衝撃発言
初日の疲れもあって、夜はぐっすりと眠った。寮のベッドは快適で良い睡眠がとれた。朝の目覚めも良い。
リークトも起きて、交代で洗面台を使い、身支度を整えて制服を着る。訓練の予定を再確認し、食堂へ向かう。
(今日はラーグと話す!)
目標を胸に、道を進む。
リークトと、リークトと同じ班のマルクスとメライドと共に朝食を食べて運動場の準備室に移動する。今日も朝は走り込みだった。
「はぁ、はぁ、はぁ。疲れた・・・」
水場で体を清めていると、パトロがやって来た。
「・・・おつかれ、パトロ」
「あぁ、おつかれさん」
顔を洗うパトロにアルトはお願いをした。
「パトロ。今日の昼食、ラーグ達と一緒に食べたい。話があるんだ」
アルトの言葉にパトロは顔を上げて、ジッとアルトを見る。アルトもパトロから目を離さない。しばらくすると、微かに笑った。
「・・・わかった。ラーグに行っておく。あ、だけど、パンの話はするなよ。昼休憩が潰れるぞ」
「ははは。リークトも同じ事を言ってたよ。そんなに、あのパンが気に入ってるの?」
「あぁ。実家にいた時は、そんなに気にしていなかったのに今は硬いパンに夢中だ。きっと、庶民の食事に興味が尽きないんだろうな。次はスープについて語り始めるぞ」
笑いながら、パトロは去った。スープについて語るラーグの姿が思い浮かびアルトも笑った。
座学では、昨日と同じ女性教官が教会の聖典『プルセミナの福音書』の内容を説明する授業だった。相変わらず後ろからは、すぴーっと静かな寝息が聞こえる。その主は言うまでも無いだろう。
福音書は救世の巫女プルセミナの言葉や行動を綴った物だ。女性教官は突然、グループを作って聖典の説明を聞き教会とはどうあるべきかを考え発表するように指示した。アルトは近場の人間と話しあった。グループごとに結果を発表していく。
ラーグ達は眠っているラーグに代わりパトロが、発表しようとした。
「待ちなさい。セレス君が発表しなさい。パトロ君は座るように。セレス君、起きなさい!」
その言葉にパトロが起こし、小さく耳打ちする。
「私達のグループの討論結果は『ろくでもない事を教える教会は解散すべき』です」
講堂が静まり返った。横でパトロが頭を抱えている。その後、一気に騒然とした。
『異教徒の家だから』『きっと、寝ぼけていたんだわ』『何てことを』
それぞれが、声を出して感想を言う。
「皆さん、静かにしなさい! セレス君は、二日間懲罰室の罰を与えます!」
女性教官は外にいるザクルセスの塔を警備している騎士を呼び出し、ラーグを連れて行こうとした。
パトロが女性教官のもとに行き謝罪をする。
「教官すいません! こいつ、寝ぼけて変な事を。俺達が言いたかった事と違います!」
「黙りなさい! 彼はずっと寝ていたでしょう。その罰も含めてです!」
ラーグは連れて行かれる途中、『ざまぁみろ』と言われていた。
***
「あいつ、何なの!? バカじゃないの!?」
パトロが頭を抱えて叫ぶ。
授業はラーグの連行で中断となり早い昼食となった。講堂での件で皆が落ち着きなく昼食を食べる。
「パトロ、落ち着いて! リークト、懲罰室って何?」
アルトがパトロを宥めながら、リークトに懲罰室を聞く。溜息をつきながら説明する。
「反抗的なエレーデンテを監禁する部屋だよ。飲まず食わず、部屋は真っ暗。あるのはトイレだけ。しかも暗闇の中で済ませないといけないんだ」
「そんな部屋に二日間もいるなんて・・・」
「あぁぁぁ、もう! あのバカ! 教えたのに無視しやがって!」
「異教徒が、ざまぁみろ!」
「あ?」
パトロが苦悶している中、平民出身の男子達が声をかけてきた。パトロが睨む。
「公爵出身とか図に乗ってるからだ!」
「異教徒の分際で神聖な教会をバカにするな!」
パトロがスッと立ち上がる。アルトとリークトは何が起きるのか咄嗟に判断して、パトロを捕まえようとしたが遅かった。男子達の一人を殴り飛ばした。
「こいつ!」
もう一人の男子がパトロに殴りかかったが、避けられて殴り返された。
「ラーグ様を悪く言うなら、ボコす!」
乱闘になりかけた三人をアルトや周りが止めるが、警備の騎士が来てしまい事情を聴いた結果、パトロも一日の懲罰室行となった。
一日後、帰って来たパトロは疲れていた。その様子に、声がかけずらかった。
「その、パトロ、お帰り。大丈夫?」
「か・・・たい」
「え、何?」
「お菓子食べたい・・・」
「よし、お菓子買いに行こう!」
「そうだな! パトロ、奢るから城下町に行こう!」
パトロの背中を擦りながら、城下町へと連れて行った。有名な菓子店のお菓子を食べて、少しは元気が出たようだった。
その一日後、ラーグが悠々と帰って来た。風呂場に行っていたみたいだ。
「ラーグ、大丈夫?」
「何がだ? それより、アルトと話すのは久しぶりだな。また、話てくれて嬉しいよ」
嬉しそうに笑うラーグに、少し避けていた罪悪感がアルトの胸にチクりと刺さった。
ただ、横を見ればパトロが震えていた。
「パ、パトロ?」
「・・・お前のせいでぇ!」
「パトロ、落ち着いて!」
ラーグに掴みかかるパトロを抑えながら、リークトと二人で最近の事を説明した。すると、ラーグは溜息をつき言った。
「バカか」
パトロの顔は赤くなっていく。
「っ!」
「落ち着いて、パトロ!」
「アルト、腕を離すなよ!」
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