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紅森の即興小説集 ~2014年の挑戦100~  作者: 紅森がらす
1時間挑戦編(主に即興バトル)
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89/100

制限時間:1時間 文字数:1281字

ラノベ作家を目指すワナビ、野辺来斗は次の賞に出す作品のアイディアを出そうと頭を捻っていた。

「やっぱり……冴えない少年と不思議ガールが出会うボーイミーツでセカイ系だろうか……」

不思議ガール。ツンデレ? クール? ツインテ? ショート? 妹?

迷う迷う。来斗の頭にわらわらと萌えっ娘たちが現れた。

「違う違う……」

来斗は頭を振って美少女達のイメージを振り払った。

これは煩悩がイケナイのかと思って神社で座禅を組んでみた。

「むう…………ハッ!」

何かが閃くかと思って目をカッと見開くと、来斗の目の前に白髪の紳士が現れた。

「あんたは……ひょっとして神か? 小説の」

「いんや、残念ながら違うな」

紳士は髭を引っ張りながら答えた。

「神だったらワシが会いたいところだ」

「ということは」

「ワシはしがない小説家だよ。純文学と言っちゃ聞こえはいいが鳴かず飛ばず……」

「いや! でも小説家に会えただけでもオッケーだ! 俺ついてる!」

紳士は気だるげに

「眩しいな」

と呟いた。彼の背後には来斗と同じくらいの年だが陰気な若者たちが幽霊のように彷徨っていた。

「えっと、後ろの背後霊の方々は……?」

「……ワシの書こうとしている登場人物候補だ」

「おおっ! ……おぅ」

来斗は思わず座禅を解いて立ち上がったが、辛気臭い彼らが出てくる小説なんてあんまり読む気しないな、と思い直した。

ところで純文学作家が登場人物を引き連れているってことは自分は? と振り返ってみると、さっき振り払ったはずの美少女達が……来斗のど底辺画力なハンコ絵(擦れた鉛筆画)でずらりと並んでいた。

「お、おぅ……」

「登場人物の魅力で引っ張れない以上、ストーリーに魅力がないといかんのだろうな」

「そうっすね……」

来斗は後ろのハンコ絵達に

「なあ、君らどんな話がいいと思う?」

と聞いてみた。

「ダレガヨンデモオモシロイハナシガイイナ!」

ハンコ絵達は来斗の裏声で言った。

「うわぁきもい……」

来斗は自分の声を録音で聞いた時以上にドン引きした。

「誰が読んでも面白い話、か」

純文学紳士は遠い目をした。

「ワシの話は誰も分かってくれない」

「ヴィルチャバー フチペー」

陰気な若者達がゾンビ語を発した。

「ああうん、解読できないや」

来斗は納得した。

「どうしたら、ワシらの小説は面白くなるんだろうな」

「……このまま散歩にでも出ましょうか」

二人はあてもなく歩き始めた。

じっとしているよりは幾分か頭は動いたが、思い浮かぶストーリーの切れ端は、どれも取るに足らないものばかりだった。

書きもしない没が増えていくばかり。メモ帳を取り出す気にもなれない。

脳内で塗りつぶした原稿は、黒雲のように二人の頭上に被さった。

「あーあ、小説を書くのにも王道があればいいのに」

「全くだ」

「このままずっと歩いていたら、たどり着けるのかな、王道」

「分からん。分からんがワシらには歩き続けるしかないだろう」

紳士はステッキで道の先を示した。そこには希望とも絶望ともつかない明日がうっすらと漂っていた。

お題:綺麗な小説訓練 必須要素:マクガフィン

マクガフィン知らないので調べたら、登場人物にとって重要だが作り手的にはなんとでも取り替えが効くもの……と判断し、「王道」を追求する形にしてみたかったけど……という

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