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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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新たな日々は過ぎてゆく

第二章前編です!

 

 ゴル村が壊滅してから二年が経った。


 獣人達の襲撃、その後の魔物の出現でアルト達の故郷ゴル村は壊滅した。大勢の村人が亡くなり、生き残った者達は悲しみに暮れる暇も無く、力を合わせて助け合い、苦難を乗り越えようとした。

 しかし、限界はあった。破壊された村での生活は難しく、かといって、村の復興も出来ない。人の脅威になるのは獣人や魔物だけではないのだ。


 ゴル村の門番モルの活躍もあって、隣村のリンドへ移住が決まった。故郷を離れる決断に心は抵抗したが、現実はそうもいかない。むしろ、リンド村が自分たちを受け入れてくれる奇跡に感謝をして生き残った村人達は、故郷を捨てる準備をした。


 そして、村を捨てる最後の準備は粛々と行われた。大切な人との別れである。それは炎に包まれ、舞い上がった灰は空へと運ばれる。

 親を呼ぶ声。泣き崩れる者。形見を握り祈る者。燃え尽きるまで、その光景を誰もが見ていた。

 アルトも最後の家族との別れを悲しく寂しく思ったが、アルトだけは知っていた。触れず、見えず、声は聞こえなくても、大切な人達はマーラとなり自分達の側に居るのだと。


 最後の準備を終えて、『旧ゴル村の住人達』と『新たな家族に迎えられたアルト』はリンド村へ旅立った。残されたのは、太い白檀の木だけだった。


 リンド村では、『旧ゴル村の住人達』を歓迎してくれた。理由はさまざまあるが、アルトの知る話ではない。

 最初は村の敷地でテント暮らしする集団と、リンド村の宿屋エイドで暮らす集団に分かれた。

 プルセミナ教皇の直轄地である、このバラール地方には貴族領主がいない。教皇の代わりに聖地コバクで代官を務める司教の差配で全てが決まる。その司教にアルトのマーラの覚醒以外の事。ゴル村壊滅の経緯とリンド村の状況を伝え、聖地コバクから支援物資を貰い、リンド村は拡張することになった。

 家の建設も行われて次第にテント暮らしの人々が減っていった。


 拡張も順調に進み、リンド村の住人となった人々も、残る悲しみを胸にしまい、これからの未来に向けて活動をした。

 アルトも新たな家族と共に未来を歩み始めた。

 受け入れてくれたモル家でアルトは養子になり、亡き父、薬師オーロンの弟子マールがリンド村の薬師となって治癒院マールを開いた。そこで見習いとして働いた。

 そして、モル家では大事件が相次いで起きた。


「アリルが、歩いた! こっちにおいで~」


「初めて歩いたのに、そこまで行けないわ」


 リンド村に着いて、しばらくすると義母アリアの妊娠が発覚したのだ。その後、無事に出産を終えてアルトに義妹が出来た。

 リンド村に移住して二年。一歳を迎えてしばらくする今日、義妹アリルが一人で歩いたのだ。

 リンド村の門番の仕事に就いた義父モルは、家に帰ってさっそく、娘の成長に驚いた。


「一歳ちょっとで歩くなんて、うちの娘、天才かも・・・」


「普通の成長よ。ほら、モル、夕食早く食べて!」


「アリル、お兄ちゃんと遊ぼうか。おいで~」


 アルトの声に反応して、ゆっくりとアルトのもとへ歩いた。アルトの膝に手を着き、コテンっと座った。その二人の様子をモルは微笑ましく思うも、早く場所を変われっと思いながら、急いで夕食を食べて娘を構い倒した。


 四年前に弟ティトを失い。二年前に両親を失ったアルトは、この家族を大切に思った。弟に出来なかった事を義妹にして、両親に出来なかった事を義父母にしたいと。この大好きな家族を守りたいと。


 しかし、肉親を全て失った悲しみの事実は心の中に残った。

 リンド村の宿屋エイドの主人の娘。晴れた空のような青い髪と深い青色の瞳を持つ少女、ミーナ。彼女を攫った獣人を追い詰めた時に、空から降ってきた声、『たいこう』と呼ばれた女性の声に追い詰めた黄色の瞳をした獣人とゴル村に残っていた獣人が魔物へ変貌し、村を壊滅させ、両親を殺した。


 あの天の声は『嫌がらせになるだろう』と言い、魔物を生み出した。誰かへの『嫌がらせ』のために、両親と大勢の村人が死んだ。


 これがアルトの心に陰りを生んだ。『たいこう』とは何者なのか。両親や亡くなった皆の仇をとりたい。だが、自分を迎えてくれた新しい家族の側に居たい気持ち。そして、ティトが死んでから勇気や自信を無くして塞ぎ込んでいた自分に、手を伸ばしてくれた彼女の側にも居たい。

 二つの気持ちがせめぎ合っていた。


 いろいろな思いが交差しながらも今日は終わる。

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