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紅森の即興小説集 ~2014年の挑戦100~  作者: 紅森がらす
1時間挑戦編(主に即興バトル)
96/100

森のお化け

制限時間:1時間 文字数:1376字

学校の友達の誘いも断って、ゆきちゃんは森の奥深くへやってきました。

枯葉のすっかり落ちた森の道をとぼとぼと歩いていきます。

ひゅうっと通り抜ける風は、マフラーをしていても、とっても冷たいです。

「おーい」

と試しに呼んでみても、誰も返事を返してくれません。

冬休みになったら、森のみんなといーっぱい遊べると思ったのになぁ。

森の動物たちは、ゆきちゃんが学校のお友達と遊んでいる間に、みんな冬眠に入ってしまったのでした。

おしゃれなリスのスズちゃんにはクリスマスツリーの飾りのクルミを選んでもらおうと思ってたのに。

力持ちのクマのクースケくんにはお餅つきに来てもらいたかったのに。

ゆきちゃんは、冬休みにやりたかったことを一つ一つ指折りで数えては、ため息をつきました。

白い息はぼこぼこっとしたお化けの形になって、ゆきちゃんの目の前に立ちふさがりました。

「ひゃ!」

ゆきちゃんが後ずさると、お化けはにやりと笑いました。

「みーんな、いなくなっちまったな」

「いなくなってないよ、寝てるだけだよ」

ゆきちゃんは思わず言い返しました。

「そうかな? みんな、いつの間にかいなくなったんだろう?」

「それは、急に寒くなったから……」

「そうじゃなくって、お前に人間の友達が出来たからだろ」

ゆきちゃんは黙り込みました。運動会で頑張った頃から、仲間に入れてくれる子が出来て、楽しくなってきたけど、でも……。

「そいつらに森のみんなのことを話したことはないよな? なぜだ?」

お化けはゆっくりとゆきちゃんを問い詰めます。

ゆきちゃんは歯を食いしばって、何も言うまいとしましたが、歯の隙間から息がすうすう漏れて、お化けが大きくなっていきます。

「お前だって分かっているんだろう」

お化けは得意げに大口を開いて言いました。

「しゃべる動物さんたちなんて、元々いるはずないんだよ」

いや! いや!

ゆきちゃんはうずくまって耳を塞ぎました。

誰か、冬眠から帰ってきて! 助けて!

その時でした。

「そいやー!」

と掛け声と共に虫取り網が降ってきて、お化けを捕えました。それは、学校のお友達の一人、みさとちゃんでした。

「まったく、ゆだんもすきもない!」

「……どうしたの、みさとちゃん」

ゆきちゃんが恐る恐る尋ねると、みさとちゃんはしぶしぶと口を開きます

「このお化けはね、私の……」

「内緒のお友達だよ」

お化けが口を挟みました。

「みさとちゃんにも森のお友達がいたんだ!」

ゆきちゃんが嬉しそうにいうと、みさとちゃんは

「とんでもない!」

と言って、お化けをぐりぐりと踏みつけました。

「これは私の敵! ゆきちゃんを怖がらせるなんて」

「いてっ、だって動物たちのせいでこいつはみさとと遊ぶのを断ったんだろ。完全にいなくなればこいつはみさとのものだぞ」

「そんなのうれしくない!」

ゆきちゃんから見ると、お化けとみさとちゃんは喧嘩をしながらも仲が良さそうに見えました。

「ちょっと羨ましいな」

「ええっ?」

みさとちゃんが驚いてゆきちゃんを見返しました。

「私は森のみんなと喧嘩したことないから……」

「ゆきちゃんって変」

「そうかなぁ」

ゆきちゃんは笑いながら、冬眠中のみんなに年賀状を書こうと思いました。

みさとちゃんとお化けのことも書いてみようかと思っています。

お題:愛すべき冬休み 必須要素:哲学的な思想

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