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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 福山ショータ
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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一時の安息

 

 最初は門に体当たりをしていたスピナー達は、諦めたのかドヴォルのいる方向へ暗闇に消えて行った。遠くに消えた魔物達の様子を知りたくて、アーブは火矢を数発放った。矢が落ちた先には何もいなかった。

 この静かな時間を利用しようと、見張りを残し物見櫓を降りた。


「ラウ。あいつらが何もしてこないうちに村人達を休ませよう。見張りは俺達が交代で」


「それがいいな。皆に伝えて来る」


 ラウは村人のもとに走っていった。

 アーブは門の隅に並べられた遺体を見た。


(これを見れば戦意も失うよな)


 魔物は人や動物を食べることは無いが、殺すためには手段を選ばない。それは無残な形として残る。この遺体に布でも掛けて視界に入れなければ、気休めでも現実を見なくて済むが、そんな布は無い。


 見上げた空には闇に浸食さてたように三日月ができていた。


「ラウ、先に休め。下は疲れるだろう」


「知ってるなら、交代するか?」


「弓の腕が俺より良いなら、交代するよ?」


 アーブとラウ。二人は幼い頃に、マーラの感知者となりプルセミナ教会に引き渡された。そして、首都エストにある教会騎士団本部ザクルセスの塔で過ごした。幼年教育を受け、見習いの立場である『エレーデンテ』としてマーラの使い方や武器の扱いなど多岐にわたる教育を受けた。

 その中で、弓の腕前はアーブがラウを上回っていた。それで、櫓担当をしていた。


「まぁ、弓で走り回るボルティネスを仕留めれるようになってから、そういうことは言ってくれ」


「あれは絶対まぐれだろ」


「そう思うならマーラの扱い方も俺が上だな」


 挑発するような言い回しに、相手にするのが馬鹿らしく思いラウはそっぽを向いた。


「はぁ、プルセミナ様、この傲慢な教会騎士に天罰をお与えください」


「やめろよ! 今の状況だとシャレにならない」


「ははは、そうだったな。それじゃあ、先に休むよ」


 移動したラウは地面に寝転がり、一時の睡眠をとった。周りを見ると、疲れ果てた村人達も横になっていた。

 物見櫓に戻ったアーブは考え込んだ。


「ドヴォルの動きが読めない。スピナー達の動きを観ると、あいつらが指揮をしてるようだな。魔物が魔物を指揮するのか」



 ***



「アルト君、門の方も今は状況が落ち着いてるみたいだから休もう。先に休んでいいよ」


「ありがとう。なんだか、力が抜けて疲れが・・・」


「なおさら休まないとね。治療所の良いところは、ベットがあることだよ。地面で寝るよりずっといい」


「そうだね。マールさん、ごめん。寝る」


 ベットに意識を奪われたアルトに笑いそうになったが、声を抑えることが出来た。


「君達もお疲れ様。休んでくれ。何かあれば起こすから」


「ありがとうございます」


 手伝いの三人もアルトのようにベットに意識を奪われた。


 一人起きているマールは、ぼんやりと、どの状況になったらアルト達を逃がす計画を行うか考えていた。横を見ると、アルトの寝顔があった。


(今はしっかり休んで。まだまだ、夜は長い)


 見上げた空には導きの星が見えず、自分達はこの暗闇をどこまで歩かないといけないのか考えさせられた。


 その後、魔物達からの攻撃は無く。ようやく一日目を終えた。援軍の到着まで、あと四日。



 ***



 教会騎士達が思ってた以上に休息がとれて、一部、起きた村人の顔色は良くなっていた。

 しかし、日が昇り始めるまえ頃に門の外から叫び声が聞こえた。アーブと交代していたラウが全員を起こした。そして、日が昇り一面が明るくなった頃に、その光景を見た。


「ラウ。どうなっている!」


「・・・・・・ドヴォルが、スピナーを皆殺しにした!」


「は?」


「ドヴォルが何かやっている。様子がおかしい! 警戒するんだ!」


 スピナーを斬ったドヴォルの周りには黒い石が落ちていた。それを拾い集め取り囲み、何かを始めた。

 ドヴォル達は中央に集めた黒い石に光の粒を送っていた。黒い石は光を増していく。

 それは宙に浮き塊となり、熱を放っているのか、煙が出始めた。


「・・・・・・!」


「ラウさん、大丈夫ですか!?」


「大丈夫。ちょっと眩暈が」


 同じようにアーブもよろめきと眩暈がした。何かに後ろから流されそうになる感覚だ。


 熱を発する光の塊をドヴォル達は門に向けた。


「降りるぞ!」


 ラウは、一緒に物見櫓にいた村人を抱え飛び降りた。瞬間、門の外が輝き爆発した。

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