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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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リークトの考え

 

 初日の訓練は全て終わり、エレーデンテ達は一息ついた。ある者は風呂場で一日の疲れを取り。ある者は一刻も早くと食堂に駆け込み、若い体ならではの空腹感を解消しようとする。

 アルト達は後者だった。


「お腹空いたね。こんなに大変だとは思わなかった」


 クラルドの言葉に同意し、配膳を受け取る。


「走り込みの後の座学は辛い」


「何度も、意識が飛びそうだったけど、内容が内容だけに途中から飛び起きたよ」


 その言葉に苦笑いを浮かべて食堂の空席を探すと、座学以降に出来た、何とも言い難い光景があった。


 男女を混同させた、小集団と大集団に分かれていた。小集団は非選任貴族出身のエレーデンテ。大集団は平民出身のエレーデンテだ。

 座学の女性教官の最後の一言が現状を作ったと言っても言いだろう。

 エリーは小集団の女子達と食事をしていた。こちらには食堂に入った時に気付いていたが、無視をしているようだ。そのことに、チクリとアルトの胸が痛む。


(こんな状態が良いわけない)


「クラルドあっちの席が空いてるからあそこに座ろう」


「・・・え? アルト?」


 戸惑うクラルドを連れてエリーのもとに行こうとすると、声が掛かった。


「おーい! 二人とも席ならこっちが空いてるぞ!」


「ありがとう! アルトそこに行こう」


 大集団側から声がかかりクラルドはそっちへと流れた。そのことにクラルドの気持ちを勘ぐってしまう。だが、アルトは流れに逆らえず大集団側に行ってしまった。振り返るとエリーは苦笑いしていた。


 呼び寄せた男子とクラルドと共に食事をする。今日の食事はあまり美味しく感じれなかった。


「思いのほか、混んでるな」


「風呂場いた人数考えれば当然だろ」


「それよりも、ラーグは大丈夫なの?」


「別に後ろから水を掛けられたくらい何ともないさ。冷たくて驚いたがな」


 ラーグ、パトロ、リークトがやって来た。一緒に風呂場に行っていたようだ。

 三人は配膳を受け取るとアルトと同じく席を探した。


「あのセレス様! 良ければこちらをどうぞ!」


「ん? 二人とも、そこに座ろう。君達、ありがとう」


 感謝に恐縮しつつ、小集団側から席を空けられた場所にラーグ達は座った。


「今日もこれか・・・」


「ははは、パトロは残念だったね」


「いつまで言っているんだ。食堂で良いじゃないか。このパンの硬さなんて、きっと作り方はな・・・」


 ラーグは周りに硬いパンの作り方の考察を話ながら食事を進める。その話に興味を持ったのか小集団側の人はラーグの考察を聞いていた。


「あの、セレス様! 御見識は素晴らしいのですが、このパンが硬い理由は他にもありまして」


「ん? マクリアじゃないか。パンの理由も気になるが、痛みは大丈夫か?」


「あ、はい。大丈夫です。お気遣い、ありがとう存じます」


「いや、気にしなくていい。それとセレス様はやめてくれ。ラーグでいい」


「いえ、そんな。・・・はい、ラーグ」


 遠慮していたマクリアにラーグはジッと見つめて、ラーグと呼ばれた事に微笑みを浮かべた。その笑みを見た何人かの女子達の顔が赤くなる。


「おい、その顔やめろ」


 パトロの言葉に目で『なんだ?』と問いかけるが、すぐに意識は硬いパンへと移った。


「それで、このパンが硬い理由は?」


「あ、はい! あの、製法で・・・」


 硬いパンの話で賑やかに小集団側は食事をする。

 大集団側は黙々と食事をして食堂を足早に去って行く。


 クラルドは小声で、パンの硬さなんてどうでもいいだろと言い、料理をかき込んで食べる。

 アルトは苦笑で返し食べる。


 夜、食事を済ませ、風呂場から部屋に帰ったアルトはベッドにドッと寝ころんだ。今日一日の事を振り返り、モヤモヤした気持ちを持て余していた。


(なんで、こうなったんだろう)


 原因はわかっている。だが、それでどうすればいいの分からないのだ。


「お疲れー」


 リークトが帰って来た。


「お疲れ。遅かったね」


「いやぁ、ラーグの『食堂の硬いパン講座』がなかなか終わらなくてさ。何であんなに盛り上がったんだろう」


 思い出したのか、リークトは笑いながら椅子に座りアルトに向き合った。


「あはは。ラーグの、あのパンへの熱量すごかったよ。大貴族はパンに詳しくないといけないのかな」


「ははは。ラーグにとって食堂が珍しいものらしくてさ。硬いパンも新鮮なんじゃない?」


「何だそりゃ! でも、納得した。新しい玩具を自慢するような顔だったもんな。また、その顔がさ、いい顔なんだよ。女子はそれに見惚れて聞くってより見るだったな。パトロが止めないといつまで続くのかと思った」


「不思議な人だよね」


「そうだな。実家が邪神を崇拝を許してるって聞いたときは驚いたけど、良いやつだよ」


「・・・・・・リークトは、あの座学の後、何でラーグと仲良くしようと思ったの?」


 リークトは、その問いに少し考えて言った。


「知りたかったからかな」


「知りたかった?」


「あぁ、あの話が本当なのか。緊張して聞けるまでに、ちょっと時間がかかったけど」


 リークトは苦笑いを浮かべ、話した。


「最初、昼飯を一緒に食べようとした時に聞こうと思ったんだけど、緊張してさ。それを見透かされたみたいで、緊張を和らげようとしていたのか、スープにパンをつけて食べる話が始まったんだ。あれは笑ったわ」


 机に頬杖をつきながら笑う。


「でさ、今度は風呂場で話を聞こうと思ったら。あ、そういえばラーグの体すごかったんだぜ。あのスッとしてる体で筋肉がすごくてさ。かっこよかったな」


「えっ!」


「ん? あ、いや、違くて! その体には傷が沢山あったんだ。それを聞いたら、領軍と一緒に戦闘訓練してたんだってさ。だから、朝の走り込みもあんなに出来たのかって話。違うからな! 俺はお姉さん系が好きだからな!」


「リークト。大丈夫だよ。好きになるのも無理はない。もし必要だったら、間にカーテンつけようか?」


「だから違うわ! 何だ、その気遣い!」


 リークトをからかい、話を戻して続きを聞いた。


「とりあえず、風呂場で話を聞いたんだ。そしたら、肯定された。邪神崇拝を許しているのを認めたんだ」


「本当に?」


「本当だ。でも、その理由を聞いて俺は納得したし、あいつとあいつの家の性格が分かったよ」


 その言葉を聞いて、アルトはベッドから起き上がりリークトに尋ねた。


「どんな理由だったの?」


 その問いにしばらく考えて、アルトに伝えた。


「アルト、それは自分で聞くべきだと思う。俺の目線から話を聞いても、そんなのは噂と変わらないよ。実際に聞くんだ。その結果、アルトがどう感じるかが大事だと思う。俺はラーグを知りたいと思った。知ろうとしないと分からないままだ。アルトが気になるならラーグに聞いてみろ」


 その言葉に衝撃を感じた。


(そうか、知ればいいんだ。知ってどうするか考えればいいんだ。それが、何か解決の糸口になるかもしれない)


「ありがとう、リークト。ラーグに聞いてみる」


「おう。聞いてみろ。ただし、硬いパンの話題は避けろよ。終わらないからな」


「はははは」

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