3日目 7
再びお城の中を移動、移動。
今回はさっきよりも短く済んだ。
それでも私はもう道がわからないけどね!
通されたのはふっかふかの絨毯が敷き詰められた、重厚な雰囲気の部屋。
私に用意された部屋と違って装飾も多いし、高そうな壺もある。
置いてある調度品も機能性よりは装飾性重視っぽいし。
部屋の中央には応接セットだろうか、木製らしい長いテーブルを間に向かい合わせに4脚ずつのチェアが並べられている。
そして天井には見事なシャンデリアが!初めてこっちでちゃんと照明器具を見た気がするわ。
部屋の中には4人の男女が立っていた。男の人が3人、女の人が1人。
「お待ちしておりました、運ばれて来た方。どうぞお掛け下さい」
そう言って3人の男の人の中でも一番若い、40代くらいの人が席を勧めてくれた。
テーブルを挟んで向こうに4人、こちら側にディゲアさんと私が座る。
「私たちはこのシューディッカ王国の元老を努めております。右から西元老のレイジエ、東元老のニージーク、北元老のバルデナ、そして私が南元老のエイカーと申します。一度に名前を覚えるのは大変でしょうから、それは追々」
西のレイジエさんはくるくるの白い髪に白いヒゲ。誰かに似ていると思ったらサンタクロースに似ているんだ!なんか一気に親近感。優しそうなおじいちゃんって感じ。
東のニージークさんは紅一点。年は50代行ってるかなーという微妙なところ。襟口の大きく開いたドレススーツや良く手入れされた赤毛は見る人によっちゃ35、6歳?なんて言いそうだけど私の目はごまかされないよ~。
北のバルデナさんはいかつい体つきに短い墨色の髪で、いかにも軍人ぽい。目つきも鋭いし。年はニージークさんと同じくらいかな?
そんでもって南のエイカーさんは薄茶色のさらさらの髪の毛を軽く流しただけの爽やかな雰囲気。この4人の中では実年齢だけでなく格好も一番若い。黒っぽい襟の高い上着に同素材のベストとスラックス、そして水色に銀糸でピンストライプの刺繍のされたシャツを着ていて、政府高官よりも青年実業家と言われた方がしっくりくる。
「まずは貴女が本当に異世界より運ばれて来たのかどうかの確認をさせていただきます。中には特権を目当てにその名を騙る輩が居る可能性もありますので、通例だと思って下さい。ではレイジエ、照合をお願いします」
「はいはい~。ほいじゃあお嬢さん、ちぃとこちらへ手を出してもらえますかぃ」
そう言ってレイジエさんが何やら金属板かプラスチック板のようなものを出して来た。
大学ノートくらいの大きさのそれは最近巷で流行しているなんとかパッドに似ていて、片面がスクリーンのようになっている。
言われた通りに右手を差し出すと、レイジエさんはそのスクリーンに私の手のひらをペタっとくっつけた。
するとスクリーンがポアっと一瞬緑に発光して、すぐに消える。
なんかSF映画みたい。スペースシップのドアがシュイン!って開いたりしないかな。
レイジエさんは私の右手を離すと、なんとかパッドに似た物体のスクリーンを確認しだした。
なんだろ、指紋ならぬ掌紋照合?
「やはりこの国のみならずどの国にも登録はされておりませんのぅ。国境も入国管理局も通過した記録もありませんし、これはやはり運ばれて来たと考えるのが妥当ですなぁ」
「彼女は私たちの世界には無い技術の知識もあるし、まず間違いないだろう」
おおっとディゲアさん、フォローのつもりかも知れないですけど、こっちの世界にない技術の知識って、もしかしなくても傘じゃないですよね......?
どちらかと言えばあっち(地球)に無くてびっくりした技術の方が多いです。
「登録がないなら確実でしょうね。それで、ディゲア様が保護することになった経緯というのは?」
「あ、私が気がついたら居た場所というのが、ディゲアさんのお家がある林のすぐ外だったんです。他にはお花畑しかなかったので、林の方に行ってみたらお家に辿り着いたんですよ」
「あの辺りは確かに他に民家は無いですわね。それにしてもディゲア様、彼女を保護したのは2日前だったとか。すぐに連絡を下さればよろしかったのに。何かそう出来ない理由でもありましたの?」
何やら意味深な笑みを浮かべて、ニージークさんが会話に加わる。
ちょっと感じ悪いんですけど、そのチェシャ猫みたいな笑い方。目尻の小じわが増えるよ。
「今日フィンエルタが来ることは以前から決まっていたからな。わざわざ1日早めることもないだろうと思ってのことだ。特に他意は無い」
「それこそ、連絡を頂けましたらフィンエルタなどを遣るのではなく、もっと丁重にお迎えに上がりましたわ。運ばれて来た方は国賓も同然。それを小型の艇でお連れした挙げ句に、わたくし達へは城へいらっしゃるまで知らせて頂けないなんて、ディゲア様も意地が悪うございますわね」
「まぁまぁ、こうして無事に城にお迎えできたんじゃからいいではないですかのぅ。過ぎてしもうたことをあれこれ言っても仕方ないですわぃ」
ネチネチと嫌味を言うニージークさんを、レイジエさんがやんわりと止めに入ってくれた。助かります、おじいちゃん。
このおばさん、あからさまでは無いけれどじわじわと締め上げるような意地悪さを感じるわー。こういうクレーマー居る居る。
「どうやら彼女が異世界より運ばれて来たことも確かなようですし、煩雑な手続きはさっさと済ませてしまいましょう。運ばれて来た方、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「うっ......名前、ですか......?」
どうしよう、別に自分の名前を恥じちゃいないけど、また男に間違われるのはイヤだし、さっきのエルタさんの反応からしていい意味では無さそうだし......。
ちら、と隣に座るディゲアさんを見る。
彼女は横目で私を見ると、ついと顎をあげて「言え」みたいに促して来た。
言いますよ言いますよ。言えば良いんでしょうよ。
次で3日目終了です。