エルフが現れた。7
エルフと戦うと言う事。それは神への反逆に等しい行為だ。
この魔法世界にとっての化学というのは、魔法に置き換わる訳もない。だからこそ、魔法の根源であるエルフとの闘いは、神との戦いに等しい。
あらゆる想像を現実のものとするエルフ。
対して此方は剣の腕とわずかばかりの化学力。
どう対処したらいいのか、何も分からない。
だから、一行はフウガにいる。
守りの要にて敵を、エルフを待とうと、そういう事だ。
しかし、誰もが思う。
何故にエルフと対峙するのか、エルフを退治するのか。
神を打ち滅ぼしてまで、いったい何がしたいのか。
問われるからと言って答える者はいない。いないが、報酬はものすごい。何せ世界だ。神が、エルフが、支配していた世界を、今度こそわが物と出来るのだから、誰も彼もが憧れる。
そして、時が流れる。
あまりにも長い時。退屈が襲う。
「エルフは本当にフウガに来るのでしょうか。」
「わかんね。」
ミカドの問いにレッドが答える。
エルフはこの世界に、どこかに居る。
隠れず、潜まず、紛れもなく、エルダーナはこの世界で何かをしようとしている。
しかし、目的が分からないのだ。
或いはゴブリンの討伐かもしれない。と、過程して、その為に魔法結晶を集めるまでは良しとしよう。
ならば、その使い道は、やはり破壊行為ではないか。なぜ、その兆候がないのか。
エルフィランをそうしたように、何故暴れないか。
それが分からない。
「フリーゾロア討伐の方が、より指揮が高い内に実行できたかもしれないな。」今となってはそれもたられば。とブルーブレス。
「そもそも本物と偽物を手にした段階でやはり本物を集めたくなるのは当然では?」とヒュートレッド。
それだ、とレッドは思う。しかし声には出さない。飽くまで考えている振りをする。
直感的にではあるが、本物と偽物と見分けがつかないのは此方だけかもしれないと、思うのだ。
「最初に言い出したの、誰だっけ。」
「何をですか。」とミカド。
「本物と偽物に違いなんて無いとか、そういう事言ってたの、誰だっけ。」
レッドは勿論覚えていた。だからブルーブレスを見やる。
「間違い探しなど意味はない。それは私が感じた全てだ。本物を持ったことも無いのだから当然だろう?」「開き直りやがった。」
レッドはそういうと誰を攻める訳でもなく空を見た。
視線を下に戻すと、兵隊が目立った。
フウガの城の天守閣からの眺めは最高だ。地平線まで見えてる。それでもエルフ一人見つけられない。居るのは味方だけ。
空しいと、レッドは思う。
敵もいないのに味方がいる。それが空々しいと、感じずにはいられなかった。
敵なんてものはあるいは幻みたいなものかもしれないのに、こんなにも自分たちを支持する人が居る。
重圧しかない。ふとした切っ掛けで自分が敵になる事を恐れて、フウガの王族はこの重圧から逃げたのかもしれなかった。
「やめるか。」
「何をですか。」とミカド。
「籠城。」
「しかし敵は何処から来るかわかりません。」
「本音は?」
「これだけの警戒状態を生み出して置きながら放棄するなど、出来ません。」
「餌も無いのに釣りをしてる気分だ。」
「それは退屈ですね。」
「だろ?」
「だからと言って、ここを動く訳にはいきません。」とミカドは強い口調で言った。
それは兵を動かしたという事の代償だ。とブルーブレスも言う。
動かしたというより動かさないでいる事の代償なのだけど、ともかくそれは責任だ。
都合のいいように利用され続けてきたレッドが、いつの間にか責任なんてものを背負い込むまでに至ったのだ。
「喜ばしくて涙が出て来るぁ。」
「そんなに止めたければ無理する事なんてありません。」とヒュートレッドはまっすぐにレッドの目を見て言う。「挑む当てがあるのなら、挑めばいいのです。」
「その代り、兵は一度動かしたら最後、それは明らかな敵対行動です。」とミカドも言う。
「考えてみればフリーゾロア老とエルフが手を組まない方の保証など、無いのだ。」ブルーブレス。
皆どこか楽しそうにそういうのだが、しかしフウガとジョヴァンニは休戦協定を結んだばかり。
その代償として魔法結晶まで引き取って居たらしいのだから引っ込みがつかない。
「やっちまうか。」レッドは、そういう。




