表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅森の即興小説集 ~2014年の挑戦100~  作者: 紅森がらす
1時間挑戦編(主に即興バトル)
PR
90/100

制限時間:1時間 文字数:1345字

商店街に買い物に来たら、おびただしい数の魚が一点に群がっていて、ぎょっとして足を止めた。

他の通行人はちらりとそれに目をやるだけで通り過ぎていく。まるでバーゲンでハッスルするおばちゃん達でも見るようなほんのり冷めた視線。

魚がこんなに集まっているのだから余程いいものが先にあるんだろうか、と思って目を凝らしてみても何を求めて魚がこんなに必死なのか分からない。

魚たちを掻き分けて、その先を見てやろうかと思ったけど、でもなあと思い直す。

バーゲンセール百戦錬磨のおばちゃん達の戦場に、若いくせに体力ない私がうっかり足を踏み入れてしまった時の場違い感は半端なかった。ましてや今回魚だぜ。

人間は誰も魚の群れに近づこうとしない。たぶん、魚しか興味のない商品が向こうにあるのだろう。

つま先立ちで立ってみたり、下から覗いてみたりしたけど分からない。うーん、私がもっと身軽だったらなぁ。

そう思っていると、小さな白いものがスッと私の横に現れた。チリン、と首輪の鈴が鳴る。隣の家のミーコだ。そうか、ミーコに頼めば何があるのか見てきてくれる……、そう思って頼もうとした途端、

「ミャア」

ミーコが舌なめずりしながら魚の群れに飛びかかっていった。そっか、ミーコにとってはごちそうの塊だもんねあれ。ミーコは魚の尻尾に食らいつくが、魚は他の魚とぴったりくっついていて分離しない。

頑張れミーコ。ミーコは魚の塊に思いっきり振り回されながらも、魚を口から離すまいとしている。やがて、魚の群れに呑みこまれていき、白い尻尾だけが塊の尻尾となって飛び出しているだけになった。

「ミーコ、ミーコ!」

私は白い尻尾をきゅっと掴んだ。すると握った手が魚の中に引きずり込まれるように滑り込んでいく。

ぬめぬめした感覚が手首、腕、肩を這っていき、ついに頭が魚の群れに突っ込んだ。

いつの間にかミーコの尻尾は私の手から抜けていて、完全に姿が見えなくなっていた。

生きた魚の生臭い臭いが鼻を刺激する。眩暈がした。

ミーコなら嬉しい状況でしょうけど……。

ぴちぴちと無数の魚の尾ひれが私の頬を叩いて思わず目を細める。

「うーん……」

この先一体、何があるんだろう。長い尾ひれ、短い尾ひれ、末広がりの尾ひれ、小さな尾ひれ……。様々な尾ひれにピチピチ頬を叩かれながら、私は異様に大きく赤い尾ひれを見つけた。白い模様が入っていて、優雅に揺れている。私はその尾ひれの主の魚を一目見ようとして、目を見開いた。

そこには、

『閉店セール』と白抜きで書かれた赤い旗がはためいていた。

「……え?」

この魚達の目的はこの閉店セールだったっていうの……?

「な、なーんだ……」

そう呟いた途端、魚が全ていなくなり、みすぼらしい洋品店だけが残った。ドアの向こうの店主らしき人とばっちり目が合い、思わずワゴンに乗っていた変な色のセーターを買ってしまった。

「はー」

余計な紙袋が増えた手元を見て溜息をついていると、ミーコが活きの良さそうな魚を一匹咥えて軽やかな足取りで私を追い越していく。

「あ、いいなぁー」

私も一匹くらい捕まえておけばよかった、と思いながらミーコを追いかけて帰ることにした。

もちろん、閉店セールをやっていた店はいつまで経っても閉店することはなかった。

お題:ダイナミックなデマ 必須要素:一人称

投稿時ほんの少し推敲時間が足りなかったせいで未完に終わったものを修正したものです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ