曇りのち死亡
制限時間:15分 文字数:542字
「保険に入りたいです!」
雲が真っ白な顔を曇らせて切実に言ったが、電話相手の保険屋にはいまいちそれが分からなかった。
「え、あー…雲さん? CMで喋るアヒルとか鼻が取れるコアラとかいるけど、ああいうマスコット系希望? うち間に合ってるんだよなー」
「そうじゃなくて! 僕が保険に入って家族の雲にお金が入ってくれればと思いまして」
「雲に家族とかいるの? え? 細胞分裂?」
「細胞があるかどうかはわかりませんが分裂して増えてはいます!」
「じゃあ分配大変じゃん。こっちもそんな計算してられないし」
「それはこちらでなんとかします!」
「雲の遺産相続でもめたらそれこそ大嵐だね」
保険屋はそういえば、と続けた。
「雲ってそもそも死ぬの?」
「体から致死量の水分が流れでたら死にます」
「失血死かー。じゃあ何、雨今降ってるけど、これ雲的に言えばリアルに血の雨が降ってるってこと? やなこと聞いたわー。滅入るー」
「はい、そうです。僕が死にかけてるところです!」
「ええっ、雲さん本人が死にかけてるの? なんでまた…」
「さっき飛行機に激突されました! 死因は交通事故です」
「わー雲のわりには軟弱だなー。やっぱり保険はナシってことで」
「そんなー」
雲はどんよりと落ち込んで死んでいった。
お題:死にかけの雲 必須要素:自動車保険
個人的に気に入ってます。これに関しては必須がよくはまった




