第五十六話・転生者
嵩都「また新キャラ出すのか?」
グラたん「必要なんです」
嵩都「そろそろ何人かモブ落ちしそうだな」
グラたん「そうならないように、努力はします」
シャン「スルトー、そろそろ第五十六話始めるよー」
嵩都「分かった。今行く」
昼頃になり酔いつぶれた四天王もようやく起き上がった。
午後からになってしまったが結団式や軍配、総司令官が決まった。
当然ながらシャンが総司令官でポノルが補佐。
そして夕刻に各代表、俺を含めた四人が会談に臨んだ。
眷属として俺に合わせてか四人まで参加可能のようだ。
俺のところは当然四天王。シャンのところはポノル、第一位、それにプレアたちだ。
「それじゃ、改めて僕が総司令に選ばれた魔王シャンです! よろしくね」
まずはシャンが立ち、順当に挨拶していく。次は俺だな。ちょっと口調変えてみるか。
「余は邪神スルトだ。背後に座っているのは四天王だ」
続いて俺の右隣の、さっきからいやに好色的な視線を送ってくる吸血鬼が立つ。
仮面を着けているから素顔は分からないはずなんだがな……。
吸血鬼と言っても見た目は人間だ。分かるとすれば背中に生えている羽で判別するくらいかな? 区分が難しい。
「童は吸血鬼皇女グリモア。よろしく」
次は厳つい鬼だ。見るからに暴力的で粗野そうな印象を見受ける。
「我は鬼神デムクロイ。若輩者であるため皆様のお役に立てるよう精進する次第です」
……意外。その一言だ。見た目によらなさそうだが人間らしさみたいのがある。
最後はウリクレアやヴェスリーラに匹敵するほどの美貌の持ち主だ。
「私は黄泉王レイデメテス。冥界の主よ」
冥界か……魔界ではない別世界かな?
「それと私は転生者だけど……他には誰かいない?」
「それをいうなら我も、だ」
「童もそうね」
今の所三人か。デムクロイに関してはやはりと思う所がある。
「残念ながら余は転移者だ」
そして絶対ついてこれていないシャンがどうしようと視線を彷徨わせる。
「えっ……あ、その……あうあう……」
完全に置いてきぼりを食らったシャンが少し可哀想だ。
「ほう、邪神殿は転移者なのか。やはり地球からこられましたかな?」
「其方もか、鬼神殿。余の故郷はは日本という島国だ」
「おお! 童の同胞ではないか!」
「まあ、同じ時間軸とは限らないが」
「ふふっ、不思議な巡り合わせね。是非ともゆっくり話たいわ」
シャンを置いてけぼりにして会話が勝手に弾んでいく。
それにしてもまさか魔界側で先に転生者が見つかるとはな。
「ふむ。我はこの後は特に予定はないししばらく観光滞在する予定だ」
「童も似たようなものだな」
「余も四天王を先に帰らせれば滞りない」
「決まりだな。昔話に花を咲かせるのも悪くない」
「ふふっ、一度こういうもの体験してみたかったの」
「であるな。ハッハッハ! それにしても魔王殿が話しておられぬが魔王殿は話は苦手であったか?」
「えっと……その……」
鬼神が水を向けると呆けていたシャンがまた慌てふためく。
流石に助け舟を出してやるか。
「鬼神殿、彼女たちは転生者でも転移者でもない者だ。それに今ここで話すべきことではなかろう?」
「むっ、そうか……。いや、失礼した。この話は後にして本題に移りましょうぞ」
この鬼神は察しが良い。人間を恨んでいるシャンたちに自身等が人間などと話せばこの連合軍自体が白紙になりかねない。
「えっ、あ、うん。本題というよりは各自の軍勢構成や皆が使う武器、攻撃などの情報共有がしたいかな。勿論、秘匿したい所はそれで構わないよ。僕たち魔王軍は知っての通り魔族を中心にした軍で、魔界でも指折りの実力者が多くいるよ」
シャンが最初に提示したことによって各自が口を開けていく。
「我の軍勢は鬼、小鬼、獣犬などが主である。そして我の獲物はこれだ」
デムクロイが持ち上げたのは大きな両刃斧だ。一目で業物と分かる刃渡りをしている。
「重撃や破砕などが得意と記憶してくれれば良い」
「次は童じゃの。まあ、名前通り吸血鬼が主じゃな。童自身はあまり戦闘は得意ではないため前線には出ない」
グリモアは内政系か。
「私の所は死霊、骨骸、死体などが主です。……私自身、幽霊系が苦手なんですけどね……」
仮にも冥界の主がそれで良いのかとも思うが元が人間の女性なら普通なのかもしれないな。確かに霊体系は俺も怖いし。
「余の軍勢は余の魔力によって作られている。無論、余自身も戦闘をする」
「魔力、ですか?」
「そうだ。背後に控えている四人も余の魔力より作られし者たちだ。軍勢は余の魔力が尽きるまで、とでも言っておこうか」
「具体的な数値はどのくらいかの?」
「さてな。余自身もそこまで大規模な戦闘になったことは無い故に分からん」
「不明瞭じゃの……」
「仕方あるまい。余にも分からぬことくらいはある」
「そういうことにしておこうかの」
グリモアとの会話が終了し、一拍後にデムクロイがシャンの方に向いた。
「ところで魔王殿、確認したいことがいくつかあるのだが良いかな?」
「は、はい!」
「まず、この同盟軍の最終目的はロンプロウムの制圧で良いのか?」
「そうだね。人間共に恨みを晴らすのに最も近い星がそこだからね」
「つまりは別の星でも良かったということか?」
「う~ん……それ以外の星があるならそこでもいいかな?」
シャンがポノルの方を見た。
「魔王様、私の伺いを建てる必要はありませんよ。全ては貴方が決めて良いのです」
「分かったよ。鬼神さん、さっきの問いだけど……僕としてはそれでも良いと思っているよ。ロンプロウムにしたのは手短な所にあったからっていう理由だよ」
「左様か。次に制圧した資源の分配は如何なされるか?」
「それは手に入れた所の物とするよ。……まあ、資源が残るとも思えないけどね」
目的が制圧でも内情は殲滅や根絶やしだからな。
「了承した。最後に我々が対立した場合だ。例えば我の軍が邪神軍と対立した場合はどうするのだ?」
「可能なら話し合いで決着をつけて欲しいね。それがダメなら……戦うしかないと思うよ? 結局、僕たちは実力でのし上がってここにいるんだしさ」
「左様か……。まあ、我としてはどの軍とも対立したいとは思わんがな」
「それは全員に言えることだな」
「うん。さてと、他には何かあるかな?」
シャンが聞くが、とりあえずはなさそうだな。
「それじゃ、今日は解散にするね。これからよろしく!」
「此方こそ」
シャンの一言で解散となり各々の重臣たちが軍部に戻っていく。
俺たちはこの場に残って話に花を咲かせようということになった。
勿論、話の内容は転移転生の経緯やその後についてだ。
ポノルは雰囲気から察してかシャンを立たせた。
「すまないな」
俺はポノルとシャンに会釈する。
「構いませんよ。私たちでは恐らく内容について行けませんので」
本当に申し訳なく思う。
シャンとポノルが退出してハーデスとツクヨミも退出しようとする。
「ツクヨミ殿はどうなされる?」
さらりと爆弾を投げたのは俺だ。言外に同じ転移者だと告げている。
司の実に分かりやすい反応が返ってくる。
「いえ、私如きが語れることなど――」
「ツクヨミ殿というのか。まあ元を正せば同じ境遇者同士、無理強いはしないが如何かな? ハーデス殿も一献どうだ?」
デムクロイがプレアも同じと見たのか誘っている。
「私は遠慮しておきます。それに会話に加わることはできませんので」
そういってプレアは上手く逃げた。
司は便乗しようにも俺の性でばれているので仕方なく残った。
「まあ座られよ。円卓の意味を知らぬものでもあるまい?」
デムクロイはそう言って酒瓶を何本も出した。
「では、お言葉に甘えさせていただきます」
「そう固くなることはない。皆も非公式の場だ、言葉を崩そうぜ」
その本人が言うが早く体勢も崩した。
「おっと、ついいつもの感覚で酒を出したが飲めない者はいるか?」
特に誰も手を上げない。吸血鬼皇女なんかはもろに子供っぽいが良いのか?
ま、種族差と思っておこう。
酒も注ぎ終わり、透き通ったグラスに酒が注がれて皆の手に行き渡る。
俺と司は仮面や衣装を外して楽な恰好になる。
「オホン。それでは世界を超えた同胞との出会いに乾杯!」
『乾杯!』
一口。ふむ、俺が飲んだ中でも有数に美味い。味は水に近い、つまり苦味がない。
フルーツ炭酸みたいだがアルコールが入っていることは体の火照り具合から分かる。
「ほう、美味い酒だな」
「確かに美味しいですねぇ」
二人の言葉に俺たちも相槌を打っておく。
「そうか? なら良かった。実は口に合わなかったらどうしようかと思っていたところだ。いやぁ、良かった良かった」
鬼神が強面を崩して陽気に笑う。こっちが素だな。
表情を改めて鬼神が酒を置いた。
「それじゃ、改めて鬼神こと前世名は加藤林太郎だ。享年は31歳独身だ。死因は転生トラックと言えば分かるか? まあ要するに軽トラに跳ねられたわけだ。そんでもってモテたい一心で転生したらこんなざまだ。今は結構充実した生活を送っているぜ」
「へぇ、ハーレムか?」
俺の問いに気を良くしたらしく陽気に頷いた。
「おう! 妻七ガキ十二計十九人生活だぜ」
「すげぇな!?」
うーん。ある意味勇者。男としては素直に尊敬する。
「へへっ、そういうお前だってやろうと思えば出来るんじゃねぇか? 顔は良いし権力もある。打算的なのが嫌いじゃなきゃ金でも落とせるぜ?」
「ははっ、流石に妻七は多いな」
「おうよ。まあ、当然生まれが悪かったから苦労はしたがな」
笑って受け流す。それじゃ俺も身分を明かそうか。
「さて、じゃあ俺の正体を明かそう。俺は邪神かつ勇者だ」
『勇者!?』
全員が驚愕する。当然だろう。思い切り敵側なんだからな。
「それに邪神って……すげえ確率だな」
「いや、もう確率論外じゃないの?」
「名前は朝宮嵩都。勇者の時はこっちで通しているし俺と同じように召喚された勇者があと四十二人もいる」
「なるほどな。どうりでさっきの軍議で敵の情勢をやけに知っているわけだ。それでお前さんは勇者の地位をかなぐり捨ててこっちについたわけだ。好きな女でもいるのか?」
「まあな。ま、言ってもいいか。さっきのハーデスっていう人だ」
「ほぉう。不愛想だと思っていたが意外だな」
「そうでもない。素顔見たら万人中万人が惚れる容姿だぜ? それにボクっ娘だしな。そして家庭的で献身的。気も合うとくりゃ付き合わない方がおかしいぜ」
「かぁ――――ッ、分かってるねぇ! 嫌いじゃないぜそういうの!」
女子三人を完全に置いてきぼりにしてテンションが上がっていく。
それにしてもこのおっさんと話しが合うな。面白い。
「で、歳は18。武器は聖剣と魔剣だ。趣味は料理だな」
「完璧かこの野郎!? うらやましいぜ! 俺なんか前世独身で趣味がエロゲと模型作りの独身まっしぐらだったんだぞ? くぅ~」
おっさんと盛り上がるのを他所に女子たちの紹介が始まる。
「童の前世名は西森咲夜という。歳は十六。この体は十五。そんなところだの。死んじゃった要因は病死。昔から体が弱くてね」
「ご苦労なさっていたのですね」
「いいのよ。それに今は自由があるもの」
「それじゃ次は私ねー」
司が間髪おかずに名乗り出た。
「童の出番もう終わり!?」
グリモアは――いや、全員に言えることだがギャップが凄い。
「私は霧谷司。歳は十七で武器は刀だよ。嵩都とは懇意にさせてもらってます」
「懇意……もしや二股かこの野郎!? ……いや、待てよ。魔王殿や犬耳の子も何やら気があるような雰囲気だったし……何股する気だ! このハイパーリア充様!」
「少なくても妻七にはならない……はずだぞ、リア充め」
俺たちの会話に司は少し白い視線を送ってきた。
司の次に上品に一礼したのはレイデメテスだ。
「次は私ね。私は鈴木明日香、死因は……まあ、自殺ね」
「彼氏に浮気されたとか?」
そこで聞けるのはデムクロイだ。俺には気まずくて到底出来まい。
「ううん。唯一の家族だった弟がよくわからない事件にあっちゃったの。多分死んじゃったんだろうなーってね」
「どういう事件なの?」
「んー、それがね、超が付くほどの大型直下型地震と隕石衝突に巻き込まれたらしくて弟が通っていた高校ごと吹っ飛んでたのよ。でも不思議なことに死体が見つかっている人と見つかっていない人がいたのよねぇ。ま、気づいたのは転生した後だったってわけ。もしかしたら弟は生きているかもとか転生先で会えるかもなんていう楽観視しているだけだけどね。早く死んだこと、ちょっとだけ後悔しているのよ」
――ん? 結構聞き逃せない話だな。
「おう、黄泉の。俺も知ってるぜ、それ。当時は結構有名なニュースになっていたからな。ま、その二か月後に俺は死んだわけだが」
「私はその後ね」
ということは皆相当な時差ズレがあるぞ。
「なあ、それもしかして神奈川にあった高校か?」
「ん? あー確かそうだな。どうした、お前さんもその口か?」
「いや、多分だが……それ、俺たちじゃねぇの? レイデメテスさんの弟の名前、鈴木博太とか言わないか? 違ってたら申し訳ないが」
全く確証はないが……苗字と時期と先ほどの証言からしてそんな気はする。
「――――ッ! 博太を知っているの! 何処? 何処にいるの!?」
先ほどまでの淑女っぷりは何処へやら身を乗り出して首をガクガクされる。
「お、おい、黄泉の! 落ち着け! 逃げやしないって」
デムクロイが割って入り、ブラコンのレイデメテスを引き離した。
「――そ、そうね。ごめんなさい」
「……オホン。で、博太はロンプロウムの世界にいる。それも勇者として呼び出されているぞ」
「なっ――……よし決めた! 明日会いに行くわ!」
「レイデメテスあんた馬鹿なの!?」
レイデメテスの天然っぷりにグリモアが突っ込みを入れた。
「確かにそうだな。第一どう説明するつもりだ? それに俺たちはこっち側の陣営だ。まさか軍を捨てて逃避行など出来まい」
「う……。ハッ、なら博太を攫って来ればいいのよ!」
「いやぁ……多分無理だと思うぞ。それ以前に場所分かるのか?」
「場所はあなたが知っているのでしょう? 博太は説明すれば分かってくれるでしょ」
楽観的にもほどがある。
「ダメかな?」
まあ、簡単に言えば俺が妥協してお膳立ててやればいい話。
「……その心情は分からなくはない。俺にも妹がいるからな。貸し一つでどうだ? ただしこちらにもセッティングがあるため三日の猶予をくれ」
「良いわよ。ありがと」
即断即答ですか……。こじらせすぎたブラコンだな。
……会ったらあったでもめ事が起きそうだがこの類の事は早期に決着をつけた方がいいだろう。
気になるのは、おそらくだがこの人は博太に対して姉弟以上の感情がある。
フェルノがいない状況で引き合わせれば血の繋がりがないことを理由に行き着くところまで行きそうで怖い。
それ以上にこの敵という状況をどうするかという問題も残っている。
……野暮はしたくないが癇癪起こして戦争――なんてことにもなりかねない。俺が裏で見守っておく必要があるだろう。
さて、話は戻って楽しい酒盛りだ。
「へぇ、俺たち以外にもまだいるのか」
「おうよ! 俺が見た限りじゃ地球人は5人。どれも外国人だったがな。言語統一されているから意思疎通も可能だったぜ。日本人はお前等が初めてだ」
「童のとこにもおったな。2人くらい日本人がいた気がする」
聞く話はどれも興味深い話ばかりだ。人脈から魔界情勢まで様々な情報を得た。
一番聞きたかったのは皆がどれくらい計画を知っているかだが彼らは魔神を復活させる手順までしか知らないようだ。結果的に全てを知っているのは俺、プレア、司の三人のみだ。
それと隣の部屋や入口付近でシャンたちが聞き耳を立てていたのでご招待した。
別に知られていけない情報はあまりない。シャンやポノルも前世が人間だったところはともかく転生には非常に興味を持っていたようだ。
魔王軍第一位のジェルズや悠木たち五名も加わって苦労標や馬鹿話に盛り上がった。
グラたん「楽しそうですねぇ」
グラたん「次回、だらしない魔王」
グラたん「ダラダラしたい今日この頃」




