚えない。私たちもSTが破損した場合白兵戦を強いられるだろう。バルフォレスもそうだが魔王軍、邪神軍と戦う時に攻撃スキルが無いのは痛手だ。だから各々の伝手を頼って鍛えようと思っている。もし当てが無ければ私たちと一緒に来てくれてもいい」
ふむ、先の戦闘経験から思い立ったとしたら合格点だ。
正直、筑笹たちが乗るSTは強力な武器だが本人たち自身は大したことはない。
バルフォレスと本格的に戦争になるのはおそらく物語が終わった後だ。
その時に備えて鍛えてくれるなら好都合だ。
――修行の当てがないわけじゃないが正直な所俺自身は強化する必要性を感じない。
俺の場合有り余るMPごり押しでどうにかなってしまうからだ。
だが、機会としてはちょうど良いかもしれない。
思い当たるのは先の巨竜戦で知り合いになったレニールがいる竜の里とやらに行ってみたいと思う。邪神としてだが。
「いや、そういうことなら俺は知り合いの里を訪ねて見るとしよう」
「分かった。ああ、もちろん修行するのは夏季休業中だからな」
「了解」
それから少し明日の会談について打ち合わせをして解散となった。
国王には結果を伝え、ある程度威厳の出る会場にして貰った。
ムスペルヘイムにいる邪神にはこのことを伝え、明日の会話する内容を取り決めた。
護衛にはカルラッハと以下二名が付くことになった。
さて、話は変わって今日からこの家に同居人が三人増えることになった。
まずこの家の現住人は俺、プレア、亮平、博太、フェルノの五人だ。大典は店の方を拠点にしているようだ。
その三人というのはヴェスリーラ、クロフィナさん、アネルーテの三人だ。
ヴェスリーラとクロフィナはともかくとしてルーテが何故住み込むことになったか。
理由は一言、『寂しい』だとさ。確かに一人でいるのは寂しいだろう。
その点、この家に居れば寂しいとは無縁になれる。皆で居た方が楽しいのは事実だ。
部屋割りは特に変わることもなかった。
ヴェスリーラは前の部屋をそのまま使えば良いしクロフィナさんは亮平の部屋で寝泊まりするようだ。
ルーテはプレアの部屋で過ごすようだ。……それでプレアと一緒に俺の部屋へ来ないことを祈る。
急に女性率が高くなり男三人は尻に敷かれることになった。
次の日。
はーい、予想通りでしたね。
さして重くはないけど女子特有のいい匂いが俺の性欲を刺激するぜ。
さて、寝起きのたるい体を起こしてまずは洗面所へ向かう。
顔を洗って昨日購入した割烹着を着用して朝食の準備にかかる。
八人分は中々料理のし甲斐がある。今日は和食にしようと思う。
白米を研いで釜で炊き、保存してある魚を焼き、香ばしい匂いが居間を包む。
副菜は法蓮草の紫蘇和えと昆布出汁で巻いた卵焼き。それに豆腐の味噌汁だ。
「良い匂いだなぁ」
二階から博太とフェルノが起きてきたようだ。
「おお、久々のまともな朝食だ」
「そうなの?」
「――うん。ボク朝は眠いから手抜き……」
「プレア、寝ぼけていると滑るよ」
続いて亮平とクロフィナさんも起き、プレア、ヴェスリーラ、ルーテも起きていた。
プレアは朝が弱い。俺が起こさないと起きないくらいだ。
朝食を用意し終えて皆を待つ間にほうじ茶を煎じておく。
これぞ和の心。和食である。
皆が揃い、食卓について箸を進める。
「こ、これは―――ッ」
「美味しい……もぐもぐ」
その中でもクロフィナさんがなんか驚いている。
「これ、嵩都さんが作ったのよね?」
「ああ、そうだ。朝は大抵俺が作れるからリクエストがあれば言ってくれ。それと苦手な食べ物があれば言ってくれると助かる」
「こ、これを亮平たちは毎日のように……」
「料理長と互角かそれ以上かしら?」
ルーテがそういうが実際は俺の方が上だろう。
「一応プレアも俺と同じくらいだぞ」
そういうとルーテがプレアの方を見た。
プレアはまだ眠そうに船を漕いでうたた寝している。
そのくせ食事が進んでいるのは香りのおかげだろうか……。
「――リンもこれくらい作れるようになって欲しいわ」
えらい流れ弾が亮平に飛び、亮平が米を喉に詰まらせた。
「げほっ……いや、一応俺だって頑張っているんだぞ。これでも料理スキルはLv5になったんだからな」
「ちなみに嵩都さんはいくつぐらいなのかしら?」
「んー、派生して極上料理Lv7だな。プレアは?」
クロフィナさんたちの方からむせた声が聞こえた。
「んにゅぅ……確かLv6……」
「ほぼ互角だな。ありがたいことだ」
それを聞いて皆が口元を引き攣らせた。
「博太は全くできないからね……」
「フェルノもな」
「……亮平と同じで頑張ってる」
「知ってる。俺も手伝ってるからな」
博太とフェルノも会話に参加してきた。最後はヴェスリーラかな。
「ヴェスリーラ……先生はどうですか?」
危うく呼び捨てる所だった。気を付けねば。
ヴェスリーラは食事の手を止めてこちらを向いた。
「私も……亮平さんたちと同じくらいしかないです」
少々肩を落としながら答える姿はとても邪神軍四天王とは思えなかった。
「そうですか」
「ええ。お二人で朝夕回すのは大変でしょうから早く戦力になりたいです」
表裏のないほほ笑みをしながらヴェスリーラは答えた。
「話は変わるが、皆は修行何処にいくんだ?」
一応確認をしておきたい。知っているのは筑笹のプランだけだからな。
まずは亮平が飲み込んでから答えた。
「……俺とフィー、博太、フェルノはエンテンス周辺にある高レベルダンジョンで身体能力とスキル上げだな。アネルーテさんとプレアデスさんはネーティスで修行するようだぞ」
「そうか。期間はどれくらいにするんだ?」
「――大体一週間くらいかな? その後筑笹たちとアネルーテさんたちとネーティスで合流して現在最難関と言われているダンジョンで演習するつもりだ。ある程度連携も取れるようにしておきたいって筑笹が言っていたぜ」
「ネーティスか……。なら、俺も終わり次第合流しよう」
「分かった。集合場所とかはまだ決めてないから後でな」
俺は頷き、食事を再開した。
――さて、それはそうとシリアス展開が多くてお忘れではないだろうか。
今日は水曜日。当たり前だが学校がある。
午後はほぼ出れない物と思って公欠扱いになっている。休んでばかりだな、俺。
朝食を食べ終えて食器を洗いつつそんなことを考える。
それはそうと今は五月下旬。シャンたちにアジェンド城攻撃をしてもらうのは七月二十一日。だとすれば 七月二十日が良いだろう。電撃作戦だ。
夏休みが始まるのは確か七月の二日から九月一日までだ。長い。
学校では貴族が大多数を占めているので必然的にそうなるのだろう。
食器を洗い終えて制服に着替え、出発の準備を整える。
グラたん「平凡過ぎて書く事がありません」
嵩都「それは良いことだな」
グラたん「そうですね。それでは次回、暴挙」
嵩都「ほう、中々不安なタイトルだな」
グラたん「あ、それとお知らせです」
グラたん「pv3000突破しました」
グラたん「読者の皆様、お読みいただき本当にありがとうございます」
グラたん「これからもよろしくお願いします!」




