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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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突破

ついに、10万文字数になりました。胸を張って長編小説だと言えるでしょう!

 

 眠っていたアルトは、引き摺られるような感覚に飛び起きた。


「アルト君、どうしたの?」


 椅子に座りうたた寝していたマールが起きた。


「門の方で何かが起きてる」


「どういうこと?」


 アルトは教会騎士達が来てから使わないようにしていたマーラを、集中し感じ取ろうとした。

 感じ取ったマーラに流れができて門に向かって行った。


「マーラが門の方に集められてる。やっぱり何か起きてる!」


 アルトの叫びと同時ぐらいに、一瞬の輝きの後に爆発音が響いた。



 ***



(耳がおかしい。さっきの爆発はなんだ!?)


 鳴り響く耳を抑えながら、アーブは砂煙に覆われた辺りを見回した。


 弾け飛んだ木片が刺さっている人。当たり所が悪く死んだ人。


(門の前に集中したのが仇になったか)


「アーブ! アーブ!」


 遠くから聞こえるラウの声に返事をするが、砂煙でわからない。すると、肩を掴まれた。振り返ると村の門番だった。

 門番は指を差し。その方向を向くとラウがいた。


「ラウ! 今のはなんだ!?」


「わからない! ドヴォルが光の塊を放ってきたんだ!」


「まさか、魔法なんて使えるのか!?」


「それよりも、あれだ」


 ラウの指を差す方を向くと、門があった場所は焼け落ち地面がへこんでいた。

 風が吹き、砂煙が徐々に晴れていく。

 ドヴォルが向かって来ていた。


「全員、武器を持て! ドヴォルが来るぞ!」


 ラウの叫びに動ける状態の村人は急いで武器を拾い、構えた。アーブは銀色に輝く剣を抜き、ドヴォルがやって来るのを待った。



 ***



 門の横側にいたモルは破片の直撃を受けずに吹き飛ばされただけで済んだ。横にいた知り合いには、木片が足に深く刺さっていた。


「おい、大丈夫か!?」


「足がっ!」


 モルの声は届いていないようであった。周りからも声が聞こえるが、酷い耳鳴りでハッキリとはわからない。

 木片の刺さった知り合いを引き摺り、門の横の隅に置く。

 お互い耳が聞こえないので、手の動きで伝える。

 男は頷いた。


 砂煙で状況がわからないが、門が破壊されたのはわかった。少し進むと耳を抑えているアーブを見つけた。微かにだが、アーブを呼ぶ声が聞こえている。

 声の主を探している様子だったので、肩を掴み、薄っすらと見えるラウの方向に指を差した。


 耳鳴りが落ち着き、次第に砂煙も晴れていく。ずっと奥にいた赤黒い魔物ドヴォルが村に向かい始めた。


 ラウが叫び、モルは急いで自分の武器を取りに行った。武器を構えると、家族の顔が思い浮かんだ。


「いよいよだな。・・・・・・アリア、アルト、アリル。生きてくれ。アルト、ごめんな」


 実父オーロンを失い、義父の自分を慕ってくれる息子に、また家族を失わせる悲しみを与えることにモルは謝罪した。


「来い。化け物め」


 剣の柄を握りしめ、敵を迎える。



 ***



 遠くからでもわかる爆発音にマールは覚悟を決めていた。門は破壊され魔物達が村にやって来る。


 幼馴染の心配もあるが、どうせ後で会えると思っていた。モルは息絶えるまで戦うだろうし、マールもそのつもりだ。

 プルセミナ教会の教えで出てくる、神の国『マダルモア』で会えるだろうと。もしかしたら敬虔な自分はマダルモアに行けて、やっと昨日から真面目に働いてるモルは行けないかもしれない。


(さすがに、可哀想だな。プルセミナ様、不徳なるモルも連れて行ってあげてください)


 あとは、予定通りアルト達を逃がすだけだ。


「アルト君、『宿屋にある貴重な薬』を運んでくれ。場所はミルテナさんが知ってる」


「・・・」


 返事もせず、動かないアルトを見て、これも予定通りだと思っていた。

 手伝いに来ている三人の手前、村から逃げろと直接は言えない。


「あの薬が、どれだけ貴重かは話しただろう。お願いだから、運んで」


「・・・」


「あの、マールさん。私が持ってきましょうか?」


 押し黙るアルトを見て、手伝いの女性が声を掛けた。


(この子は、門で戦っている恋人を助けたくて来ていたんだっけ。すまない)


 マールは、これから彼女が向き合う現実に申し訳なく思いながら、申し出を断った。


「いや。あれはアルト君にしか扱えないものなんだ。あの薬が運ばれれば、()()()()()なんだ。アルト君、皆が時間を稼いでいる。だから」


 それでも動こうとしないアルトに溜息をつき、側に行き肩に両手を置いた。そして、小声で伝える。


「アルト。怖いかもしれない。苦しいかもしれない。でも、僕達が君に託したものを守ってくれ。託せるのは君しかいないんだ。さぁ、行って」


「っ!」


 アルトは涙を袖で拭い宿屋に走っていった。その後ろ姿を見送るマールの目は穏やかだった。


「あのマールさん。アルト君、泣いてるように見えましたけど。そんなに大事な薬なんですか?」


「そうだね。とても、とても大事な薬なんだ。途中で落として割れでもしたら、死んでも死にきれないよ。あの薬を運ぶのは大変だからね」


 アルト達が逃げやすくなるように、彼女達をここで引き留めて混乱を起こさないようにしておかなければならない。ここにいる者達が、どんな目に遭うかわかっていながら。


(不徳なのは僕か。だったら、話し相手にモルが必要だな。プルセミナ様、僕とモルを一緒に地獄へ落してください)


 その祈りが届くかどうかは、神のみぞ知る。


読者のみなさまへ


今回はお読みいただきありがとうございます! 


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