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ルカside

 パーティで紅一点のシャインは怖がりだ。

 お化けとか信じてないというくせに、暗い所で「白い影が通ったぞ」とか言うとブルブル震えてる。


 ダンジョンに初めて潜った時は、シャインのへっぴり腰の無様な様子に、悪いが仲間たちと嘲笑った。普段は俺たちより男勝りなんだけどな。

 蛇なんて、俺たちに投げるわ、一撃で仕留めるわ。なのに、ウサギが狩れないとか、シャインの行動も考えも読めるやつなんていないだろうと思う。

 魔法だって、仲間一上手いクレトの次に威力がある。

 複合魔法を使える分、場合によってはシャインのほうが上かもしれない。


 そんな俺たちパーティが受けたのは、やばい噂のある廃園になった遊園地での依頼だった。

 途中で逃げ出さないように、適当に言って連れ出し、逃げようとしたときは腕を掴んで阻止させてもらった。

 シャインがいると、変わった魔物たちに出会う確率があがる。なんでかあがる。


「わたし、魔物に好かれる変なスキルなんてなかったよ」


 嬉しそうににこにこと、学園の入試試験時に分かったことを自慢していたが、【仲良し小好し】スキルという鑑定士すら意味不明のスキルがあったそうだから、それのせいなんじゃないのか?

 それが違うとしても、パーティ仲間全員が、遭遇率の高さを認めてるんだから、シャインも自分を受け入れたら楽だろうに。

 

 遊園地ではアクアツアーが一番怪しいだろうとは情報を得ていた。

 その前にあったトイレに入るときすら、シャインはしかめっ面だったし、トイレのドアのドンっという大きく開く音がしたから、中でもビビっていたのかもしれない。綺麗なトイレで明るかったが。


 ただ、園内に入ったとたんに、晴天からいつ暗雲立ち込める天気に変わったかと思う程園内だけ暗く重い空気が立ち込めていたのは確かだ。

 マリオが「おどろしい雰囲気だな」と呟いたが、廃墓(はいぼ)地だと言われても頷けるような場所だ。


 アクアツアーを巡って十分も経った時だろうか、先頭にいた俺は前方の潟湖に大きな影を発見した。


「十一時方向、二百メートル先。水中に大きな影発見!」


 すぐに仲間に伝えた。

 

 一度見失ったと思った。

 だが、それはすぐにぬぅっと姿を現した。

 緊張が走る。


 水中から現れた大きな影は――馬、だった。


「馬?」


 なんで馬が、と思いつつも魔物の類でないことに緊張を解いていた。

 馬の方も何度か体をぶるぶると揺らして水を飛ばすと、悠然と俺たちの方へ歩みを進めてくる。

 ハミはしてないが、首には手綱が見える。貴族の迷い馬だろうか?

 大人しそうな眼差しの栗毛が美しい馬に触ろうと手を伸ばそうとしたとき、後方にいたクレトの鋭い声が耳に届いた。


『幻獣ケルピーだ! 絶対に乗るな! 水中に引き込まれ食われるぞ!!』


 げんじゅう? そんなのがいたのか?

 初めて聞く獣の名前だが、クレトが乗るなと言うんだ。俺たちは馬との間をとるために、サッと後ずさった。


『ハミを付けたり、乗りこなせたら従順になるが、俺たちでは無理だ』

「討伐するしかないな」 


 クレトからの情報に、リーダーの俺がマイクを通して指示を出す。

 だが、そこでシャインの声が割って入った。


『待って。時間を稼いでいて。私がやってみるから』


 十分に間がある馬に気を付けながらも、シャインの方を確認すると塀の近くでしゃがんで何やらしている。

 こんな時に何をやっている?

 やってみると言いながらしゃがみ込んでいるシャイン。


 馬は俺たちの殺気を感じ取ったのか、目つきが変わった。

 威嚇するように(いなな)き、頭を下げ前蹄で土をかいたと思うと、俺たちに向かってきた。

 俺たちは俊足を使ったりして避けるが、馬はでかい。


 土魔法で土壁を作ったり、木があるところへ移動して何とか避けてはいるが、怪力らしい。細い木がバリッと音を立てて倒れた。

 時間を稼げと言われても、攻撃できないのは辛い。

 それにやってみると言った本人はおままごとでもしているのか土をこねているようなのだが?

 仲間たちも同じことを思っているらしく、動きに戸惑いが出ている。

 このままではいけないと、攻撃開始を指示しようとその時


「できたっ! 今行く!」


 そう叫んだシャインが俊足を使い馬めがけて走り寄りながら「ケルピー、こっち」と大声を張り上げる。

 嘶く馬の正面から突っ込むように手から何かをシュッと投げて、通り過ぎる木の枝分かれに足をタンッとかけ、くるっと上方へ高く飛び上がりざま半回転した。着地位置は――


 暴れ馬に飛び乗っている!

 唖然とする俺たちの前でシャインは両足で馬の胴体を挟んでバランスをとりつつ手を馬の横顔に伸ばして何かしている。

 馬は方向を湖に変えると走り出そうとした。


――だが、その口にはハミがかかっており、飛び乗ったシャインの手にはハミから繋げた手綱が握られている。


 馬はヒヒィーンと嘶くと振り落とそうと暴れ始めたが、すでに口にはハミがかかっていたからか、段々動きを緩慢にして大人しくなった。

 「ルピーちゃん、いい子だねぇ」とシャインが艶のある毛を撫でている。

 いつの間にケルピーがルピーちゃん呼びになった! まるであの一字取れてたミラーハウスのようだ……。いや、突っ込むところはそこじゃない!


 俺たちは注意しながら馬に寄る。

 ひらりとシャインが飛び降り、ようとして、手綱に引っかかり躓いていた。どこか締まらないやつだな。

 顔面から地面にダイブしようとするその腕を受け止める。


「ルカ、ありがとう」


 笑顔で見上げるシャインにデコピンする。


「ぐぅぅぅ! いだいっ、いだいっ!」

「顔面ダイブよりはましだろ?」

「しなくてもいいでしょ!」


 おでこに手をあて涙目でこっちを睨むが、俺たちに何も説明せずあんな無茶を一人でしたんだ。これくらいは御の字だ


「おまえ、なぜあんな無謀なことを一人でした?」

「え? みんなで協力したじゃない。時間稼いでくれたから、私が錬金術でハミを作れたんだよ? その後馬に飛び乗ったのは、この間ルカがイノシシに飛び乗ってた真似だし」

「錬金術?」

「そうそう。ほら学園で教えてもらった私のスキルに『光の複合魔法』ってのがあったでしょ? 光と土の複合魔法が錬金術なんだよ」

「それくらい知ってる」


 なぜか嬉しそうなシャインの声に対して、答えたクレトの冷静な声音。


「そっか。でね、私も呪文唱えたらできたんだよね。だから塀と土の中から銅や鉄の成分を使って、複合魔法の錬金術でハミを作ったの。父のところで馬の世話はしたことあるから、ハミの形とか知っててよかったよ」  


 にこにこして語るシャインに俺たちは顔を見合わす。

 クレトが続けて尋ねた。


「シャイン、同じように教えてもらった中に【仲良し小好し】スキルがなかったか? 先にそれは使ってみなかったのか?」

「ん?……っぁあああああ!!」

「……ま、とりあえず無事に依頼完了か」

「そうだな。体力そこまで使ってないのに何だろうなこの疲労感」

「帰ろう」


 さっさと帰ろうとする俺たちに、焦るように言うシャイン。


「い、いやでも、そのスキルどんなのか、まだよく分かってないから。そ、それよりルピーちゃんどうしよう?」 

「幻獣なんてどうすればいいんだ?」

「さぁ、とりあえず、冒険者ギルドに連れていくとか?」


 俺たちは引き返しながらシャインに適当に答えた。

 シャインはうーんと悩んでいる風だったが、にやりと笑うと馬に乗ろうとする。どうやら馬に乗って帰ることに決めたらしい。


「ケルピーは別名が水槽馬だ。水が豊富に必要だぞ」

「でも、このままここにいてまた人を襲ったらいけないし、誰かよく知ってる大人に相談してから決めようと思って」


 クレトに注意されてもそのまま馬に乗っているシャイン。背筋がピンと伸びたさまは貴族と見えなくもない。



 俺たちがトイレの前を通り過ぎようとしたときだった。シャインが大声を出した。


「い、今白い影が通らなかった? いや、目の錯覚だよね? 人は怖いと脳が勝手に幻覚を見せて怖がらせ、そこから離れさそうとする防護反応が起こるっていうから……あ、それって本当に危ない場所の場合だった……?」

「あ、あそこ!」


 ピーターが指さしたところを見たが俺には何も見えなかった。


「俺、さっきトイレによったとき、女子トイレの窓にシューって流れるような姿を二回見たから、てっきりシャインが走って遊んでるのかと思ったぜ?」

「わ、私何もしてないよ⁉」

「おい、今子供たちの笑い声のようなの聞こえなかっ――」

「ぎゃぁあああああ!」


 マリオの話は途中でシャインの叫び声でかき消された。

 シャインは馬から転げ落ち白目をむき泡を吹いていた。

 そこに素早く女子トイレに入って確認していたクレトとイバンの声が耳に届く。


『窓の白いカーテンが空気清浄機で動いたようだ。気配はない』

「笑い声のようなのは?」

『自動掃除器がドアを開ける音とかだろ』

「なんだよ、脅かすなよ」


 ほっとした雰囲気になる。

 目の前に横たわる死体、違うか。茂った草がクッションの役割をしてくれたから、まだ肢体のシャインをどうしてくれようか? 

 俺たちは適当に馬にシャインを乗っけると落ちないように固定して家路へと向かった。


 途中飛び起きたシャインが「でたよぉーーー!!」と馬上で叫んでいたが、馬に括られたまま叫ぶ姿は俺たちに笑いしか提供しなかった。  

 

 でも、思うんだ。

 行方不明の子供たちはいったいどこへいったんだろうって。

 俺もマリオの言った子供たちの笑い声ってのをはっきり聞いたんだ。シャインにも聞こえたからこそ、驚いて気絶したらしい……。



 その廃園がケルピーの出る肝試しの名所に、さらにお化け屋敷として有名になったのは、だいぶ後の事。

 そこの看板にはこうあった。


【ケルピーが水に連れ込もうとしたら「シャイン!」と叫んで下さい。大人しくなります。ただし、あなたが出会うのが幽霊の類なら解決方法は不明です】

読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m

短編用で、これで完結です。

ホラーとしてはどうかと思いますが(;'∀')

もし、楽しんで頂けましたら、評価でも感想でも頂けたら嬉しく思います。

夏のホラー2017に参加してますので、7月20日からは別の評価もあるらしいですが、

これはログインなしでもできるのかな? すみません、よく分かっていません。

ムリなさらず、したいな、と思ったときはお願いしますm(__)m

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