脅迫
制限時間:30分 文字数:949字
私はすがりつくように受話器を取った。
「息子は! 晴樹は無事なの?」
刑事さんに(時間を引き延ばすように)というジェスチャーをされているけど、私は息子の状態が早く知りたくてたまらなかった。
ボイスチェンジャーを通したらしき誘拐犯の無機質な声が聞こえる。
『今んとこ、元気だぜ』
「声を、声を聞かせなさいよ」
ああ、晴樹!
『ままー』
「晴樹! 元気?」
なんか違和感ある声だけど……、晴樹?
『だから元気だって言ったじゃんかよ、まま』
誘拐犯が呆れた声で続ける。ああっ、ボイスチェンジャー使って騙したのね!
「紛らわしい! 本物の晴樹を出しなさいよ!」
私は机をバンバン叩いた。刑事さんが怯えたが気にしない。
『今ちょっと、手が離せないっていうかなんていうか……』
歯切れ悪く誘拐犯が言う。
「分かった、その場に晴樹がいないのね! 誘拐っていうのも嘘なんでしょう! 電話切るわ!」
『ええっ、おいおいおい』
(おいおいおいおい)
刑事さんも同時に小声で慌てた。
『本当だ! 電話口には出せないが、信じてくれ! 頼む』
悲痛な叫びに、ちょっとだけ付き合ってあげることにした。
「あなたの要求は何?」
『ああそう、それだ! 百円! 寄越せ!』
「……百万円?」
と聞き返した。刑事さんが頷いた。(手配おっけー)
『百円がいい』
「はあ? 百円だけって、まだふざける気?」
私は受話器を放り投げようとしたが刑事さんが首を振りながら財布から百円玉を出した。
……そんな普通の百円でいいのかしら。
『ではお菓子の丸井店の前にて三時……に人質と金を交換だ……そうです』
「そんな人通りの多いところで大丈夫?」
私は犯人的な都合を考えて言ったのだけど、犯人は「ちゃんと待ち合わせ出来るか」と捉えたようだ。
『合言葉は【あげぽよ~】で!』
必要なことは全部聞いた! ガッチャーン! 私は盛大に受話器を投げ置いた。
丸井店前で私は叫んだ。
「あげぽよ~!」
犯人らしき男が挙動不審な行動をとっていて、そいつはあっさり後ろの刑事さんに手錠を掛けられた。
しかし、黒幕は別にいた。私はそれに気づいていた。
「こら! 晴樹! 何やってんの?」
「ちぇー」
店の陰から出てきた晴樹は駄菓子の詰め合わせを手に、舌打ちをした。
お題:生かされた息子 必須要素:あげぽよ
挑戦時は50本目、折り返し地点にあたるので記念に久々に30分で挑戦しました




