男の魔法少女
4月…桜並木の道を歩き、これから過ごす学園の校門を潜る。桜はちょうど満開で、澄んだ春の空気が美味しい。周りからの視線がすごいが、そんなものは気にしない。まあ、注目されるのも仕方ない。周りの全員が女性であるのに対し、僕だけ男性なのだから。入学式のため、案内されるまま体育館に並べられた席に座る。やはり魔法を発現させられる者は少ないようで、新1年生は18人。明らかに体育館の広さには見合わない、少人数での入学式が終わり、クラスに案内される。6人で移動しているのを見る限り、1クラス6人×3クラスといった感じだろう。教室に到着し、全員が席に座ったところで、担任と思われる教師が口を開く。
「皆さん、まずは、ご入学おめでとうございますじゃ。ワシの名前は、【佐藤凪】じゃ。えー皆さんは、これから3年間ワシを含めたこのクラスのメンバーで生活していくことになるから、よろしくのう。まあ、若者のことはよくわからぬが、お手柔らかにのう。」
そう、一人称や語尾が明らかにお爺さんな美女教師は言った。
(独特な人だなぁ…)
「それじゃあ、まずはお互いを知らなくてはお話にならないしのう。出席番号順に一人一人自己紹介をしてもらおうかのう。名前とどんな魔法が使えるか、みんなへ一言の3つを言ってくれればいいからのう。」
(僕は出席番号順1番だから、僕からか…)
そうして教壇に立ち、話し出す。
「僕の名前は【鏡寿春】。魔法は、【肉体操作】。主に、相手を弱体化することを得意としてます。」
そこまで言ったところで、一人のクラスメイトが立ち上がった。水色髪のショートヘアーの赤い瞳をした華奢な少女。彼女は、指鉄砲の形を作り、こちらに向けている。おそらく、彼女の魔法に関係あるのだろう。
「貴方、魔族なんじゃないの?男で魔法が使える人間なんていないはずなのに。」
(たしかに、魔族は性別に関係なく魔法が使える。人間は魔法少女に覚醒した少女しか魔法が使えない。だから、僕が魔族かもしれないと疑うのは当たり前のことだ。)
寿春は両手を挙げて、抵抗の意志がないことを示し、話し出そうとした。しかし、その前に凪先生が寿春と彼女の間に入って言う。
「彼は魔族ではないから、安心しなさいなのじゃ。彼は、正真正銘人類史上初の男性で魔法が使える特殊な例なのじゃ。その説明も、"彼女" の方からしてもらうことになっているから、一旦話を聞きなさいなのじゃ。」
その言葉に銃を下ろして席に座る。しかし、その場にいたほとんどは凪先生の「彼女」という言葉が引っかかっている様子。そして、寿春は話を続ける。
「まあ、このクラス唯一の男子なのでちょっと浮くかもしれませんが、これからよろしくお願いします。後は…。」
そういって、寿春は目を瞑る。
(この感覚にも慣れたもんだ。)
彼の意識はどんどん闇に沈んでいく。そして、
「ヴォン」
という異様な音と共に、一瞬寿春の姿が歪む。それは、まるでゲームでバグでも発生したかのようであった。そして、すぐその歪みはなくなる。しかし、その時そこに立っていたのは、先ほどの黒髪短髪の少年ではなかった。黒髪ロングヘアーの少女が、そこには立っていた。クラス内は騒然とし、目をパチパチさせる者、臨戦態勢に入る者と様々だ。
「皆さんはじめまして〜!さっきの寿春の双子の姉、【鏡舞冬】だよ〜!簡単に説明するなら、寿春のもう一つの人格…みたいなものかな?寿春が魔法を使えるのは、私が魔法少女だからなの〜!私も魔法は【肉体操作】なんだけどね〜私は寿春とは違って、バフとか回復が得意なの〜!じゃ!うちの弟と仲良くしてあげてね!」
「ヴォン」
そう言って、舞冬から寿春に姿が戻る。その場のほとんどの者は驚愕の顔を浮かべている。凪先生だけ、既に知っていたため、何ともないと言った感じではあるが。そして、凪先生が前に出てきて。
「みんな信じられないとは思うがのう、これは政府のお偉いさん方が最新技術を使って、細かく検査したところ、事実であることが証明されているからのう。魔族だと疑う心配はないと付け足しておこうかのう。」
そう言って寿春は席に戻る。
――――――他5人の自己紹介まとめ――――――
2番:【傘矢時雨】魔法:【大気硬化】
空気を硬化させて足場を作ったり、空気弾を発射することができる。
3番:【沙倉召姫】魔法:【召喚】
使い魔を召喚することができる。召喚できる使い魔の強さによって消費魔力が異なり、召喚した使い魔が召喚者より強い場合、服従せずに暴れ回る。
4番:【昌本光莉】魔法:【プラズマ】
プラズマを発生させ、操る。常に多くのエネルギーを使うため、魔力消費が激しく、持久戦に向かない。
5番:【屋頭輪】魔法:【巻き戻し】
自分の設定したセーブポイントに、任意で巻き戻ることができる。
6番:【夜原狛】魔法:【ダークマター】
あらゆるものを屈折、婉曲させる闇を作り出し、操作できる。
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人通り自己紹介が終わり、ちょうど休み時間となった。休み時間になってすぐに、一人の少女が寿春に話しかけてくる。それは、先ほど銃を突きつけてきた少女…【傘矢時雨】であった。
「さっきは…ごめんなさい。突然銃向けて。」
「あ、全然大丈夫ですよ。そりゃ、警戒するのも分かりますから。」
「そう?ありがと。まあ、これから3年間よろしくね。」
寿春が物珍しいからか、他の少女も話しかけてくる。
「寿春くんだっけ〜?さっきのアレ、どうなってるの〜?変な音聞こえたと思ったら見た目と人格入れ替わってたけど〜?」
そう明るい口調で話しかけてきたのは、赤髪サイドテールに桃色の瞳をした少女…【昌本光莉】だ。
「ちょっと光莉ちゃん!そんなズカズカ踏み込んで大丈夫なの?確かに気になるけど、聞いて大丈夫なことなの?!」
そう声をかけるのは、緑髪ボブヘアーの緑の瞳の少女…【沙倉召姫】。もう既にかなりが良い様子。
「お二人はもともと知り合いだったり?」
寿春が聞くと、光莉は召姫に抱きついて言う。
「あぁ〜!そうなの〜!うちら幼馴染でさ〜」
「近い!熱っ苦しい!」
召姫は口ではそう言いながらも、満更でもなさそうだ。相当仲良しなようだ。
「幼馴染同士でどっちも魔法少女って、すごい偶然だね。」
時雨が言う。
(確かに、日本全国の15歳の少女の中から僕を含めて18人しか魔法少女がいなかったわけだろ?その中に知り合いが、まして幼馴染がいるなんて、すごい確率だよな。)
周りを見渡すと、他の二人はこちらの輪に入ってくる様子はない。黒髪ウルフカットの灰色の瞳をした少女…【屋頭輪】は度々こちらを見るが、すぐに目を逸らす。そして、銀髪ロングヘアーの紫色の瞳をした少女…【夜原狛】は遠くをジッと見ている。
4人で他愛もない話をしていると、時間はあっという間に過ぎていった。そして、凪先生が戻ってきて授業が始まる。




