第四十五話・巨竜侵攻
グラたん「第四十五話です!」
嵩都「いきなりバトルじゃないのか」
グラたん「何事にも段階がありますので」
博太「そろそろ行くぞ」
嵩都「おう!」
~嵩都
城に戻った俺は少しの仮眠の後、朝食を食べてギルドへ向かった。
「遅いぞ、嵩都」
ギルド前には亮平、鈴木、フェルノさん、プレアがいた。
亮平は軽装装備だ。中に鎖帷子を着込んでいるようだ。
鈴木は速度重視なのか頑丈そうな皮装備。丈が長くコートの様に見える。
フェルノさんはそれより軽い布装備だ。まあ、ただの布装備なわけがないと思うが。
腰には爪と思われるST印の武器を装備していた。
プレアも同じ布装備――というより普段着だ。武器は持っていない。おそらくストレージにしまってあるのだろう。髪はいつものポニーテイルだ。
「悪い。危うく二度寝しかけた」
「聞いたぜ、ST工房の危機を一人で救ったらしいじゃないか」
「役割分担したおかげだ。俺一人の手柄じゃない」
「謙遜……普通はそんなことできない」
「確かに。さ、立ち話はこれくらいにして依頼決めようぜ」
鈴木に促されて中へ入る。ギルド内はやはり朝から喧噪が漂っていた。
「今日の依頼はどうするの?」
プレアが聞くと依頼を眺めていた亮平が答える。
「そうだな……CかD辺りなら一泊して帰って来れそうだが――」
俺も手ごろな依頼を二、三枚見つける。一応鈴木にも聞いてみるか。
「鈴木はどこまでなら狩れそうだ?」
「なあ、今更だが博太で良いぞ?」
昨日も同じやり取りをした気がする。大典だな。
「じゃ、博太。お前やフェルノさんはどこまでなら行けそうだ?」
そこへすかさずフェルノさんから訂正が入る。
「フェルノで良い……一番年下だし」
「分かった」
「俺たちはBまでなら行けるぞ。そういう嵩都はどうなんだ?」
「俺はAでもSでも大丈夫だが……」
そういうと博太から白い目で見られる。
「あのな、Sは国家が立ち上がるレベル。Aは混成共闘しないと倒せないランク。Bは六人で挑める限界点なんだよ。それにそんな奴が出る前に国が動くから」
「そうだったな。依頼は博太たちに任せる。俺が選ぶと大変なことになる気がする」
「なら、Bで決まりだな。プレアさんもそれでいいか?」
「えっ?」
プレアの手にはランクSRと書かれた危険な書類があった。
見間違いようもなく『R』、つまりS級レイドの依頼である。
「……プレアさん? 一体それはどこから見つけたのでしょうか?」
「今、発注された最新の依頼だよ?」
亮平が長々と絶句する。博太もフェルノも苦笑いを浮かべている。
「それで、どんな依頼だ?」
聞くとプレアは紙をひっくり返して内容を読み上げる。
「内容は町防衛の依頼だね。竜の撃退もしくは討伐。種類は地竜種」
「報酬は?」
「報酬は活躍に応じて国王から出されるそうだよ」
「……だってさ。どうする、皆」
「嘘だろ。俺たちの初任務がSランクかよ……」
博太が嘆くように顔に手を当てた。
「その点、活躍すれば報酬は思いのままになる可能性がある――あ、亮平はこの点良いじゃないか。大手柄立てたらクロフィナさんと結婚できるかもしれないぞ?」
「なっ……うーん。確かにその可能性はある。これも運命だと思ってやってみるか?」
「フェルノはどうだ?」
「博太が決めたのならそれでいい……」
「フェルノ……分かった。少し危険かもしれないが受けて見るか」
「決まりだね。じゃ、名前書いて」
プレアが既に自分の名前を署名してある依頼表とペンを渡してくる。
俺が署名し、亮平、博太、フェルノが続いて署名していく。
「あと二人余っているけどどうする? このまま出す?」
「下手に人数増やすよりはいいだろ。これで行こう」
「分かった。それじゃ行ってくるね」
プレアはそう言ってカウンターに駆けて行った。
「とりあえずこれからの方針や詳しい詳細を知る必要があるな。適当に座るか」
「そうだな」
俺たちは空いている机を見つけて陣取った。プレアは俺が呼びに行った。
全員が座った所で改めて依頼表の内容を読み込む。
内容は巨竜がクエルトの町に進行しているためこれの撃退・討伐。
ランクSのためクエルトの町及び町の手前に軍一万五千を構える。
依頼を受注するにはC以上のランクが必要。
冒険者や受注者は本町、その手前で迎撃。
報酬は受注者全員に10000エル。手柄は受注時に配布された換算機に蓄積される。
これはストレージにいれておいても溜まるのでいれておくことを推奨する。
※現在、巨竜はクエルト以外の村や町を素通りしているため攻撃するなどの刺激は厳禁。
※開戦するのは巨竜がクエルトを攻撃した際に迎撃を開始する。
「なるほど。俺たちはその巨竜を撃退すればいいわけだ」
俺がそういうと亮平たちも頷く。
――ん? プレアがリンクを飛ばして来た。
重大な要件なのか脳内でのリンクだ。
『嵩都、魔王シャンより連絡。クエルトにて四番目を探知』
『本当か。ということは、これは偶然じゃなく――』
『そうだね。クエルトに到着後、ボクか嵩都が四番目を殺害・封印。対象は子竜』
子竜? いや、それって。
『……なあ、それどう考えても巨竜が子供を取り返しにきているよな?』
『ボクもそう思う。対象の場所は分かっているから嵩都に教えておくね』
プレアのリンクから対象の正確な場所が分かる。
『魔剣はボクのストックが二本あるから一本渡しておくね』
『分かった』
プレアがストレージを開いて慣れた手つきで俺にトレードを送ってくる。
俺はそれを受信して魔剣を受け取る。魔剣名はニーヴェンベルクというらしい。
『魔剣自体はどれに封印してもいいからね。大事なのは順番だよ』
分かっているよ。それだけ言ってプレアとのリンクが切れる。
「必要なのは武器と消耗品ぐらいだろう」
亮平がそう提案すると博太が応じる。
「武器は、俺たちは固有武装があるし砥石は必要ない利点もある」
確かにそうだ。その点、俺たちは体力尽きるまで戦うことが出来る。
「回復薬や閃光弾が必要だね。ボクの場合は矢も必要だけどこれはストックがあるから大丈夫」
「プレアは弓使いなのか?」
「言って無かったっけ? そうだよ。弓も矢も自作を使うよ」
「自作……自分で作ったものほど安心なものはない……」
「そうだな。そういえば俺たち、使う武器とか良く知らないよな。良い機会だし買い出ししながら情報交換しようぜ」
博太がそう提案する。確かに連携する上で何が出来るか、それに使う武器を知っておくのは大事なことだ。賛成する。
「そうだな」
俺が賛成しながら立ち上がるとそれに続いて博太、亮平たちも立ちあがる。
少しずつ移動しながら話す。まずは亮平だ。
「俺が使うのは剣だな。聖剣エクスカリバー。雷技が多いのが特徴の近接型だ。支援や回復も少々出来るが攻撃の方が得意だな」
次に俺。
「俺も同じ聖剣だ。聖剣ヴァルナクラム。俺の武器は風属性技で近中遠どれでも得意だ。俺はどの位置でもいいぜ。後は料理が得意」
続いて博太。
「俺の武装は同じく聖剣。アロンダイトだ。主に近と中距離で水属性攻撃だ。魔法も出来るが小技が多いな」
次にフェルノ。
「私は爪。接近型。特殊効果はない。小回りが利くのが特徴……魔法は……苦手」
最後にプレア。
「ボクは弓だよ。最大で五kmくらいまでなら飛ぶよ。スキルを使うと一kmが限界だけどね。矢は鉄鏃、火矢、毒矢、眠り矢とかの種類があるよ」
その言葉に俺たちの顔が一斉に青くなる。
「通常で五km……シャレにならない距離だな」
というかスキル使った方が距離が縮むとか洒落にならんだろ。
「五kmだと威力はどのくらいまで残るんだ? 到達時間は?」
「平均的に言うと岩を貫通するくらいかな? 時間は十秒くらい」
『……』
怖いなぁ……。俺が普通に最大加速して飛行しても十五秒はかかるぞ。
ちなみに邪神時だとほぼ瞬間移動になるけどな。
ちょうど道具屋についたので回復薬や軽食を購入する。
「ん? 嵩都。爆薬も買うのか? 巨竜相手だと効果が薄いと思うが……」
「爆薬は足止め程度にしか考えてない」
「そうか」
「そういう亮平だって毒液を使うつもりなのだろ」
「まあな。竜なんて初めて戦う相手だし何が効くか分からないからな」
「そうだな。竜といえば固い装甲が鉄板だ。貫通できるほどの装備じゃないと――」
ふと俺たちの会話を耳にした冒険者たちが勝手に騒めき始める。
「……まさかこいつらも竜を知らないとか言うオチか?」
「……さあな。買う物買って行こうぜ」
「そうだな」
販売員の元へ資材を持っていき、購入した。
そして所々回り、亮平が防具に夢中になっている間にこっそり宝石店へ入り、結婚指輪を購入した。おかげで全財産が無くなりかけ、まさに排水の陣。
この依頼で何としてでも手柄を上げ、報酬をもらう必要がある。
そう考えつつプレアたちと合流し、俺たちは馬を借りるために東門付近にある借り小屋へと向かった。
「いらっしゃい。アンタたちも巨竜迎撃にいくのかい?」
少しご年配の叔母ちゃんだ。そう聞くからには俺たち以外にも既にクエルトに向けて出発した組みがあるのだろう。
「そうですね」
博太が交渉に応じる様だ。フェルノは馬と話しているようだ。獣人だから出来るのだろう。
「頑張りなよ。それで馬は五頭必要かい?」
叔母ちゃんが俺たちの人数を見てそういう。
「俺は要らないぞ」
「ボクもいらないよ」
先んじてそう言っておく。俺とプレアは飛べば良いし。
「分かった。俺とフェルノは相乗りで良いから二頭お願いします」
「博太、この子とこの子がこの中で速いよ」
フェルノが指差したのは体が白い馬と他より一回り大きい赤い馬だ。
「おや、狐の子は彼女さんかい? じゃ、少しおまけしておこうかねぇ」
「ありがとうございます」
「はいよ、二頭で五千エルのところを三千に負けておくよ」
叔母ちゃんがそういうと小屋の奥から馬の整備をしていた叔父さんが二頭を連れてこちらにくる。鞍はついているようだ。
「若いのはいいねぇ……青春だ。気を付けて行きなよ」
叔父さんにそう言われて博太は大きく頷いた。
「はい!」
博太が料金を払い、亮平が博太に自分の分を払った。
叔母ちゃんたちに見送られて馬を連れて東門を出た。
博太とフェルノが白い馬に乗り、亮平が赤い馬に乗った。
「博太……乗馬出来ないの……?」
「すまん、初めてだ」
先程の威勢はどこへ行ったのやら。フェルノに捕まっている。
「うおお! 楽しいな!」
その点、亮平は赤兎馬(仮)を乗り回している。
「亮平、お前乗馬経験あるのか?」
博太がそう聞くと亮平がこちらに来て赤兎馬を止めた。
「いや、今日が初めてだ。割と簡単だな」
「ヒヒーン!」
赤兎馬も嘶きをあげて満足そうにしている。
これも一種の才能なのだろうな。
「……博太にもあれくらいの根性が欲しい……」
「……努力します」
「じゃ、行こう! 目指すはクエルトの町!」
『おお!』
プレアの号令で皆が馬を走らせる。
俺とプレアは二頭に合わせるようにゆっくりと飛んでいる。
「うひゃぁああああ!!」
情けない声を上げているのは博太だ。予想以上の速さに驚いているのだろう。
フェルノは亮平と競争しているらしく二頭も競争心を煽られている。
「楽しそうだね。ボクたちも馬にすれば良かったかな?」
「すまん、俺も経験ない。無様を晒すくらいなら乗りたくない」
「何事も経験だよ、嵩都」
「プレアは経験あるのか?」
「ないよ」
……乗ったら間違いなく俺たちが足を引っ張ることになりそうだ。
朝早くに出たのが功を奏し、また二頭を限界突破させるほど走らせた二人のおかげでクエルトの町まで半分を切った。
巨竜が来るのはあと二日後だ。明日にでもつけば良いだろう。
今は夕暮れ時。二頭も疲れ切っていてもう立ち上がる事さえ出来ないようだ。
「仕方ない。今日はここで野宿をしよう」
亮平が赤兎馬を見てしょうがないというように提案した。
「分かった。この中で料理出来るのは誰だ?」
まずは担当わけだろう。俺は料理でもなんでも出来るから問題はない。
「ボクは出来るよ」
「私は……修行中……」
「俺はボチボチだ。嵩都には及ばない。博太はどうだ?」
「自慢じゃないが食材を焦がすほどの腕前だ」
「自慢できないな、それは。じゃあ嵩都とプレアさんが料理でいいな。期待しているぜ」
「任せて置け。じゃあ、食材を取りに行ってくる。夕食は何がいい?」
「シェフのお任せで」
亮平がそういうとプレアが希望を言う。
「じゃ、魚料理がいいな。川もあるし」
「分かった。俺は魚取るからプレアは山菜を頼めるか?」
「はーい」
皆と別れ、俺たちは二手に分かれた。
~亮平・博太・フェルノ
嵩都たちと別れた後、三人は何が出来るかの確認をしていた。
「料理はそれでいいとして博太とフェルノは何が出来そうだ?」
「私は薪拾いと水汲みくらいしか出来ない……ごめん」
フェルノが少し俯き、そんなことはないと博太が髪を撫でた。
「分かった。博太は?」
「フェルノがそれをするならコテージ作りでもするか」
「作り方知っているのか?」
亮平が意外そうに確認を取ると博太はドヤ顔で言い放つ。
「亮平、ここは異世界だぜ? 寝るのに困らない位の折り畳みコテージが道具屋に売っていたのを見てなかったのか?」
「マジか。盲点だったな」
「ただし、本当に寝るため専用だから薪の上だ。寝床は作らないと行けない」
「なるほど。なら、俺たちでそれを作るか」
「おう。それじゃ、手分けしよう。薪も俺たちが取ってくる」
「……分かった。私はここで待機ね」
「ああ。それじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
亮平、博太は森へ、フェルノはそこへ残り水魔法を使った。
嵩都「料理の腕が鳴るなぁ」
グラたん「楽しそうですね」
嵩都「これでも料理人だからな」
グラたん「飯の勇者ですか」
嵩都「それは違う」
プレア「嵩都~、お腹空いたよ~」
嵩都「いま作るよ」




