ゴブリンは旅に出た。
エルフ。それは説明不要の存在。とは言え、言わねばなりません。
太古の昔からこの地を、人類を、亜人種を、魔法生物種を、まとめ続けてきた絶対的な覇者にして、悠久の時を生きる種族の総称。魔法文明を根本から支え続けてきた功労者。そして、今は旅の真っ最中。帰ってくるのが二年後の、旅立ちから丁度百年の年だろうと、噂が流れたのがつい先日。
と、ミカドは語った。
「そこまで言ったらもうちょっと深掘りしようぜ。」と一人のゴブリン。卑しくも破滅的な亜人種。名前をレッドという。
「深掘りと、言いますとあなたもこの噂を?」と金髪流れる女。名前をヒュートレッド。
「いいでしょう。」その代りに一問一答形式にしてくさだい。とミカド。
「前に言いかけて止められた。詰まる所王族ってのは、そのエルフとのハーフなんだろ?」
「その通り。」それ故に魔法結晶に秘められた力を少しだけ使う事が出来るのです。
「その辺も話して貰おうか。まずはその辺からだ。魔法結晶ってのはどれ位の規模の力を秘めてるか。」
「ジョヴァンニの大地の魔法結晶は陸を生み出した事があるそうです。大陸です。噴火もせずに大地を生み出しました。
エルスヴァンの火の魔法は最大火力でプロミネンスを発生させたそうです。下手をしたら、いえうまく使えば、この星を太陽の表面温度にする程の火力を秘めている可能性もあります。が、その可能性はもう無いと思っています。
フウガに伝わる風の魔法ですが詳しくは分からないのですが、当時プロミネンスを防いだのが風の魔法だと思っています。
ミューゼの水の力はこの星の、もともとは一つだった大大陸を六つに分けたとだけ……。しかし、それはもう過去の事です。あの国は既にフウガ領。」
「長文感謝。しかしだ、その話が本当だとしても気になるのが魔法。そして魔法結晶。」
「はい、不思議です。それだけのエネルギーを消費しながら各国に散らばったまま国を支え続けている。」
「それも、そうだが……。いや、そうだな。
寒い北に火。陸地崩壊を起こす西に大地。水もねえ南の砂漠に水。何でもそろう東に風。
うまく出来てるもんだ。庭の手入れみてえにうまく出来てる。」
「はい。」と、ミカド。
「それで、なんでまたエルフィランの統治なんて考えが浮かぶかって所だ。ジョヴァンニの都市を攻撃対象に出来るだけの度胸があって何でエルフィランを攻撃しないか。」
「ただ怖い。恐怖です。エルフィランは何を仕出かすか見当も出来ない恐怖は在っても、大地を生み出すというジョヴァンニ程のインパクトがありません。」決め手に欠けるのですと、ミカド。
「政治的に難しいって所か。そりゃそうだろうな独立運動してるだけで消し炭じゃあまるでエルフだ。」
「そのエルフの事、あまり訊かないのですね。」
「そりゃアンタが説明してくれたからな。それに……。」
「そうでした、賢者よ。貴方はゴブリンでした。」
「でした……って。忘れてたのか? 目が見えねえのか? 大丈夫かおめえ?」
「目は見えますし、大丈夫です。」と、ミカドは笑う。メインヒロイン実はこいつじゃねえかって位の笑顔だ。立てば芍薬、座れば牡丹。って言葉を体現してるようなミカド。
それから飯を食った。何でもあるってのはすげえって話だ。あらゆる食材がほとんど生だった。旨いかと聞かれたら旨いけどよ、なんか怖い。
風呂にも入った。ガシガシ洗われる事も無く初めて風呂ってのはいいもんだと思えた。いや、初めてじゃねえか。エルスヴァンで生き返る思いをした。死にそうに寒い土地だったからな。
それから、コスプレもした。これも恒例の事だ。ただし、ミカドのカツラがずれて漆黒のショートヘアがはみ出してたのは驚いた。
訊けば、魔法も使えない。何でも揃う。文明は発展を遂げた。となれば王族ってのはただ畏怖の対象でしかなくなり、仮初めの王が必要になったそうだ。本物はどっかで悠々と暮らしてるらしい。
「じゃあ行ってくる。」とレッド。




