勢いを削ぐ
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俺のことを「だむちゃん」と親しげに呼んでくる女、いぶきに告白したが、あっけなく振られた。
俺がどうとかではなく、「男」をどうしても好きになれないそうだ。今まで「元恋人」の話はよく聞いていたが、実はそれはみんな女性であったらしい。
「ぐ……」
いっそのこと、襲って男を分からせてやろうかと思いかけた。
「あ、そうだ」
俺の内なる高ぶりを知ってか知らずか、いぶきはぽんと手を叩いた。
「だむちゃん、女の子になっちゃおうよ?」
にへらっと笑った。
「ああ?」
いぶきは俺との距離をつめ、そして……俺をいとも簡単に押し倒した。
気がつくと全身を拘束具に囚われていて、俺は必死にもがいていた。
「お肌が傷ついちゃうよ」
「俺に何をする気だ! 放せ!」
「ねえだむちゃん、「きょせい」って知ってる?」
ああ、為すすべもなく内心怯えて吠えている俺の態度のことだろ。
――気付きたくない。気付けば、実行される気がする。
股間が強張っているのを感じる。気を抜いたら逆流してくるような恐怖を覚える。
「ふふふ」
いぶきが手に持っているものは……鋭利な凶器などではなく一安心した。
パステルイエローの電気シェーバー。
カチリと小さく音がして、ブイーンと振動音が響き渡った。
「これでね、わたしここを剃ったの」
いぶきがシェーバーを持つ手と反対側の肘を上げ、脇の窪みを俺に向けてきた。
青い剃り跡と、コーンポタージュのような臭いが近づいてくる。
思わず俺が目を閉じると、そのまま頭を抱きかかえられた。
「だむちゃんも剃っちゃおうね」
頭を念入りに撫でられるような感覚が続いたかと思うと、俺の髪がばさばさと落ちてきた。
「!?」
「大丈夫だよ、シャンプーしてきれいきれいにしてあげるからねー」
「あ、ああ……」
記憶の一部まで切り取られたかのように俺は朦朧としてきた。
シェーバーは俺のしばらく剃っていなかった髭を落とした。いぶきに口答えする気が失せた。
腋毛が剃られると、腕の力がなくなりだらりと垂れさがった。
胸毛が剃られると、男の尊厳が漂白された。
シェーバーが股間へ降りてきた。毛の無くなった個所を彼女の指が掃うと、肌に空気が触れ、そこだけ生まれ変わっていくように感じた。
俺の陰茎は縮れた鬱陶しい陰毛を押しのけるように直立した。
はやく、早くこの周りも刈ってくれ! ただ、目で訴える。
「うん、分かった」
いぶきがシェーバーを振り上げた。いや、あれはシェーバーか?
ブイーンと唸り続けるシェーバーの刃がぐりんぐりん回転している。
振り下ろされたローラーが、俺の股間を開けた大地にしていく……。
お題:同性愛のつるつる 必須要素:ロードローラー
なんだか嫌な方向に行きましたね




