【悲報】
制限時間:30分 文字数:755字
絵師・MIKAGEの死の報道はマイナス2ちゃんねるからボディブックまで、ネット中のあらゆるサイトを駆け回った。
ガセを疑う者もあった。だが、本人自作のアイコン遺影が出回ると、皆諦めの溜息をついた。
MIKAGEはネオピクシブでトップランカーの名をほしいままにしており、信者も多数存在した。
熱狂的な信者はコメントやタグのお布施も欠かさなかった。MIKAGEが死んだ後は遺作となった最後の投稿作にイラストとは関係ないコメントがずらずらと並んだ。
信者たちは悲しみに明け暮れたが、最終的にMIKAGEは二次元の世界で神になったのだ、と信じることにした。
アンチも信者に負けないほどいた。
アンチはざまあと思った者もいたが、あれだけ莫大な画力を持つMIKAGEなのだから悪霊と化して祟られるのではないかと怯える者も多数だった。
そんなMIKAGEの通夜が葬儀サイトで行われる。
電子線香が暗い画面に次々と光を灯し、MIKAGEの冥福が祈られる。
絵師達が続々と薔薇や百合のイラストを献花する。生前のMIKAGEの好物であった。
弔いに来た者たちは、MIKAGEがもうこれらの品々を「おいしいです!ムシャア」とがっつくことが出来ないことを悲しんだ。
呼ばれた住職は緑の髪を頭の上で二つに結っており、最近の葬儀では珍しくなった喪服を着てシマウマを連れていた。住職は鎮魂歌を歌い上げた。
画面がエコノミー画質になっていく。
参列者は皆マウスのホイールを撫でまわし、故人の冥福を祈った。
ランカーを目指す絵師たちはこぞってMIKAGEアバターの足の爪を全て剥がして煎じて飲み、血を啜った。骨までしゃぶる者もいた。
――やれやれ、これじゃあ転生もままならないや。葬儀を俯瞰していたMIKAGEは現実世界に還ることにした。
お題:絵描きの葬式
初めての30分挑戦。この一回しか今の時点ではないですが…




