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絶望チョコレート工房

制限時間:15分 文字数:509字

亜里沙は手に持った7本目の包丁を振りかざした。

「最高の手作りを、ごちそうしてあげるね。待ってて木田くん」

「……彼も大変だな」

私はふう、とため息をついた。亜里沙の手つきは、覚束ないってもんじゃない。

ああいうのを、本来の意味の確信犯っていうんだ。

亜里沙は何かの儀式のように踊り狂いながら包丁を研ぎ、天井から吊り下げたマグロに適当に突き刺して垂れた血をボウルに落とし続ける。

何度か止めようと思ったが、亜里沙は何かにとり

「これが正しいの! これでいいの!」

と頑なにそれを拒み、ついには先生として呼んだはずの私を縛り付けてしまった。

私は亜里沙のグロテスククッキングショーを眺めるしかないのだ。

「……まあ、愛情がこもってはいるかな?」

私はそう、無理やり納得しようとした。しかし亜里沙は突然ボウルに向かって嘔吐した。

「ぐええ~」

わあ。髪の毛や唾液を手作りに混ぜると聞いたことはあるけど吐瀉物かあ。

私は見ないふりをすることにした。

絶対見た目からして、変な出来になると思ったのに見た目だけは至極まともなチョコレートが出来て私は驚愕した。

木田くんは嬉しそうに亜里沙のチョコを受け取った。


私、知~らない。

お題:絶望的な真実 必須要素:信仰

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