第九話「勝救出作戦2」
私の名前は加藤康夫
35歳、独身。
どこにでもいる普通のサラリーマンだ。
上司に頭を下げ続ける毎日。
私の一生なんてこんなもので終わるのだろう。
「たっだいまあって誰もいねえか」
つまらない毎日。
そんな生活に終止符を打ってやりたい。
ってなんて都合のいいこと出来るわけないか。
私はそのまま眠りについた。
いつの間にか私は真っ暗な空間にいた。
いや、普通は眠れば目の前は真っ暗だが、
その空間にいる気がするのだ。
「力が欲しいか?」
どこからともなく声がする。
「力が欲しいか?」
まただ。
「誰ですか? 貴方は」
「本当はそなたには用はないが、アルファートに頼まれてな」
「アルファート? なんのことですか?」
「なあにこっちの話しじゃ。それで、力が欲しいか?」
力?
そういや、よく憧れたものだ。
子供の頃に見てたヒーローの力に
いづれ俺は正義の味方になる! と
よく思い込んでいたな
「その力が手に入るとしたら?」
「あるなら欲しいさ。あるならな」
「ならばそなたに力を授けよう」
「ん?」
目が覚めた。
変な夢を見たな。
「力なんて……あるわけないか……」
「あるさ」
「うわっ!!?」
急に声が聞こえて、私はベッドの上から転げ落ちてしまった。
目の前には白い球体が浮かんでいる。
「何を驚いている」
「そりゃ驚くでしょう」
何なんだこの白い球体は
私は幻覚でも見ているのか?
病院にでも行ったほうが良さそうだな。
「力が欲しいのだろう?」
「ちから……」
まさかあの夢は!?
「そなたに力を授けようと思う」
「もしやあの夢は!?」
「今頃気づきおったか」
夢……じゃない?
「しかし、アルファートも邪神使いが荒いのう」
「邪神?」
「そうじゃ、わしは邪神エリメカレタ」
自ら邪神と名乗るなんて
「その顔だとわしを軽蔑しているようじゃな?」
「いえ、そんなつもりは」
「わしとて好きに邪神になったわけではない。それよりも」
「それよりも?」
「そなたに力を授けてやった」
力? まさか空を飛べたり?
昔からの憧れだったんだあ。空を飛ぶの。
空を飛びたい空を飛びたい。
私はそう念じてみた。
「あのう、邪神さん」
「あまりそう呼ばれるのは嬉しくないな。エリメカレタでよい」
「あのう、エリメカレタさん」
「なんじゃ?」
「本当に力を私に授けたのですよね?」
「授けたよ? 透明になる力を」
「透明!?」
また……なんて地味な力だ。
これじゃあ女風呂を覗くことしかできないじゃないか!!
「そなたにはこれから役に立ってもらう」
「誰の役にですか?」
「神に挑む力をもつ青年を助けに行ってもらう」
「神に挑む力?」
「ああそうじゃ、その青年の力は偉大じゃ」
「もしや?」
最近ニュースで話題だった。
日本から海外まであらゆるところで無差別殺人が起こったこと。
保育園での立てこもり事件のこと。
妙なニュースだと思った。
もしかしてその事件を引き起こしたのは
「そう、あやつじゃ」
その旨をエリメカレタに聞いたところ。
あっさりと答えてくれた。
「しばらくここで待っておれい」
「なぜですか?」
「そなたと共に行動する必要がある人物が今こちらに向かってきておる」
「私と共に行動?」
「そうじゃ」
まあいづれにしろ。
日常が非日常に変わっている。
神に挑む力をもつ青年。
私のもとに向かってきている人物。
私のこの透明になれる力。
何かが変わっている。
そんな光景に私は知らないうちに心を踊らせていた。




