ハーフエルフの台頭。8
蘇生を止めたヒュートレッドに向けて親衛隊隊長は言った。
「貴方は王になるべきだ。」
「ジョバンニに私は居るべきではありません。」とヒュートレッドは返す。
冷静だった。愛した男の蘇生を諦める程に疲弊しているにもかかわらず、冷静だった。冷徹とさえ言えるかもしれないが、ヒュートレッドの判断は、結果的には間違いだ。
「貴方の行った所業を許すわけではありませんが後継者としては女である貴方こそふさわしいのです。」
「まだ、そんな事。」
「フウガにて剣聖としての職に就いている事も承知している。国を裏切る逆賊であることも、国を売り飛ばした売国奴である事も許される事ではありません。しかし、カラーズ・ワーガイアを亡くした今、統治すべきは貴方を置いて他にいないのも事実なのです。どうか分かってください。姫。」
こうして、レッドとミカドの居ない間に話は進む。
——数日後、レッドは生まれついての古巣、北の洞に帰って来ていた。
「オヤジ。」とレッドが声をかけるのは悪名高きゴブリンキング。
「なんだ、裏切りの。」
「俺を鍛えてくれ。」
「確かにオメエは度胸と頭はあるが、根性が無い奴だ。」
「そこを何とかしてくれないか。」レッドの目にたぎるは情熱の炎。
「どうせ一朝一夕とか条件付けんだろ。」
「ああ、その上剣聖に勝てる程に強くしてほしい。」
「出来ねえよ。バカか。そういう無茶を何とかするのはオメエの頭だったんじゃないのか。」
それで吹っ切れた。レッドはそれを聞くと礼を言って飛び出した。
そこから更に時は経ち、新たな君臨者としてフウガの剣聖ヒュートレッドが王の座に就くと、さっそく国の倒れるような政策を真剣に言い放つ。これを抑えようとする勢力が活気づき、結果的に国は真っ当になる。好循環で順風満帆で申し分ない状態だ。
それでもフウガの王はジョバンニを信用した訳ではなかった。依って、ヒュートレッドと結納を交わすことで、血と盟約を取り付けようとする。
その晩餐会で騒ぎは起きた。クーデターだ。たったの三人を取り巻くクーデター。
「ヒュートレッド! 俺と勝負しろ!」とレッドは火を吹く魔剣をヒュートレッドに投げつけて言い放つ。
「出来る訳が、無いじゃないですか。」とヒュートレッドは冷静に返すがミカドが言い返す。
「いいえ! あなたは明言されました。いつでも、どこでも決闘ならば受け入れる。と!」
「それは……!」
「時と場合を考えろ、とかは言いっこ無しだぜ!」
「しかし、私は、貴方に剣を向ける事が出来ません。」
「当たり前だ。勝ち目のない勝負なんか、この俺がするもんか!」
「ヒュートレッド、貴方の愛は純愛で恋はいつでも初恋だった!」とミカド。
「だから、なんですか! こんな形で駄々をこねていいはずが無いでしょう!」
「おとなしく嫁に行けば丸く収まるとか考えてんのか。バカな奴だとは思っていたがここまでとは思わなかった。いいか、よく聞け! お前は、いや、お前のもんは俺のもん。俺のもんも俺のもん。だ!」
「だ! じゃありません、もっとスマートに好きだとか添い遂げようとか一緒に幸せになろうとかそういう事は言えないのですか、貴方は!」
「いいでしょう。ただし、私を手放そうと考えがよぎる様な粗末な頭蓋ならば、その時は全力を賭して切り伏せます!」
「ああ、それで良い。それでこそヒュートレッドだ。俺に名前を寄越した女だ。めい一杯不幸になって貰うぜ!」
こうして、フレイ・エルスト四世の画策した縁談は破談となり、国は混乱する。
それでも思う。国が倒れようと、億人の罪無き人々が苦しもうと、レッドは思うのだ。
俺たちの戦いはまだまだ続く!




