城の中の異分子
自室に入るなり、ライナンは荒々しくカウチに腰を下ろした。
「信じられない!運ばれて来た方が平民だったなんて!!あんな人間が同じ城で生活してるなんて屈辱だわ!!」
「ライナン、落ち着きなさい。私も驚きましたけど陛下が正式にお迎えになったんだから仕方ないわ。そのうち出て行かれる方なんだから、こちらから関わらなければいいのよ」
レッテシームはライナンの隣にそっと座ると、慰めるように彼女の肩を抱いた。
彼女達に取って王族であることは誇りであり、城に住まうことはその証でもある。
そこに突如やってきた異世界の人間。しかも国王と同等、或はそれ以上の権限を持ってこの国に存在しているのだ。
「でも卑しい身分の人間が王族と同じ様に肩を並べるなんて、冗談じゃないわ!それにあんな噂になるくらいですもの、あわよくば王族と関係を結んで城に居座るつもりなんだわ!」
「確かにあまり分別のある方には見えなかったわね。レシュカにもあまり近づかないようによく言い聞かせておかないと」
「容姿も普通でしたし、教養があるようにも見えなかったわ。たかが異世界から来たというだけで特権を与えるというのもどうかしてるのよ。ねぇお母様、陛下に頼んであの人に城下へ移って頂きましょうよ。傍系の方のお邸にでも。それなら一応王家の保護の下という面目も保てるでしょう?」
王族は平民の上にあるべくもの、そう考えるライナンにはどうしても平民である運ばれて来た人間が同じ城に住まうことが我慢ならないようだった。
レッテシームとて娘の言いたいこともわかる。
この城において、あの人間は完全な異分子だ。
「でもあの人間が陛下をも超える特権をお持ちなのは確かなのよ。それを傍系のところへなんてやってごらんなさい。いいように利用して王位の簒奪を企てるかもしれないわ。どうしてもと言うなら王族の居住区へは決して入れないように近衛に言っておくことにしましょう」
「お母様がそうおっしゃるなら。ああ、早く『理由』をなんとかして帰ってもらいたいものね」
もし『理由』を片付けて尚も城に居座るつもりなら、どんな手を使ってでもここから追い出してやる。
ライナンは未だ落ち着かない心の中で、それだけは固く誓った。