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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第五十七話・だらしない魔王

グラたん「第五十七話です」



 結局夜更けまで話と酒が進み、気が付いたら朝だった。

 ふふふ、天丼展開はねぇぜ。いつの間にか俺の部屋にプレアが侵入して寝ていたなんて言うことはねぇ。

 ククク、なんで同盟軍総司令官兼魔王城君主魔王シャン様が寝ておられるのか誰か答えて。はい、誰もいません。二人きりです。

 よし思い出そう。確か昨日は部屋に戻る途中頑張って自室に戻ろうとしている酔っているシャンを見つけ思わず手を貸したらそのまま自室に引き込まれて永遠と水を飲みながら自分のコンプレックス(身長や胸とか敬意が払われてないことの)愚痴を聞かされ、ようやく眠ったと思ったら右腕を束縛されて仕方なくシャンの寝床で寝たんだっけ?

 ……転移しよっか。ばれて問題になる前に。

 右良し左良し魔力最小限痕跡消し良し――。

 ……ふとシャンに目を向けてしまったが運の尽き。

 だらしなく着崩れた黒レースのドレスの中に見える小ぶりの双丘。

 ドレスの裾がかなりまくれ上がって鍛えられた太ももが見えている。

 いや、このままにしておくべきなのだと思うのだが風邪でも引いたら侵攻に支障が出る。

 シャンの衣服を整え、シャンを持ち上げて寝床の中心に寝かせて布団をかけた。

 決して情欲が湧かなかったと言えば嘘になる。

 持ち上げたときに分かったが皮下脂肪が少なくよく鍛えられている。

 これは実に抱き心地もよかろう。さて、今度こそてn――。

 見たくはなかったがシャンの片付けていない部屋の惨状が目に入った。

 いや、いい加減不味い。もう日が昇っているし引き時だと思う。

 しかし体は馬鹿正直に部屋を片付けていた。

 主に酒瓶やお菓子類だ。食い散らかしも酷い。というかこれだけ食ってよく太らないな。アレか、どれだけ食べても太らない体質か。

 ゴミはゴミ箱へ。瓶は分別。

 ……見たくないものパート2。

 まあ当然と言えば当然だがお傍付きのメイドはいないのか。

 いや、いないからこそ服が散乱しているのだろう。

 どうにもこうにも見たからには片付ける。洗濯程度なら魔法で出来る。

 ――ふう、いい仕事したぜ。乾いた服はハンガーにかけて部屋全体に除虫魔法をかける。

 ん? 下着? あったぞ。だが妹がいたというアドバンテージは大きい。はぁはぁとはならずに片付けた。

 ……見たくないものパート3。

 それは埃だ! 汚い、汚すぎる! これが仮にも一国の姫が寝る場所か!

 シャンが起きるの前提でカーテンを開けて風魔法で埃を吹き飛ばす。

 それだけでは飽き足らない。床に壁に窓の淵まで全て洗い流しくれよう――。


 ――ガチャッ



「魔王様ー、朝ですよぉー」



 可愛い獣耳、ウサギ族の少女がノックなしに入ってくる。

 ククク、このキレッキレの段階で来るとは馬鹿な奴よ。



「君、ちょっといいか?」

「へっ? 私ですか?」

「ああそうだ。あまりのダメっぷりに苛立ちが頂点に達しましたよぉ。ホッホッホ」

「え、えっと、どういうことでしょうかー?」



 俺はそのとぼけた表情に頭の血管がねじりきれた。



「まず入ってくる前にノックしろ! そして語尾を伸ばすな! 掃除しておいたがこの部屋はゴミ溜めか! 仮にも君主である魔王の部屋だぞ! それを埃まみれ、脱ぎ散らかし、洗濯はしてない、魔王の健康管理もしてない、害虫駆除もなしとはどういう了見だ!!」

「ひっ、ひぃ! 申し訳ありません!」



 ウサギが謝るとちょうどいいところにシャンが起きた。



「なにを朝から騒いでるの?」

「シャン、お前もだ! 酒は飲む、夜更かし、お菓子の間食、寝相、我儘、舐められている原因はそれだ! 魔軍を率いるものとしての威厳を保て!!」

「えっ、あ、は、はい!!」

「なんですか騒々しい。朝から騒ぐなど迷惑――」



 そこへ騒ぎを駆けつけたポノルも来た。



「軍師ポノル! 軍師たる貴方が君主たる魔王を管理していないとはどういうことか!!」

「え、ええ?」



 ポノルにゴミ箱を突きつける。中にはポテチやチョコレートの袋が詰まっている。



「いくら魔王が太らないとは言っても健康上の問題がある! 常に万全の体調にしておくのが軍師の役割だろうが! 不調の時に勇者共が侵攻し、相対するときになったらどうするつもりだ! 万が一それで遅れを取ったら目も当てられないぞ!!」

「なっ―――!? ……確かにおっしゃる通りです。肝に銘じておきましょう」



 ポノルが片付けられたゴミと酒瓶を見て納得した。

 俺の怒りも少しは収まった。少し癇癪し過ぎたか。



「そうしてくれ。それとこのメイドだがシャンを起こす専門か? 掃除とベッドメイキングくらい出来るように教育してくれ。部屋が埃まみれだったぞ」

「申し訳ありません」

「ご、ごめんなさいぃ……」



 これでもかと深々と頭を下げる二人に対して少し溜飲が下がった。



「貴方たちにはこの後話があります。さて、それはそうと何故スルト様がこちらへ?」



 ――うっ、そうだった。理解習得ヘルプ。

 だが、理解習得も助ける気はないのか一切手を貸してくれない。



「昨夜シャンに連れられて今朝まで永遠と愚痴を聞かされてました」



 及第点か? 即時出しにしては中々の言い訳だ。



「……そうですか。それは失礼しました。それで掃除の件ですがスルト様のお手でなされたのですか?」

「ええ、まあ」

「つまり、先ほどの言葉から察するに部屋の掃除と洗濯までしていただいた、と」



 ちっ、面倒くさい箇所まで覚えやがって。

 そこまで言われてシャンも気づいたのか顔を赤らめた。



「えっ、ええ!? それじゃ僕の服とか下着まで!?」

「いくらスルト様いえども、仮にも女性であるシャンの下着に手をつけるのは……」

「いえ、下着はありませんでした」



 そう答えるしかあるまい。背中には冷や汗が流れている。

 だがポノルの詰問は終わらない。



「……シャン、貴方まさか下着をつけていないのですか?」

「ええっ!? 流石に着けてるよ!」



 ちぃぃ。ダメか。むしろ地雷か。



「スルト様?」



 ポノルだけではない、シャンと侍女も白い視線を俺に送ってくる。

 素直に白状するのは癪だ。同情くらいは買っておこう。



「……察してくれ。そう答えるしかなかったのだと」



 ポノルは一拍後、俺の立場から考えてくれたようで頷いた。



「……まあ、確かにそうですね。この件は掃除してくださったお礼とお相子ということにしましょうか」



 それに納得しないのはシャンだ。



「ちょっと待って姉ちゃん! それじゃ僕の見られ損じゃん!」



 その言い分は最もだ。だがそこは姉の裁量。



「だらしないのが悪いのです。少なくとも私はきちんとしてます」

「酷いぃ!」

「嫌だと思ったのなら次からちゃんと洗濯して片付けなさい」

「うう……はぁい」



 良し今だ。今謝罪すれば俺への被害が大分少ないはずだ。



「……シャン、その、すまない。本当にすまなかった」



 俺はシャンに全力で頭を下げた。



「……良くないけどいいよ。次は絶対にないんだから……うう」



 とにかく謝り倒した。邪神ではなく一人の男として。

 なんとかお許しを貰った俺は魔王城を後にしてアジェンド城へ帰還した。







 今日は月曜日だ。二日酔いは消化魔法と解毒魔法で消えたが気分は晴れなかった。



「どうした? 何かあったのか?」



 昼食時になって学食に行くと博太が落ち込んでいる俺に声をかけてきた。



「いや、ただの罪悪感だ」



 そもそも妹のと一緒にして良いわけがない。ああは言ったが若干興奮したのは事実だ。

 いや、それ以前に俺が余計な事をしないでポノルに言えば解決した問題だと今更気付いた。

 っと、博太か。伝えねばな。



「それはそうと博太」

「なんだ?」

「お前の姉さんからの伝言なんだが――」

「グブッ……。姉貴が? ん? 姉貴? 姉貴!? ちょっと待て嵩都! お前どこで姉貴に会ったんだ!? まさか地球とか言わないよな!」



 早口にまくしたてる博太を落ち着かせて話す。  

 というかお前もなのか……。



「会ったのは休日中に行った旅先だ。仕事上詳しい場所は言えないがこっちに向かっている。三日後だったか? お前に会いたいってさ」

「……マジかよ。ってことは転移か転生したってことか」

「転生だな。連絡先は分かっているから指定場所があれば伝えるが」

「んー、そうだなぁ。西門付近に九時って伝えてくれるか? ああ、それとフェルノも紹介したいから二人だ。頼むぜ」

「了解。ちゃんと伝えておく」

「それはそうと嵩都は勇者行方不明事件を知っているか? いや、知らないわけないよな。現にいなくなっているわけだし」

「ああ。知っているぞ。俺のところにも来たからな」

「俺のとこもだ。もちろん蹴ってやったがな」

「同じだ。……はぁ、同じ学友同士で殺しあうのは嫌だな」

「全くだ。お互い人質には気をつけようぜ」

「だな」



 最も、プレアを人質に出来る奴はいないだろう。その前に頭部が消えるからな。

 そこで授業開始の予鈴が鳴る。



「少しゆっくりし過ぎたな。それじゃ」

「おう。頑張れよ」



 博太と別れて俺は次の授業である実技が行われるグラウンドへ移動し、その道中でレイデメテスに博太の言葉を伝えた。



「はい、それでは実技を始めますね」



 例の如くヴェスリーラだ。最近でズバ抜けた実績を上げたとかなんとかの理由で昇格して俺たち魔法科が参加する半数の授業を請け負っている。

「準備体操をしたら今日は試合をしてみたいと思います。それでは二人一組を組んでくださいね」

 知っていると思うがSクラスにいるのは全部で十人だ。

 教員数が足りないのが理由か実技はS、A、B、C合同だ。

 俺はいつものようにプレアと組む。男女ペアは俺たちを含めても数組しかいない。

 以外なことに男女混合で授業をする。男女ともに青い長ジャージ姿だ。

 軽く済ませて訓練用の木槍を持つ。



「うう……嫌だなぁ」



 隣でプレアが呻く。プレアの武器は弓だ。接近戦はあまり得意ではない。

 いや、そもそも魔法科で武術訓練すること自体おかしい話だ。

 最低限型と払いさえ覚えれば時間を稼ぐことくらい出来る。

 その間に魔法を組み合わせた戦い方が出来るという理論だろう。

 そして魔法に頼り切りにならないための訓練でもある。一応の意味で近接、長物の二種類を習う。



「良いよね嵩都は……魔法も剣も槍も出来るから」



 そう、プレアは魔法と弓は出来るがそれに極振りなのか他が全くできない。

 俺以外と組んだら、特にキャンスとかその取り巻き辺りと組んだらボロボロにやられてしまうだろう。

 だからこそ俺は上手く手を抜いてプレアの相手をしている。



「では、まず軽く打ち合ってください」



 ヴェスリーラの声が響いて各々の訓練が開始される。



「向き不向きの問題だ。ほら、打ってこい」

「えいっ!」



 長物の基本は右上半身中段だ。そこから突く、薙ぐの二種類に分けられる。

 ちなみにプレアは突くオンリーで攻めてくるから捌きにくい。

 それでも基礎の型は出来ているのか隙自体は少ない。



「あらあら、朝宮さんは女の子に手も足もでないのかしら~」



 例の如くキャンスだ。プレアの被害が俺にも降りかかっている。

 試合中によそ見とか余裕だな。取り巻きが弱いだけか?

 いや、プレアの突きを片手で捌いて他の奴らを見ている俺が言う事じゃないな。

 それと試合についてだが武術科ではないためほとんど魅せるための型だ。

 ましてや人を殺す型なんぞ誰もやっていない。



「はい、それじゃあクラスごとに試合してみましょうか」



 ヴェスリーラの声が響き、俺たちはSクラスの元へ行った。


シャン「スルトのバカぁぁぁ!! アホ――! スケベ――ッ!!」

ジェルズ「……軍師、何があったのですか?」

ポノル「知らない方が良い事ってありますよね?」

ジェルズ「……はい。(本当に何があったのだろう?)」

ポノル「あ、バウゼンローネ。ちょっと良いですか?」

バウゼンローネ「どうしましたか?」

ポノル「この紙なのですけれど、どうも魔界言語ではないようでして、バウゼンローネは読めますか?」

バウゼンローネ「えっと……(あ、これ日本語だ)」

バウゼンローネ「次回、リーナ」

ポノル「意味が分かりませんね」

バウゼンローネ「そうですね」


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